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生まれて初めてゲームをしたらパーティーメンバーが最強すぎる件について!  作者: ゆーしゃエホーマキ
第四章:ユーベル

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第92話【狂喜乱舞のドッペルゲンガー】

 ユーベル化という特殊なモンスターを倒したベリー達はクーちゃんこと《クォーツドラゴン》にクエストを報告し、無事に許可証を貰って水晶の街で自由に行動できるようになった。


 そしてそれから数日後、ベリーは第四階層の雪原フィールドを探索していた。


「はむっ、もぐもぐもぐ……はぁ~、やっぱりおでんは美味しいなぁ!」


 第四階層はほとんどのフィールドの気温が低いためか、街で売られている食べ物も暖かいものばかりだった。


「んむっ……? おーい! ローゼ~!」


 するとベリーは同じく探索をしていたローゼを発見し、声をかける。


「あぁベリーさん、ベリーさんも探索ですか?」


「うん! 良かったら一緒にどうかな?」


「はい、ぜひ! ベリーさんのことももっとよく知りたいですしね」


 ローゼは快く承諾する。ベリーもローゼとはもっと仲良くなりたい。



* * *



「あ、ベリーも好きなんですか?」


「ってことはローゼも? なんか嬉しいなー!」


 話していると、お互いの好みが一致したらしく、ベリーもローゼもより一層笑顔になる。


「……あれ? な、なんか変な場所に来ちゃったね?」


「ほ、本当ですね……何かのクエストでも開始されたのでしょうか?」


 話していて気付かなかったのか、いつの間にか空気が重く、木々が生い茂る暗い雰囲気の場所に来てしまった。木の枝や葉っぱの間から見える空は曇ってきている。

 近頃のクエストは《自動クエスト生成システム》により、自動的にクエストが作られているのだが、ローゼが把握できているクエストの数は300程度しかない。恐らくはその10倍以上の数のクエストが存在しているのだろうが、ローゼが都合よくクエストを作ったり消したり、それどころか閲覧することすら出来ない。


「あっ! ローゼ! あそこに人がいるよ!」


「本当ですね、話を聞いてみましょうか」


 ベリーとローゼはそう言って、森の奥にいるその人影に近付く。しかしローゼは気付いた。あの影はプレイヤーでもNPCでもないということを。


「ベリーさん! 止まってください!」


「ぅえ!?」


 ローゼの言葉でベリーは足を止める。すると人影はゆっくりこちらに近付いてきた。


「こ、これは……!?」


 ローゼは目を見開いて驚く。何故なら目の前に現れたのは……。


「わ、私……?」


 ベリーはそう言って少し後退る。そう、目の前にはベリーそっくりの人物が立っていた。


『…………』


『クエストを、開始します。』


 相手が何も言わない、表情も変わらないまま、クエストが開始される。


「ベリーさん、気を付けてください……恐らくあれはベリーさんのステータス情報から作り出された、ベリーさんの“ドッペルゲンガー”というものかと……」


 相手の頭上にHPゲージが表示されている、ということは何かしらの戦闘が起こるということだ。そしてネームも確認できる。


「《ベリードール・ユーベル》……す、凄いね、ゲームって、私ちょっとドキッてなったよ」


 ベリーはそう言って本能的に《鬼神ノ太刀・閻解》を抜く。


『……アハハハハッ! やあやあやあやあ! こんにちわこんばんわァ! どうもどうも、ワタシ、あなたのドッペルゲンガーをしております、《ベリードール・ユーベル》と申しまァす! よろしくねェ!』


 急に笑ったかと思えば、なんとまぁご親切に自己紹介をする。それは良いのだが、ローゼが気になるのは名前にある“ユーベル”だ。“悪魔”と関係性があると思われる文字が、ベリーのドッペルゲンガーにもあるのだ。


「え、えっと……ローゼ、私はどうすれば?!」


「お、落ち着いてください! ベリーさん!」


 この状況に着いていけてないベリーはローゼに落ち着くよう言われるが、それでも落ち着いてなどいられない。この状況で落ち着いていられる者は……ベルかロウくらいだろう。


『んーワタシは大人しくしてればいいと思うよ☆』


 《ベリードール・ユーベル》はそう言って、《鬼神ノ太刀》に似た刀を抜く。


『これからあなたを斬るこの子の名前はねェ、《悪鬼ノ太刀(あっきのたち)絶解(ぜっかい)》って言うんだァー! この子もよろしくねェ!』


 《悪鬼ノ太刀・絶解》は《鬼神ノ太刀・閻解》とよく似ているが、《閻解》の刀身の色は赤に近い黒に対して、《絶解》の刀身は青に近い黒だ。ベリーとの違いは……あとは瞳の色と喋り方くらいしか無く、ネームが表示されていなかったらベリーと認識する可能性も充分にあるだろう。


『じャあじャあ! ただぶっ殺すのも詰まんないし……あー、そーだそーだ、ゲーム! ゲームをしようよ! ね? ね? いいでしョ? ゲームだよゲーム! 知ってるよねェ? 楽しいよォ、考えただけで笑いが込み上げてくるよォ、クフフ♪』


 《ベリードール・ユーベル》はそう嗤いながら言う。


「わ、私、あなたのことは好きになれないかも……」


 さすがのベリーも自分と同じ姿をしてこんなことを言ってくる者に対して、そう言いざるを得ない。すると《ベリードール・ユーベル》は表情を消して鋭く言う。


『誰が仲良くしてほしい何て言った? 私はアンタをぶっ殺してやりたいんだよ。だってそれがドッペルゲンガー、モンスターとしての役目でしょ? 私が生まれた理由でしょ? アンタもへらへらしてないでさ、本気でやろうよ、じゃないと楽しくないでしょ?』


 先程の言動とは全く違う。ふざけた感じもない強い言葉だ。目付きも鋭くなり、その瞳でベリーを捉える。


「で、でも……私は……っ」


 ベリーは“殺す”という単語を聞いて距離を取る。

 自分はそんなつもりは無いのに相手は本気なのだ。どうするのが正解なのか、ベリーにはわからなかった。


『あー、ハイハイ……殺す殺す言ってるからか弱い乙女ちゃんはビクビクしちゃうんだよね? うんうん、わかるよーその気持ちー、うん、でもね? そっちが本気になってくれないと私も気持ちよくやれないからさぁ、どうすればいいかな? ねぇ? アンタのお友達を殺しまくればいいかな? あーでもそれは単純か、んー……でも“この世界”で出来ることなんて限られてるからなぁ』


「………あなた、さっきから妙ですね、まるでここがゲームと認識しているようです」


 《ベリードール・ユーベル》の言葉を聞いていたローゼが、そう言う。


『ん? んー、まァねェ……いや、そんなことはどうでもいいよ、さァもうやろうよベリー! 始めようよ! あなたはプレイヤーで、ワタシはモンスターだ! ならやることは一つ! さあ! 最低最悪で吐き気なんてブッ飛んじャうくらい狂ッたゲームを始めよう!』


 先程と同じく狂喜とも思えるほど嬉しそうな表情で、両手を天に掲げて彼女は言った。

GAMESTARTだよ☆

これから楽しくなるねェ!

みんなも楽しんでッてね!(☆-▽°)


by.《ベリードール・ユーベル》♪

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