いざカラオケへ スタンド・バイ・ミー
放課後、街を歩く私達3人はやはり目立っていた。
道行く人たちには、通りすがりにジロジロ見られるのがわかる。
それもこれも全部、小萩君のせいである。
「さぁーて、着いたよ。」
阿智君の案内で学校から15分歩いたところにある3階建てのカラオケ屋に着いた。
(本当に徒歩15分だったの?なんか凄い疲れたな)
青井は文句を言いたいのを我慢して、
「さぁ、入ろう」
と明るく振る舞った。
入り口の扉を開けて中に入ると、まず飛び込んできたのは、先に教室から出て行った生徒がドリンクバーをついでいる様子だった。
「あっ」
とその生徒はこちらに気付き声を漏らしたかと思うと、ドリンクバーをつぐのを止めて、階段を全速力で駆け上がって行った。
(あいつらもここで、楽しんでんのか…キマズイナ)
「どうする?なんか他の店にする?」
青井は気まずさに耐え切れず、場所替えを提案した。
「安心してくれ。僕はこの店の会員だ!機械の扱いは慣れている」
小萩君が、そう言いながら財布の中から、会員証を自慢げに取り出した。
(禿げ御用達の店かよ…てか、こっちは機械じゃなくて禿げの扱いに困ってんだよ)
「そ、そうなの…任せるね!」
内心では、ボロカスに禿げのことをdisっているが青井は笑顔を浮かべて、判断を小萩君に委ねた。
(確かに気まずいが、カラオケの受付の前で揉めるよりはましだな…)
「小萩君も会員みたいですし、行きましょうか」
阿智君も、小萩君に賛成して、クラスメイト達がいるカラオケ屋で歌う事となった。
フリータイム制で歌うことになり、自分達の部屋に向かった。
自分達の部屋に入ろうとすると、向かいの部屋から、
「高校入学おめでとう!皆んなありがとう!」
などと言う、声が漏れていた。
「はははっ、なんか楽しそうですね」
「盛り上がってるね。あいつら…」
「僕が盛り上げるんで、青井さんも阿智君も楽しんで
下さい」
ドアの前で少し会話すると、そっと扉を開けて中に入った。
こうして、テンション下がり気味な2人と歌う気満々の禿げの入室が完了した。
カラオケの部屋に入るなり、小萩君は、タッチパネルとマイクをキープした。
「僕が最初貰って良いかな?」
歌う気満々の奴を止める筈もなく、2人は即座に首を縦に振った。
そしてついに、禿げのリサイタルが始まるのであった。