第79話【神殺し】
「【シュナイデン】ッ!」
ローゼは細剣を構え、単発攻撃スキル、【シュナイデン】を発動して、殴りかかってきた《リーズィヒ・ヴァッフェ・玄武》の拳を受け止める。
たった一人であの巨大な拳を受け止めることが出来たのは驚きだが、驚いている暇はない。ローゼが作った隙を逃さないようプレイヤー達は《リーズィヒ・ヴァッフェ・玄武》を攻撃し、HPを確実に削っていく。
「なかなか減りませんね……」
ローゼはそう言いながら《リーズィヒ・ヴァッフェ・玄武》の拳を押し返す。
「任せて! 【鬼神化・閻解】ッ!」
ベリーは【閻解】を発動して《リーズィヒ・ヴァッフェ・玄武》の弱点、オーブへ突っ込む。
「【閻解ノ大太刀】ッ!」
ベリーの【閻解ノ大太刀】による攻撃でかなり大きく《リーズィヒ・ヴァッフェ・玄武》のHPを減らす。
だがそれだとオーブの力でベリーはダメージを負うことになる。ベリーの現在のHP量も考えると、HPが全て消し飛ぶ可能性もある。
「【閻解】……解除! 【霧雨】!」
だが、ベリーも考え無しに突撃したわけじゃない。すぐさま【閻解】を解除したベリーは【霧雨】を発動する。
「【霧雨ノ舞】ッ!」
そう、【霧雨ノ舞】は一定時間無敵状態になる。だが【絶対回避】と同じではないか? ということになるだろう。しかし違う点がある。
恐らくほとんどのプレイヤーが【絶対回避】を持っているからクエストが簡単になってしまう、だからそれを制限することで難易度を上げている。
だが【霧雨】はユニークスキルだ。ベリーしか使えない。
【絶対回避】と【霧雨ノ舞】の違いは、使用プレイヤーの数だ。ベリーの予測が当たっていれば使用頻度がズバ抜けて高い【絶対回避】だけが制限されていることになる。
『ゴゴッ__!』
そしてオーブが光り、反撃すると……。
「よし! 効いてない!」
攻撃はベリーに効かなかった。ならば最大出力で攻撃するまでだ。
「強化スキル持ち! あの突っ込んでいったやつにありったけやれ!」
「「「ハッ! 了解ですッ!」」」
ロウがそう言って、プレイヤー達は自身が持っている全ての強化スキルをベリーに向けて発動する。
「さて、じゃあ私は麻痺らせときますかね! 【麻痺弾】セット!」
ベルは《KS01》に【麻痺弾】を装填し、射撃する。
「じゃあボクも……【パラライズ・ショット】!」
さらにハクも自身の杖から【パラライズ・ショット】を放ち、状態異常を蓄積していく。
しかしまだ麻痺にはならない。《リーズィヒ・ヴァッフェ・玄武》は急激にステータスが上昇したベリーへ集中放火する。
「や、やばっ……!」
一瞬、反応が遅れてしまったベリーは集中放火されたレーザーに直撃……する瞬間。
「ハアッ!」
ローゼが瞬時にベリーの前に立ち、細剣でレーザーを弾く。
「ここは大丈夫です! 私に任せてください! ベリーさんは集中をッ!」
「う、うん! ありがとうローゼ! 【閻解】ッ!」
ローゼの言葉を信じ、ベリーは【霧雨】から【閻解】に切り替える。出来れば【霧雨ノ舞】の効果時間内に終わらせたい。
「【開放の術】、【正宗ノ技】……!」
他プレイヤーからの支援のおかげで、今までに無いほどベリーのステータスは上昇した。
「これを……いやでも……」
ベリーはそう呟いてスキルリストを見る。レベルアップにより新たに取得した【閻解】のスキルがあるのだ。
だが少し不安だった。そのスキルはなんとそれ単体で55連撃の攻撃なのだ。だから、また頭痛が来るのではないかと不安だった。
「やめておこう……【閻解ノ大太刀】ッ! 【大解放】ッ!」
不安からベリーはそれを使うのをやめた。それで良いのだ。
【閻解ノ大太刀】を発動し、それをそのまま維持する。そして【大解放】というのはロウと戦ったときにやった【閻解ノ大太刀】の超巨大バージョンへのショートカットだ。これで【閻解ノ大太刀】を何度も発動しなくとも【大解放】するだけで一気に巨大化する。
「う、うおぉ、でけぇ……!」
ソラはそう言って見上げる。一度こっそり見ているがこんな至近距離から見るのは初めてだ。
「【パラライズ・グレネード】ッ!」
そしてベルの投げた【パラライズ・グレネード】が爆発すると、《リーズィヒ・ヴァッフェ・玄武》は麻痺し、動きが止まる。
「今だよ! ベリーッ!」
ベルがそう告げ、ベリーは【閻解ノ大太刀】を振り下ろす。
「てやぁぁあああああッッ!!!」
【閻解ノ大太刀】はゆっくりと《リーズィヒ・ヴァッフェ・玄武》の頭に到達し、触れた瞬間、ここに居る全プレイヤーがぶっ飛ぶほどの熱風が発生し、《リーズィヒ・ヴァッフェ・玄武》の身体は一瞬で炎に包まれ胴体をオーブごと真っ二つに切断された。
『ラストアタックボーナス、称号《神殺し》を獲得しました。』
ベリーの耳にそう電子音声が聞こえ、長時間に渡って四神討伐クエストは幕を閉じた。
さぁ、次は第三階層ボス戦だ!




