第68話【トートシュリット・アインホルン】
もうすぐ70話ッ!
『さてこれをどう切り抜けるか……【アイスウォール】!』
《ヘルツ》はベルと《トートシュリット・アインホルン》を、四方に巨大な氷の壁を出現させ、ベルの移動範囲を狭くする。
『【ファイアーレイン】ッ!』
そして火の雨を降らせるスキル、【ファイアーレイン】を発動する。
『そうだ、自動追尾式にしようか』
そしてさらにベルに自動追尾するようにしたことで、ベルに集中して雨は降る。
「ひぇっ……いやでもこれは……使えるかもッ!」
そう言ってベルは《トートシュリット・アインホルン》の元へ全速力で走り、その巨体の下に潜り込む。
『クォォッ!?』
《トートシュリット・アインホルン》は突然の攻撃に驚く。
ベルを追尾している火の雨は、屋根となっている《トートシュリット・アインホルン》の背に当たる。
「おぉ! やった! ってあれ、動けない……!?」
《トートシュリット・アインホルン》のHPがかなり減って驚き喜ぶベルだが、《トートシュリット・アインホルン》の真下に居るということは、当然鈍足状態も強くなる。
『クゥオォォォッ!』
するとHPが大きく減って危機を感じたのか、《トートシュリット・アインホルン》の身体に纏う雷が激しくなっていく。
「や、ヤバイかもッ!」
フィールド全体に雷が落ち、纏う雷も徐々に強くなっていく。
嫌な予感がしたベルは逃げようと動くが、足が重くなっていて走ることはおろか、歩くことすら出来ない。
「【テレポート】……り、リキャストがまだだ!」
【テレポート】のリキャストタイムは残り3秒。
【絶対回避】はまだリキャストタイムがあるので、これに賭けるしかない。
「3……2……ッ!」
《トートシュリット・アインホルン》の身体が、雷で発光し、バチバチと音が鳴る。
「……1ッ! 【テレポート】ッ!!!」
『クォォォオオオオオッ!!!』
ほぼ同時に発動した。《トートシュリット・アインホルン》が纏っている雷を放電した直後、ベルはギリギリで【テレポート】を発動し、離れることに成功した。
「あ、あっぶなぁー! 足が焦げたよ!」
しかし喜んでいる暇は無い。
未だ放電されている雷は、《ヘルツ》が出現させた氷の壁に穴を開けながらベルに向かってくる。
「うぉぉお! 鈍足だから追い付かれるッ!」
全方向からの雷撃を全力で走って回避するベル。
そんなベルを見て、《ヘルツ》もスキルを発動する。
『面白そうだな、【ライトニングレイン】』
さらに追加で上空からの落雷の雨。
それにより氷の壁は大きなダメージを負い、崩壊する。
「リキャスト終了したぁッ! 【絶対回避】ッ!」
ベルは運良く【絶対回避】を発動させ、崩落した氷の壁を避ける。
『中々しぶといな?』
「よく言われるよッ! 【アクセルブースト】ッ!」
そして、崩落に巻き込まれ動けなくなった《トートシュリット・アインホルン》へ接近し、角を無理矢理にでも攻撃する。
「【ガンスラッシュ】ッ!」
銃とナイフを両方装備している状態でのみ使用できる、【ガンスラッシュ】を発動するベル。
ハンドガンを発砲し、さらに素早く斬り付ける。
「くぅぅッ! 硬い!」
しかしやはり角は硬く、ダメージが薄い。
氷の塊の下敷きになっている《トートシュリット・アインホルン》はまだ起き上がる気配はないのでベルはさらに攻撃する。
「そうだ! 【バーストグレネード】ッ!」
ベルは【バーストグレネード】を投げて、攻撃する。
すると爆発により大きくHPが減ったのだ。
「弱点は爆弾か! じゃあ【ダイナマイト】を一個、【ダイナマイト】を二個……」
そう言って角の辺りに【ダイナマイト】を大量に設置する。
「点火!」
そしてベルは点火し、遠くへ逃げるように走る。
そして大量に置かれたダイナマイトは、一斉に大爆発を起こす。
「うわぁっ!?」
爆風の威力が強すぎて少し吹き飛ばされるベルだが、問題はない。
そして肝心の角はというと。
「よっし! 見事に粉砕!」
《トートシュリット・アインホルン》の角は折れるどころか無くなっていた。
さらに爆発威力が強く、《トートシュリット・アインホルン》自身のHPも、残り僅かとなっていた。
「トドメ! 【フルチャージ】、【クイックスラッシュ】ッ!」
そして氷の塊に埋もれていて、爆発で氷が吹き飛んだので出ようとしていた《トートシュリット・アインホルン》の首元を攻撃して、倒すことが出来た。
『あれを倒すか、ベル、やはりお前はズバ抜けた才能を持っているな』
「そうかな、私は成長が早い親友のほうが才能あると思うけどね」
《トートシュリット・アインホルン》が光の粒となって消えていく中、《ヘルツ》とベルはそう会話をし、終わりが近付いていることを察した。
『さて、もう長いこと遊んだ、そろそろ終わりにしようか』
「そうだね……名残惜しいけど、終わりにしよう」
《ヘルツ》の残りHPはまだ余裕があるが、HPバーは一本のみ。
対してベルは回復手段を持っているが、ポーションを飲む暇がないためMPが少なくなってきた。このまま長期戦になると不利になるだろう。
「これで終わり……大丈夫っ、私ならいけるッ!」
終わりが見えてきました。




