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生まれて初めてゲームをしたらパーティーメンバーが最強すぎる件について!  作者: ゆーしゃエホーマキ
第四章:ユーベル

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第93話【GAMESTART】

『ゲームの内容はとッても簡単! 鬼ごッこだよォ!』


 《ベリードール・ユーベル》はそう言ってベリーとローゼに【テレポート】を発動する。


「こ、ここは……?」


 ベリーとローゼが目を開くと、目の前には大きな古い屋敷が建っていた。屋根に積もった雪で今にも潰れそうなくらいボロボロだ。


『ようこそようこそ! ワタシの屋敷にようこそォ! まァ、このゲームのフィールドだよォ、ワタシが60秒数えてる間に逃げてねェ! あ、拒否権は無いからァ! 』


 《ベリードール・ユーベル》はそう言って一瞬で姿を消す。


「戻ることは……出来ないみたいですね……このクエストをクリアするしかないみたいです、大丈夫ですか、ベリーさん?」


「……う、うん、やるよ、あの子もそれを望んでる……嫌だけどやるしかないよね」


 そう決意したベリーだが、強く握った手は震えていた。


「大丈夫です、いざとなったら私がやります……とりあえず鬼はあちららしいですし、早く逃げましょう」


「うん、そうだね……」


 そう言って二人は屋敷の中に足を踏み入れる。


『うんうんいいねいいね! いらッしャーい! ちャんと入ッてきてくれたね! まァ逃げられないんだけど! じゃあ数えるよォ! あ、もちろん捕まったら死んでもらうからねェ! はい、いーち! にーい! さーん!』


「行きましょう!」


「うんっ!」


 カウントダウンが開始され、ベリーとローゼはなるべく遠くへ向かって走る。しかし屋敷の中は暗く、足元に注意しないと転んでしまう。それに屋敷の構造は相手の方がよく知っているだろう。常に警戒していないとすぐに見つかってしまうかもしれない。



* * *



「ハァッ……ハァッ……! あ、あれ? そういえば、捕まったら負けだけど……私達はどうすれば勝てるの!?」


「た、確かにそうですね……! 」


 もう60秒は過ぎている。だが全速力で走ったので結構遠い所に来たようだ。しかしベリー達の勝利条件が無いことに気付く。


「と、とりあえず、そこの部屋に入りましょう!」


 身体を休めるため、ベリーとローゼはすぐ近くの部屋に入る。


「そ、それで、勝利条件……ですか、そうですね……制限時間もありませんし、危険ですが屋敷を探索した方が良さそうです」


「うん、そうだね……それでこの部屋は……」


 ベリーはそう言って入った部屋を確認する。どうやら寝室のようだ。廊下を走る途中にいくつもあった部屋も、恐らく同じ寝室なのだろう。


「え、これ……」


「血液……ですね、もうこれ別のゲームですね……というか実は私、ホラーは苦手で……」


「うっ、わ、私も苦手……なんだか急に寒気が……」


「あ、それは恐らく走って汗をかいたのが冷えてきてるんですね」


「あぁそっか……そうだよね!」


 どうにかして怖さを緩和するべく、ベリーとローゼはそう言いながら手を繋ぐ。


『はいはァーい! こんにちわァァ!』


「「ヒャアアアアア!!?」」


 手を繋ぎ少し安心すると、高々と《ベリードール・ユーベル》の声が響く。

 もちろん二人は悲鳴を上げながら寝室を飛び出し、全速力でダッシュする。


『アッハハハハハハッ!! いやいやいやァ、そこまで驚かれると脅かしがいがあるねェ! ハァ……うん、さて、【悪鬼化( あっきか )・絶解】』


 腹を抱えて涙を浮かべながら大笑いした《ベリードール・ユーベル》は【悪鬼化・絶解】を発動する。

 【鬼神化】と同じく、髪や防具の色が変化し、刀身と同じ青みがかった黒色に変化する。しかし瞳の色は青黒くなく、鮮やかな赤に染まる。


『【身体強化】、【全覚強化】、【エンチャント・デス】……【絶解】』


 目を閉じ、スキルを発動する《ベリードール・ユーベル》。

 【身体強化】で身体能力を強化し、【全覚強化】で視覚、聴覚、嗅覚などあらゆる覚を強化する。さらに特殊な属性である、即死属性を付与する【エンチャント・デス】、そして【絶解】を発動する。


『……なにやってんだろな、私……あー、ダメダメ、ちゃんと演じなきゃね……【アクセルブースト】』


 《ベリードール・ユーベル》はそう言って【アクセルブースト】を発動し、ベリーとローゼを追い掛ける。



* * *



 その頃、現実世界にて、三嶋と八神は。


「ねぇねぇ三嶋、最近あんまり仕事無いね」


 八神はそう言いながらペットボトルのお茶を飲む。


「そりゃお前、俺にやらしてるからな……まぁでも確かに仕事は減った気がするな、クエストは自動生成だし、まだメンテナンスは必須だけど」


「このまま全部自動化しないかなぁ! なんてー」


 八神は冗談混じりに言う。


「お前それ俺達の仕事無くなるって意味だぞ、どうやって食ってくつもりだ」


「やだなぁ三嶋さんがいるじゃないですかぁー」


「あーはいはい、ほれさっさと仕事しろ」


「ほーい、っと……そーえばさ、前にローゼたんが見ないほうが良いって言ってたやつ、何だったんだろうね?」


 八神はふと思い出したのかそう言いながらパソコンを弄る。


「あー、まぁローゼは嘘付く感じは無いからな、見なくて正解だろ、まぁでも一応バグ報告はしといた」


「やっぱバグなの? というか最近イレギュラー多くない? プレイヤーもだけど、ほらベリーちゃんとか」


「確かになぁ……でも本社のほうで修正はしてるらしいし大丈夫だろ、あとプレイヤーはどうしようもない、あれはちゃんとした実力と才能だ」


「まぁそうだよねー、気にすることないかー」


 三嶋と八神はそう言って仕事を続けた。

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