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生まれて初めてゲームをしたらパーティーメンバーが最強すぎる件について!  作者: ゆーしゃエホーマキ
第四章:ユーベル

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第70話【緊急クエスト】

新章です

「な、なんであんなに沢山の魚が……?」


ベリーは遠くの波のように押し寄せてくる魚の大群を見て言う。


「多分だけど……何かのイベントじゃない? あれモンスターっぽいし」


「え、えぇ!? あの数全部!?」


ベリーは再びスコープを覗き、魚の大群を見る。

確かに手足が生えたものや、ヒレなどが大きく発達しているものも居る。“魚人型モンスター”ということだろう。


『プレイ中の皆様にお知らせいたします。明後日13時から、緊急クエストを開始します』


街全体に、女性らしき人の声が響き渡る。


『フィールドはここ、海の街となり……魚人族の侵略を食い止めるのが目的です。数が数なため、総員で当たってください。繰り返します、明後日13時から………』


「えっと……魚倒せばいいの?」


ベリーはよく理解していないらしく、ベルにそう聞く。


「そうだね、でもアナウンスを聞く限り、全プレイヤー参加型の緊急クエストらしいからね、多分倒した数でランキングを付けて報酬が貰えるんじゃないかな?」


「そっかぁ……お金欲しいなぁ」


「ベリーは《鍛冶師》なんだからそれなりに儲かってるでしょ?」


「そ、そうだけど……足りないっていうかなんていうか……」


皆にサプライズでホームを用意したいベリーは、地道にゴールドを貯めていた。


「足りないって、またどっかで食べてるんじゃ……」


「うぐっ……そ、それはー……そのぉ……」


地道に貯めてはいるが、誘惑に負けてしまい貯まっては減りの繰り返しでそこまで貯まっていなかったのだ。

仕方ないのだ、美味しいのだから。


「本当に欲しいものは絶対に手に入れなきゃ、まぁ気持ちはわかるけど……」


そう言うベルも、ポーションなどを購入して今はかなり金欠なのだ。


「こんなイベント、私も初めてだからね! 楽しまなきゃ!」


「うん! そうだねベル!」


そしてその夜。全プレイヤー参加型という大型の緊急クエストのためか、《NewGameOnlin5》はアップデートされた。



***



そして緊急クエスト当日。午後12時。第3階層の海の街の広い砂浜に、プレイヤー達がぞくぞくと集結していた。

最低限の必要レベル20のプレイヤーからレベル80の高レベルプレイヤーまで集まった。


「あ、みんなー! 遅れてごめんね!」


「ベリー……お昼……ご飯?」


フィールがそう言って、【創造】で《魔剣グラム》を造り出した。


「そうなんだよお昼ご飯が美味しくて……ってフィールちゃんはもう武器を出すの?」


「ん……あまり手の内を見せないほうがいい……ベリーも気を付けて」


そう、ここで自身の手の内を相手に見せてしまうと、それを対策されてしまう可能性がある。

そうなるとPKされやすく、そしてPvPイベントの時も不利になってしまうだろう。


「ベルは……新しい武器!? カッコいいね!」


と、ベリーはベルが持っている新しい武器、《KS01》を見て言う。


「そうでしょそうでしょ、私はこの銃を一生の相棒にすると決めたのだよ!」


「相棒……! なにそれカッコいいっ!」


ベリーとベルはそう言って盛り上がる。


「ところでよ、こんな人数でこの砂浜で戦うのか?」


ソラが砂浜に集まりつつあるプレイヤー達を見て言う。

確かにこの人数ではこの砂浜も狭い。


「これでもサーバーで分けられて減った方なんだけどなぁ」


数々のイベントで、プレイヤー数が増えてきたため新たに別のサーバーが二つ作られたのだ。

今ベリー達が居るのと合わせてサーバーの数は三つだ。


「……あ、海に潜るんじゃないの?」


アップルの言葉に、一人を除いて皆「そうか」と納得する。


「水中戦……僕うまく動けるかなぁ?」


「大丈夫だって、身体能力は現実より遥かに上だ、それにゲームだからな、溺れて死ぬようなことはねぇさ」


バウムとソラはそう会話をしながらふとフィールのほうを見る。


「うみ……およ………」


魔剣を抱えながらガクブルと震えるフィールを見て、バウムとソラは気づく。

フィールは海が苦手なのだと。


「フィ……フィールさん、無理はしないほうがいいよ?」


「そ、そうだぜ? それにゲームなんだから溺れはしないって」


二人はそう言ってフィールを落ち着かせようとする。

が、しかし、そう言う問題ではないのだ。


「海は……嫌……」


フィールが海を嫌うのには訳がある。

それは幼少期の頃、フィール……理乃が日本に旅行に来ていた時の事だ。


「ごぶっ……助けっ……!」


理乃は海で溺れてしまった。海水浴に来て、誤って水深の深いところへ行ってしまったのだ。

その頃の理乃の身体は小さく、海水浴に来た観光客は沢山いた為、親も理乃を見失っていた。

手足を懸命に動かし、浅い方へ泳いでいったが体力が徐々になくなり、力尽きてしまった。

呼んでも観光客達の声で、少女の声など掻き消される。

呼んでも誰も来ない。

その時は運良く他の人が気付いてくれたのか、理乃は助かったが、次はそうなるとは限らないのだ。

こうして理乃は海どころかプールですらトラウマになり、嫌いになった。


「……………」


だがしかし、いつまでも弱い自分を放っておくのも嫌だ。

過去のトラウマを克服し、さらに強くなりたいとフィールは思った。今はこんなにも優しく素晴らしい仲間が居るのだ。

ならばきっと、大丈夫だ。


「……頑張ってみる……」


フィールはそう決意した。


「おう! 大丈夫だ、溺れても俺がちゃんと助けるからな!」


ソラはそう言って『にっ』と笑う。


「うん……! ありがとう……ソラ……!」


フィールは滅多に見せない笑顔を見せ、やれるという気持ちが強くなった。


「っ、そろそろ時間ね……」


アップルが時間を確認し、そう言うと全員戦闘体制に入る。


「よぉーし、狩って狩って狩りまくりますか!」


「私もベルに負けないくらい倒す!」


緊急クエスト開始まで、もうあと少しだ。

海は凄いしょっぱいのでそこまで好きじゃないです(見るぶんには良いけどね)

そんなことより茶碗蒸し食べたい。

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