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生まれて初めてゲームをしたらパーティーメンバーが最強すぎる件について!  作者: ゆーしゃエホーマキ
第四章:ユーベル

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第81話【熾天使】

『大変申し訳ありません、プレイヤーの皆様に報告します。第三階層のボスモンスター、《シーツリヒター・セラフィム》がバグにより出現しないことを確認しました。5分後、緊急メンテナンスを行いわせていただきます。』


 ベリー達がホームでくつろいでいると、アナウンスが流れる。


「バグなんて珍しいね?」


 ベリーがジュースを飲みながら言う、確かに《NGO》ではバグなどほとんど無かった。


「確かにそうだね」


「んだなぁ」


 バウムとソラはそう言う。ソラはそこまで気にしていないようだ。


「まぁバグくらいはどのゲームでもあるわよ」


「ん……この世に、完璧なものは……ない」


「バグかぁ……」


 バグ、といえばベルは《ヘルツ》のことを思い出す。《ヘルツ》はこの世界がどういう世界か自覚してしまい、自身のクエストそのものを変えた。これも一種のバグなのだろうか。



* * *



「さてと、どーしよっかなー」


 次の日の放課後、鈴は帰宅する準備を終えたもののまだ教室に残っていた。


「まだ……メンテナンス終わってないみたい……」


 理乃はスマホの画面を見ながらそう言った。あのアナウンスから何時間も経っているが、まだメンテナンスは終了していなかったのだ。


「そうとう手こずってるってことね、それにしてもこんな長いメンテナンス、初めてなんじゃない?」


 林檎が言うように、ここまで長いメンテナンスは初めてだ、そもそもボスモンスターが消えるというバグ自体が初めてなのだ、細かなバクはどのゲームでもほぼ必ずと言っても良いほどある。ただ大きなバグでもこんなに修正に時間が掛かることはない。


「んー、まぁ考えても仕方ないかな」


 鈴はそう言って鞄を持った。長くても今日中にメンテナンスは終わるのだから、深く考えても意味はない。



* * *



 そして《NGO》内では、《シーツリヒター・セラフィム》討伐部隊が結成されていた。


「……見つけました、《シーツリヒター・セラフィム》です」


「ローゼスゴい! じゃあちゃっちゃと終わらせようか! うん! 早く帰ろう!」


 八神もといニャンコ二世がそう言う。なぜこうなっているかと言うと、《シーツリヒター・セラフィム》は正確には出現しないではなく、“別の場所”に出現してしまっていたのだ。

 だがそのままモンスターを移動することは難しいので、出現場所を再設定した上で討伐して、第三階層のボス部屋に出現させるのだ。


「すみません、恐らく私の《自動クエスト生成システム》が誤作動してしまったみたいで……」


 《自動クエスト生成システム》はローゼが他プレイヤーと接触することでそのプレイヤー達が何を欲しているかを感知し、自動的にクエストを生成するシステムだ、ただそれをローゼ自身が思うように扱うことは出来ない。


「ま、こっちは制作者側だ、負けるはずがねぇさ、それに人数もいる」


 タケが言う通り人数は20人だ、そして全員レベルも高い。


「はい、倒すことは問題ない……のですが……」


 ローゼはある不安があった。それは《シーツリヒター・セラフィム》が誤って出現した場所だ。それは現在の《NGO》の最上階、第五階層だった。第五階層はまだプレイヤーは一人も到達していない。


「にしても、第五階層はやっぱ不気味だなぁ」


 《シーツリヒター・セラフィム》が出現した場所へ移動している最中、第五階層を見てタケはそう言う。そもそもこの《NewGameOnlin5》は第百階層まである超が付くほど長い階層ではない。第三階層の時点でモンスターは既に高レベルなのだ。


「うちの社長が何考えてるかは知らないっすけど……あっても十階層まででしょうねー」


 仲間の一人がそう言う。第十階層が出てくるかは三嶋達にはまだわからないことだ。


「《シーツリヒター・セラフィム》がこちらに近付いていますね……」


「え? そいつってそんな索敵範囲広かったっけ?」


「いえ……でもバグでこんなところに出現しているんですから、その辺もおかしくなっているんでしょう」


 バグで索敵範囲の拡大、そしてさらに、バグってしまったところがあった。


「え……マジかよ、あんなデカかったか……?」


 タケは《シーツリヒター・セラフィム》の姿を見て驚く。通常の大きさの5倍はあった。


『プれ♯ィ八~▲↓ヲ●◎カ#%クに‰ン、【審判】ヲΩ→▼♀開死シま…"ス』


 《シーツリヒター・セラフィム》はバグで色も、形も、言葉もおかしくなっていた。《シーツリヒター・セラフィム》は三対六枚の翼を持ち、人型ではない燃え盛る天使のモンスターだ。《審判の熾天使》という意味の名前を持つのは、第四階層からレベルが急激に高くなってくるので、上級者ステージになるということだ。上を目指すなら立ちはだかる壁は存在するものだ。


「よし、行くぞ!」


 タケの合図で全員が《シーツリヒター・セラフィム》に突撃していく。


「ッ! 止まってくださいッ!」


 すると突然ローゼがそう叫んだ。皆その言葉に振り返ると、ローゼの顔は驚愕、恐怖、といった感情が取れる表情だった。


「ど、どしたのローゼたん?」


「そ……そのまま、全員振り返らずに、武器をしまってゆっくりこちらに……」


 何かはわからないが、ローゼがそう言った直後、後ろで何かを引きちぎった音が聞こえ、全員こう思った。「振り返ったら死ぬ」と。ゲームだからいいが、凄まじい恐怖が襲ってきたのだ。


「だ、だが……あれを倒さないとゲームが……」


「大丈夫です、三嶋さん、全員今すぐログアウトしてください……あれは、見ないほうがいいかと……」


 ローゼは何とか声を出して言う。


「……わかった、全員、ログアウトしろ」


 タケの一言で全員が頷き、ログアウトしていく。


「ろ、ローゼたんは?」


「私は大丈夫です、安心してください」


 ローゼは笑顔を作りそう言う。


「行くぞネコツー」


「う、うん」


 そして最後の二人がログアウトしていった。


「………………」


 そしてローゼは目の前で、“悪魔”に翼を引きちぎられていく《シーツリヒター・セラフィム》を見た。


「……ログ、アウト」


 ローゼは見なかったことにした、早くこの場から離れたかった。アレは見てはいけなかった。


「これが……ゲーム、ですか」



* * *



 その後何事もなく、《シーツリヒター・セラフィム》は第三階層のボス部屋に出現して、メンテナンスは終了した。

うまはじメモ。

《シーツリヒター・セラフィム》

上級階層へ行くプレイヤーの壁として作られた《審判の熾天使》。遠近両方を得意とし、プレイヤーのレベルによって強さが変わる。

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