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生まれて初めてゲームをしたらパーティーメンバーが最強すぎる件について!  作者: ゆーしゃエホーマキ
第三章:焼結の魔術師

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第60話【魔術師の日記】

大理石のような床を慎重に進むベルとハク、道幅は広く、《ラビリンスゴーレム》の他にも植物型のモンスターや兎型のモンスターが徘徊していた。


「階段がある……下りるのか……上ると思ってたんだけどな」


かなり下まで落とされたので、上ると思っていたベルは少しだけ驚いていた。


「この辺りに部屋も見当たらないですし……降りますか?」


ハクが周りを警戒しながらベルに聞く。

モンスター達がこちらに移動してきていた。


「よし、行こう……」


「了解です……」


モンスターに見つからないように、トラップに引っ掛からないように、慎重に進んでいく。


「あれは……部屋だ」


階段を下りて、左の通路を少し行ったところに一つの部屋があった。


「少し調べてみよう」


「気を付けてください、トラップがあるかもしれません」


ベルは部屋の扉をゆっくり開いて、部屋に入る。


「本棚だ……」


「何かありそうですね、手分けして調べましょう」


部屋はそこまで広くなく、本棚があり、本が綺麗にビッシリ並んでいた。


「どうやらこれは魔術の本の様ですね」


「なるほどね、私には読めないけど……もしかしてハク読めたり?」


ベルが持っていた本をそっと閉じて聞く。

ハクは無言で頷き、手に持っていた本を解説する。


「どうやらこれは蘇生魔術のことが書かれていますね、ベルが持っているのは恐らく人体の構造が書かれた本です」


「えっと……全部黒魔術ってことかな?」


物騒な内容にベルは顔を歪ませて言う。


「まぁそうですね、あとそこからここは全て治癒について、そして向こうの棚の本はモンスターについて記されているようです」


「ほ、ほんと……ハクが居てよかったよ」


ハクの職業が《魔導師》だからか、本の内容がわかるようだ。

ベルだけではこの本はただのオブジェクトとなっていただろう。


「何かストーリーがあると見た!」


「そんな自信満々に言われても、大体の人は気付くのではないですか?」


と、ハクの言葉に「た、確かに……」と呟くベル。


「あとは……ん? これ、私でも読める」


すると、ベルが机の上に広がっていた一冊のノートのようなものを見つける。


「タイトルは……無名ですか、古くなっていますね、かなりの年月ここに置いてあるということでしょうか?」


魔術師について深い関わりがあると予想したベルは、そのノートを開いた……。


「……『3月10日、まだ寒い日が続く、しかし私の弟はそれをものともせずに外を走り回っている。本当に面白い奴だ、この日記には我が弟のことを綴っていこう。』……あいつ、弟が居たんだ……」


「どうやらこの日記はその弟が主に出てくるようですね……」


ハクがそう言って、ベルは次のページをゆっくり捲る。


「『3月11日、昨日ははしゃぎ過ぎたのか、弟は風邪を引いた、……全く、風邪を引いてなんと言ったと思う? 「お姉ちゃん、僕火の魔法を使えるようになったよ」だ、らしくないが、その場で笑ってしまったよ。』……ふふっ、風邪の熱を火の魔法か……」


ベルも日記を読んで笑ってしまう。とても、微笑ましい姉弟だ。


「『3月13日、いや、昨日は弟の看病をしていたせいか、風邪が移ってしまった、あいつは「僕がお姉ちゃんを治してあげる」と言って私に回復魔法をかけようとした……間違えて麻痺をかけられたが……もちろん今日お返しに足に麻痺属性魔法をかけてやった、しばらくは歩けないだろうな。』」


「回復と間違えて姉に状態異常の魔法をかけたんですね、確かに面白い弟です」


ハクも笑みを溢す。日記はまだ続く。


「『4月26日、最近忙しくて日記を書けていなかった、私もまだまだだな、今日は弟が友達と共に山へ遊びに行った、そろそろ日が暮れる、早く帰ってこい。』……山かぁ、私も昔ベリーと行ったなぁ」


「私は山の音が好きですね、とても安らぎます」


「そうだね、川の音、草木が揺れる音、小鳥達が歌う音……私も好きだよ」


ベルはそう言って昔ベリーと行ったことを思い出す。

そして次のページを捲った。


「『4月27日、弟が帰ってこない……。』……え?」


ここで、日記に異変が起きた。魔術師の弟が山へ遊びに行ってから帰ってないようだ。


「し……『4月28日、山へ探しに行ったが……いくら探しても、いくら呼んでも出てこない、春時はモンスターの動きが活発になる……無事で居てくれ。』」


ベルは、これがゲームのストーリー、作り話に思えなかった。

それはあの魔術師がモンスターでは無く、AIでは無く、人間と全く同じに見えるからだろう。


「……『6月21日、雨の中、弟の死体を発見した。』」


ハクの顔も暗くなる。しかしこの事は最初の時点で予測が出来た。

魔術師は会ったことがあるがその隣には弟など居ない、そして弟はこの日記にしか居ない。

そしてこの部屋の大量の治癒や蘇生魔術の本。


「『7月……もう日付けはいらないか、私は決心した、弟を蘇生させる。それが禁忌だとしても。』」


魔術師は、その弟を蘇生、蘇らせようとしていた。

それが禁忌だとしても、彼女はやろうと決めた。

そしてそれはまだ、続いている。

いつかの雷の一角獣、《ブリッツェン・アインホルン》からドロップした角や、《キャプテン・トートシュリット》戦の時の紫の水晶の破片を集めていたのは、蘇生に必要な物なのだろう……。

忘れてました、第3章、ほのぼの無しッ!(多分)


累計アクセス数が遂に10万を突破しました……

あ、嬉しくて血涙が……。

もっともっと沢山の方に読んでいただけるよう、頑張りますので応援、よろしくお願いしますッ!

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