第57話【奈落の下で】
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「【アクセルブースト】ッ!」
『クゥゥン……!』
ベルは火山を下り、雪原を探索する。
【アクセルブースト】で俊敏力を強化し、今度は普通のナイフを使い、連続で《アイスウルフ》を倒していく。
「どこにあるのさ……! 【オーバードライブ】ッ!」
ベルはさらに俊敏力を上げ、フィールドを走った。
しかし何も目印がなく、この白銀の世界でどうダンジョンを見つければいいのだろうか。
「地下……入り口ッ! 何か手掛かりッ!」
ベルは高速で走りながら考える。
焼結島を上から見て、左下の端が船着き場、つまり唯一の草原で、《ゲフリーレン・カイザー》と戦闘した場所は草原から焼結島の中心へ向かう途中。
そして《ヴルカーン・カイザー》と戦った火山は島の右上の端。
そしてベルは現在、その火山から中心部へ向かっている状態だ。
しかし焼結島の中心部辺りに何か見えるかと言われれば“NO”と答えるだろう。
何か大きな塔があるわけでもない。ベルは中心部にダンジョンの入り口があることを祈りながら走っていた。
「中心に何もないなら……もう隅々まで探さなきゃわかんないなぁ……」
落ち着いて降る雪の中を猛スピードで走り抜けるベルだが、正直どこかで休憩がしたかった。
それもそうだ、連続で2体ものボスと戦ったのだ。
それにこれは端末ゲームではない。VRMMORPGだ、流石に疲労していた。
「ハァ……ハァ……!」
しかし、早く強くなりたいという気持ちと、あの魔術師の事を知りたいという気持ちがあり、急がずにはいられなかった。
「ハァ、ハァ……うあっ!?」
すると、ベルは地面に足を引っ掻け、体勢を崩してしまう。
「わっ、わっ! ちょっ、落ちるッ!」
すると体勢を崩した先は、下が見えないほど大きな亀裂だった。
恐らく火山の噴火や地震で割れたのだろう。
「きゃああぁぁぁあっ!!!」
“きゃあ”と、らしくない叫び声を上げて、ベルは奈落へ落ちていった。
***
____頭が痛い、……いや、身体中、全身が痛い。と言っても痛みは制限されているのでそこまで痛くはないのだが。
「……ん……ぅ……?」
いやしかし、何だろうか、ベルの頭は何か柔らかく暖かいものの上にあった。
とても寝心地が良いが、早く魔術師の元へ、ダンジョンを探さなくてはならない。
「……っ、いったた……! 現在なら骨折れてる……いや死んでるか、【絶対回避】を発動してこれかぁ……どんだけ下まで落ちたんだろう」
ベルは頭を擦りながら上を見上げる。しかし光が届かないほど下まで落ちてしまったようだ、もし【絶対回避】を発動していなかったら死亡して、街で目覚めていただろう。
「そして私の頭にあったやわっこいものは一体………」
ベルはそう言って後ろを振り向くと……。
『グルォ?』
「…………え?」
……真っ黒の化け物が居た。しかしその化け物は襲ってくる気配はない。
「く、暗くてよくわからないけど……モンスター……だよね?」
『グォゥ! グア! グア!』
化け物は何かを呼ぶように吠えると、奥から何か小さな光が近付いてくる。
「ッ!? 仲間を呼んだ!? フルチャ……ってMP無い!」
ベルは慌てて銃を構え、【フルチャージ】を発動しようとしたが、MPは連戦により無くなっていた。
「うぉぉお! こうなったら強行突破! グレランで吹き飛ばしてやらぁ!」
さらに混乱したベルはグレネードランチャーを構えて光に向かって発射しようとした、その瞬間。
「ベル、ボクです、ハクですよ……」
「は……ハク? ってロウと一緒に居たあのボクっ娘の?」
現れたのは、ランプを持ったハクだった。
「どうやらあなたは混乱すると行き過ぎた行動に出るようですね、気を付けておきます」
「えっと? なんでハクがここに?」
「何故って……焼結島の吹雪が弱くなっていたので来てみた結果、地震が起きたと思ったら岩が大量に降ってきたり……狼のモンスターに囲まれたり……そしてまた地震が起こったと思ったら地面が割れて真っ逆さま……と言うわけです」
「あ、あー……大変……だったね?」
ベルは、その大半が《ヴルカーン・カイザー》との戦闘で起こったことなのは黙っておいた。
「あなたこそなぜここに?」
「私は……その……」
ベルはハクに、ユニーククエストのことを伝えるべきか迷っていた。と言ってもユニーククエストはその人個人だけしか受けれないので伝えたところで羨ましがられ、腹いせに攻撃されるくらいだろう。
しかしベルは、正直ハクとダンジョンを攻略できないかと思っていた。二人ならば少しは進みやすい。
だが、ハクがそれを承諾する理由、つまりハクにとっての利益が無い。
「……まぁその素振りからしてユニーククエストでも引き当てたんでしょう、別にボクはそんなんで羨ましく思って攻撃なんてしませんよ」
「あ、バレてた?」
ハクは溜め息を吐きながらさらに続けて言う。
「そしてボクとダンジョン攻略できないか悩んでいるのでしょう?」
「そこまでわかってるの!? まぁでもその通りなんだよ……君に利益があるのかと言われても保証できない、むしろ無いかもしれない、でも必ずお礼はする、だから……共闘、してくれないかな?」
ベルはダメ元で言ってみる。ハクはまたも溜め息を吐き、言う。
「良いですよ、別に。というかむしろボクがお願いしたいですね」
「えっ?」
ハクはそう言うと周りを見渡しながら言う。
「ここ、多分ユニーククエスト限定のフィールドなんだと思うんです、あなたじゃないと先に進めない、戻ろうとしてもこの崖を登るわけにもいかない、そしてファストトラベルなどのテレポート系は全て使用不可能……だからもう強制ログアウトでもしようかと思ってたところですよ」
「そ、そっか! なら仕方ない! 一緒に行こう! すぐ行こう!」
ベルはハクの話を聞くなり、嬉しそうに頷く。
「ハァ……まぁよろしくお願いしますよ、ベル」
「よろしく、ハク!」
こうしてベルはハクと共に先へ進む事となった。
ハク参戦ッ!




