第88話【重郎と雅信、そしてココアとこたつ】
久しぶりの登場、でもなんかシリアルの匂いが? ……牛乳かけなきゃ(使命感)
「あ、やべ弾切れじゃ」
「重郎またか!? ちゃんと予備を持っておけとあれほど言ったじゃろうが!」
八坂重郎と一條雅信は現在銃撃戦をしていた。この二人がもうなんなのかはわからないが、銃弾が飛び交う戦場に、重郎は飛び出す。
「HAHAHA! 遅い遅い!」
重郎は飛び交う銃弾を素早く避けながら敵に接近する。
「あぁ、ったく……悪いな新人ちゃん、ちょいとあのバカの援護を頼む」
雅信は重郎の行動に呆れながら、後でスタンバイしていた新人である“百地見咲”にそう言って重郎を狙う敵を排除していく。
「了解で……あ、もう終わったみたいですね」
しかし、百地見咲が出る間も無く、突撃していった重郎が無傷で戻ってくる。
「ふぃ~、終わった終わった……あとはデータの回収じゃな?」
「ったく毎回毎回、作戦通り出来んのか……?」
そしてそんな重郎と雅信の会話を聞いていた見咲は、「なぜこんなお爺ちゃんがここまで動けるのだろう」、そう思っていた。
重郎達の仕事とは、裏社会の組織や暴力団の排除を主に行っている。百地見咲はまだ若いが、幼い頃から射撃訓練や体術を学んでいた。
「そんじゃデータも回収したし、これでやっと日本に帰れるなぁ!」
そう言って重郎は苺に会えることを楽しみにしていた。が、この仕事は色々と急だ。以前一度日本から戻ってきてから、この仕事で実はもう4回目だ。
「重郎、仕事じゃ」
「……はああぁぁぁ~……またか……今度は何じゃ、また組織を潰すのか?」
重郎はそう言って依頼内容を確認する。
「あー、今度は……あぁ老眼で見にくいな……新人ちゃん頼む」
「は、はい!」
雅信はそう言いながら端末を見咲に渡す。
「えぇっと……『至急アメリカへ急行せよ』? 詳しい内容は現地で……ですかね?」
見咲の言葉を聞いて、重郎と雅信の表情が暗く強張る。
「まさか……重郎、この内容は……」
「あぁわかっとる、やはり檻の中にぶち込んだほうが良さそうじゃな……見咲ちゃん、この件はわしら二人でやるから、本部へ報告頼むよ」
「は、はい、それは良いのですが……お二人だけで大丈夫ですか? もうお年も……」
見咲はそう言って重郎と雅信の身体を心配する。確かにハードな仕事だが、それが辛いならとうの昔に引退している。
「安心せい、まぁどのみちそろそろ辞め時じゃからな、パッと行ってパッと終わらせてくるわい」
そう言って重郎はニッと笑う。
「そうじゃな、ワシもこの仕事が終わったら鈴に会いに行くんじゃ……」
「おいおい、これから仕事なのに死亡フラグなんぞ立てて大丈夫か?」
「大丈夫じゃ、全くもって問題ない」
まだまだ元気な二人だが、ここまで生きていることが不思議だ。いったい今まで何度死にかけたのだろうか。
「では私はお二人を信じて本部へ戻ります、ご武運を」
「おぉ、土産も買ってきてやるからな、楽しみにしとれよ!」
重郎はそう言いながら手を振り、雅信と共にその場を離れた。
二人を見送った見咲は、これから本部へ戻り、今回の依頼の報告を済ます。
「そういえば……あの二人のあんな重々しい雰囲気初めてかもですね……」
少し不思議がりながら、見咲もその場を後にした。
* * *
一方でベリー達は、お爺さんの家に招かれ、話を聞くことになっていた。
「ん……暖かい……」
「ほら、ココアを入れたから飲んで身体を温めなさい」
お爺さんは全員にココアを用意した、とても美味しいココアだが、今フィールが潜っている、冬によく見るこたつに目が行く。
「暖かーい……」
「ベリーも囚われたか……あ、それで、《晶龍様》についてお聞きしたいのですが」
ベルはココアを少し飲んだ後にそう言った。ベリーとフィールが半分寝ている感じだが、大丈夫だろう。
「あぁ、そうじゃな……《晶龍様》というのはこの水晶の街を守る、守り神様なんじゃよ」
お爺さんはそう言って《晶龍様》について語っていく。
「君達もあの壊れてしまった街を見ただろうが、あれはもう何十年も前の話での、白い虎に襲われる前に皆でこの水晶の中に隠れたんじゃよ」
「白い虎……もしかして四神なのかしら?」
お爺さんの言葉にアップルはそう予測する。
「はい、恐らくは……少し特殊な四神討伐クエストでしょうか?」
「なるほどな、まぁつまりその《晶龍様》が守るここで暮らすには《晶龍様》が認めないとダメってことだな」
ローゼとソラがそう言う。そしてお爺さんは続けて話を進める。
「その通りじゃ、まぁ《晶龍様》は優しいお方じゃから、安心せい」
お爺さんのその言葉を聞いて、皆安心する。一部安心しすぎてもう寝そうな二人が居るが。
「じゃあその《晶龍様》に会えるところは何処でしょうか?」
「あぁ、この街の奥に《晶龍様》の神殿があるから、休んだら行ってみるといい」
「なるほど……」とベルはメモを取って呟く。
「ありがとうございます、では《晶龍様》の元に行ってみますね」
「あぁ、それじゃあ私は隣の部屋に居るから、何かあったらそこに来なさい」
「はい! ありがとうございました!」
ベルがそうお礼を言うと、お爺さんは部屋を出ていく。
「ベルさんは話を進めるのがお上手ですね!」
「え? そうかな? それよりベリー達を寝かせたら起きにくいから、そろそろ行くよ」
「それは賛成だな、バウム、ベリーを起こせ」
ソラは暖かい部屋でココアを飲んで落ち着いているバウムにそう言って慌てさせる。
「い、いいけど……」
バウムも別に嫌ではないので承諾する……いやむしろ嬉しい。
「ほれフィール、起きろー」
「……起きてベリー、そろそろ行くみたいだよ」
ソラはフィールの頬をぺちぺちと軽く叩きながら起こし、バウムは優しく静かに起こす。
「ん……もう行く?」
「おう、今度ホームにもこたつ置こうなー」
フィールは目を擦りながら起き上がる。半分寝ていたベリーも眠たそうにあくびをして起きる。
「では行こう! 《晶龍様》とやらの元へ!」
次回は《晶龍様》の元へ!




