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生まれて初めてゲームをしたらパーティーメンバーが最強すぎる件について!  作者: ゆーしゃエホーマキ
第三章:焼結の魔術師

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第52話【シナリオ通り】

遅れてしまい申し訳ありません。

そして累計アクセス数が80000を超えました!

ありがとうございます!

ベリーとロウの一件から数日経ったある日のこと。

ベルは一人、森林でモンスターを狩っていた。

大量のモンスターの討伐が目的のクエストで、クリアすると新たなスキルが取得できる。

ベルは《焼結島》の中心への道がどうすれば開けるのかわからず、攻略サイトや関係がありそうなクエストをやってみていたのだが、全くそんな気配はない。


「ハァ、ハァ……! そろそろ武器も変えないと厳しいかな……」


そう息を切らしながら言ったベルはクエストをクリアし、【麻酔弾】を取得した。


「あぁー! どうすればいいのさぁー!」


ベルはそう叫ぶが、叫んだところで何も変わらない。

やはり強力な耐寒防具を入手して挑むべきか、それともわからない条件を満たすか……ベルは悩んでいた。

そもそも耐寒防具というもの自体聞いたことがない。恐らく第3階層より先の階層に雪原フィールドなどがあるだろうが……そうなると第3階層のボスを倒して先へ進まなくてはならない。

ベルの今の装備では少し厳しいだろう。

そして何の条件かもわからないものをどう満たせと言うのか。


「うーん、エリア解放クエストとか? でもそんなの攻略サイトにも無いし………これ多分ユニーククエストだろうし当たり前か」


ユニーククエストとは以前ベリーが討伐した《ニーゲルレーゼン・フェッター》のクエストがそうだ。

その人個人だけがクリアできるクエスト。

クリアすることでユニークスキルや装備が手に入る。


「地道に頑張るしかないか、よし! そうと決まればレベル上げだ! 待ってろまじゅちゅし!」


魔術師と言おうとして噛んだベルは顔を赤くし、誰かに聞かれてないか辺りを確認した後、誰も居ないことに安心したのかホッとし、その場を離れた。



しかしその瞬間、ある事が起こった。


ベルの耳に聞こえるあらゆる“音”が大きくなったのだ。

風に揺れ聞こえる葉の音。

自身の呼吸の音。

モンスターの足音。

そしてモンスターを攻撃するプレイヤーの足音と攻撃音。


「噛んだから怒った……って訳じゃないよね?」


ベルは一瞬またあの魔術師が現れるかと思ったがその気配はない。

音はますます大きくなり、一番よく聞こえたのは、ベリーがベルにプレゼントした鈴のお守りだった。

ベルの首にかけられネックレスとなっているお守りは、ベリーが暗殺者であるベルの為に最小限の音量になっているため、静かな場所で耳を凝らさないと聞こえないのだ。

それが今は『チリンチリン』と鬱陶しく聞こえる。


「うぐっ……うるさい……!」


ベルは耳を塞いでしゃがむが、音は消えなかった。

しかしそれでベルは理解した。

耳を塞いでも聞こえるということはこれは本物の音ではない。つまり、“幻聴”。


「そこだ! 【スキルキャンセル】ッ!」


『ぐぬぅ!?』


ベルは少し空間が歪んでいる所を発見し、【スキルキャンセル】を発動させる。

するとそこからは真っ黒なローブに身を包んだ老人が立っていた。うるさい幻聴も消えた。


「この状況で出てくるってことは……あなたを倒したら道が開けるのかな?」


『な、ならやってみるがいい! だがワシは手強いぞ? 何せ全ての幻属性を使うことが出来るのじゃ!』


と、黒ローブの老人は自慢してスキルを発動しようとしたが。


「【幻惑】、【分身】、【テレポート】……っと、で? あっさり囲まれちゃったけど何をするのかな?」


ベルは一瞬でスキルを発動し、黒ローブの老人を取り囲んで言った。


『えっ? 嘘じゃろ? ワシこのクエストの中ボスじゃよ?』


「中ボスなら何かあるか……ってあなたも自覚してるんだね」


自身が中ボスだと認識している黒ローブの老人はベルにそう言われ、『凄いじゃろ』と言わんばかりのドヤ顔をした。


『まぁワシはシナリオ通りにやるだけよぉ、シナリオでは……えぇっとぉ? あー、なるほどなるほど、この後にこれを渡すんじゃな』


「うおぉ、このファンタジーな世界でNPCからそんな事を聞くとは思わなかったよ」


ベルはそう言いながら、黒ローブの老人が取り出した丸いビー玉ほどの石を受け取る。


『そんなこと言われてものぉ、実はこれも“シナリオ通り”かも知れんじゃろ?』


「まぁそれはそれで良いけどさ、この石は何?」


NPCとこうして会話しているのも慣れてきたベルはさっさと話を進める。


『あぁそれ? “爆弾”』


「はぁ!? 【絶対回避】ッ!」


と、まさかの爆弾を渡され、ベルはそれを放り投げて【絶対回避】を発動させる。


『ぷっ……くくっ! う、嘘ピョーン! アッハッハッハ! 見事に騙されたのぉ! ひぃー! 腹が、息が出来ん! ハッハッハ!』


黒ローブの老人はベルの反応を見て笑い転げる。


「言い残すことはそれだけか?」


『あ……』


黒ローブの老人の額に銃口を当てて言ったベルは既にスキル【貫通弾】を発動していた。


「私は優しいからね、選ばせてあげよう」


『ほ、ほぉ、それは助かるのぉ……じゃあ先に進むための装備やるから……助けてくんない?』


黒ローブの老人がそう提案する。


「え? 何言ってんの? あぁ説明してなかったね……このまま【貫通弾】を喰らうか、【地雷】を自ら踏みに行くか、【サウザンドショット】で蜂の巣になるか、選んでね♪」


『こっわ! 何この子こっわ! その辺のモンスターより怖いわ! こんなのと相手してられるかってんだ!』


黒ローブの老人はそう言うと、ベルと反対側の道へ走って逃げ出した。


「えい」


『ぐふっ!?』


しかし、銃の広い射程距離からは逃げられなかった。


「HPもうほぼ0じゃん、ほんとに中ボス?」


『だってワシ、最初の幻聴しかやらないもん、シナリオ的に』


「シナリオ通りだったの!?」


『そうじゃよ、だから最初に言ったじゃん』


とまぁここまでちゃんとシナリオ通りだったようで、黒ローブの老人は役目を終えて光の粒になろうとしていた。


『あぁあとワシが消えたら《焼結島》の中心行けるから』


「え、え? なんか簡単じゃなかった?」


『いやいや、あの幻聴の謎を解くことが出来たのはお前さんじゃからじゃよ、これもシナリオ通りじゃ』


やはりこれもシナリオ通り。何もかもがシナリオ通りだったと言うことだ。


「運営凄いなぁ……」


『んー、ちと勘違いしとるな』


「へ?」


黒ローブの老人は最後にこう言って消えていった。


『ここまで全て、“あのお方のシナリオ通り”じゃ』


あのお方とは、やはりあの魔術師だろう。

つまり運営が用意したシナリオは既に無く。あの魔術師が考えたシナリオだったわけだ。


「……なんか変な中ボスだったけど……嫌いでは無いかな」


ベルはそう言って、解放された《焼結島》へ早速進み出した。

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