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生まれて初めてゲームをしたらパーティーメンバーが最強すぎる件について!  作者: ゆーしゃエホーマキ
第三章:焼結の魔術師

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第58話【技巧者】

ベルとハクは真っ暗な道なき道を一つのランプの光を頼りに進む。


「よっ……と、そういえばロウとは一緒じゃないんだね」


ベルは岩を飛び越えてハクに言う。


「はい、どうやらベリーに負けて火が付いたのか最近は自己強化に専念しています」


ハクもベルの手を借りて岩を乗り越えて言う。


「うへぇ、あれより強くなるのか……私も頑張らないと」


「あなたもまだ強くなるおつもりですか……ボクはファングが強くなってくれれば良いですけどね」


ハクがそう言うと、ファングが『呼んだ?』と言うようにハクが持つ杖からニュッと出てくる。

ベルは一度捕食されているので、あまり見たくない相手だ。


「それにしても……道はこっちで合ってるんですか? 何も変化がないように見えますが」


ハクは出てきたファングを撫でて引っ込めると、辺りを見回してそう言う。

風景は変わらず岩だらけ、所々に雪や氷がある程度、そして暗い。もしハクがランプを持っていなかったら真っ暗な中を手探りで探索していただろう。


「うーん、地図もヒントも何もないからね……私にもさっぱりだよ」


「ハァ、まぁこういう手当たり次第に行動するのは慣れてますから大丈夫ですけど……早めに帰れると助かりますね」


ハクはそう言ってまた岩を越える。

ベルは苦笑いすると、後を追って進む。



***



……あれからどれほど歩いただろうか。ランプの火は時間切れにより消えてしまい、べるとハクは手探りで慎重に進んでいた。


「ほ、本当にこっちなんですか?! ボクもう何か条件でもあると思うんですが!」


「うぐ……た、確かに……」


正直ベルは、今自分が立っている岩に見覚えがあった。

確実に道をグルグルとループしている。


「モンスター……の気配も無いし……スイッチとかも道中無かったし……ど、どうしろと……!?」


「知りませ………そ、そうだ!」


ハクは何かを閃いたのか、ファングを出現させる。


「出口、まぁダンジョンの入口ですが……それを探すのではなくて、モンスターを探すのはどうでしょう?」


「モンスター……そうか、索敵スキルとか確かあったはず」


ダンジョンにはもちろんモンスターが存在する、その索敵スキルに反応するかはわからないが、もし見つけることが出来たらそれを元に入口を見つけられるかもしれない。


「ボクのファングはモンスターに敏感で、半径20m以内のモンスターを見つけることが出来ます」


「……よし、なら私の【サーチ】とファングでモンスターを探してみよう」


そして、ダンジョンではなく、モンスターを探すことにしたベルとハクは、索敵を開始した。



***



「【サーチ】! ……ここもダメか……」


「ファングも反応ありません……」


しかし、全く反応がない。もしかしたらダンジョンにプレイヤーが侵入しないと出現しないのかもしれない。


「……ん? そ、そうだっ! ファングの索敵範囲は20mって言ってたよね!」


ベルはズイッと顔をハクに近付けて聞く。


「ち、近っ………は、はい、そうですよ、でもその範囲でも反応は……」


急に近付かれて少し顔が赤くなったハクだが、幸いか暗くてベルにはわからなかったようだ。


「違うよ! 今まではこの谷のド真ん中で索敵してたでしょ! なら、壁の隅でやったら……壁の向こう側にあるかも!」


「確かに……無くはないですね、やりましょう!」


そして今度は谷の壁を調べる。ベルも一応【サーチ】で探してみる。


「ファング……どうですか?」


『グルゥゥ……』


ハクが聞くが、ファングは首を横に振る。

この幅もかなりある谷で、左右両方の壁を全て調べるのはかなり時間がかかってしまう。


「何か無いかな……」


ベルはそう言って考える。

そもそもこうやって探索するクエストでは無いはずだ、何かしらギミックがあり、それで道が開けるはずなのだ。


「……うぅーん……どうしよう、何も浮かばないや……」


ベルがそう言った次の瞬間。ハクが何かに気付いて言う。


「ベル、あなた何のアイテムを持っているんですか? ポーチがなんか光出しましたよ?」


「え? そんなはず……ってうわ! ホントだ! ってどんどん強くなってる!?」


ベルは慌ててアイテムポーチを開く。

そこにはポーションやらが入っているのだが、そんなものが急に光わけがない。


「ハッ! これだ!」


そう言って具現化させたのは、《ゲフリーレン・カイザー》と《ヴルカーン・カイザー》からドロップした空白で名前がなかったアイテム。

バグってると思って具現化させずにポーチの中に入れていたが、具現化させても何の問題も無かった。


「名前がある……! 《炎の宝玉》と……《氷の杖》か、光ってるのはこの玉だけど……光ってるだけだし、杖はなんか先の部分に何も無くて寂しいし……この二つを組み合わせるのかな?」


と、ベルが推測した通り《炎の宝玉》と《氷の杖》を組み合わせるというのが正解なのだが……。


「ダメだ! これハマんない!」


《氷の杖》に《炎の宝玉》をグリグリと無理矢理ねじ込もうとするも、全くびくともしない。


「こ、このままでは先へ進めないッ!」


ベルがそう言って頭を悩ませているとハクが言う。


「ハァ……ちょっと貸してください」


「は、はい……」


ハクはベルから《炎の宝玉》と《氷の杖》を受け取ると、目の前に半透明のテーブルを出現させる。


「そ、それは……!」


「はい、ボクの副職業は《技巧者》です、レベルも足りてますね」


ハクはそう言うと、一瞬で《炎の宝玉》と《氷の杖》を組み合わせて《焼結の宝杖》を作り出した。


「あ、ありがとう! ありがとう! 《技巧者》を選んでくれていてありがとうっ!」


ベルはハクから《焼結の宝杖》を受け取って何度もお礼を言う。


「運が良いのか悪いのか……さぁ、早くそれで試してみてください」


「えっと……これ装備しないとダメみたい」


と、ベルから杖を返されるハクは一瞬固まったまま動かなかった。


「本当にボクが居て良かったですね……これ一人でやるものじゃないでしょう」


「本当にその通りでございます……」


ハクは自分の杖を腰のベルトに差し、《焼結の宝杖》を装備する。


「これは……どうやら正しい道へ導いてくれるようですね、ほら、こっちに向けると暗いですが、こちらに向けると明るく光ります」


ハクは《焼結の宝杖》を左右に振って見せる。


「よし! じゃあ明るいほうにどんどん進もう!」


「ハァ、了解です」


ダンジョンまでの道が照らされ、順調に進んだ。


「……! これだ、岩に塞がれて見えにくいけど、この扉だよ!」


そして、プレイヤーが三人ほど並ぶくらいの幅の大きな扉が、巨大な岩で塞がれているのを発見したのだった。

《技巧者》は主に細かいクラフトが出来る副職業です。

ベリーが鈴のお守り(ネックレス化シテル)を作れたのはあれです、《鍛冶師》でカンカンって打って作ったんです。そういうことなんです。クラフトじゃないデス、ケッシテ。


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