第51話【決着】
決着です。
「【鬼神化】……【閻解】ッ!」
ベリーは【閻解】を発動し外見が黒く変化する。
「来いッ! ベリー! 【瞬速ノ術】ッ!」
ロウも限界まで、さらに俊敏力を上げベリーの攻撃を避ける準備をする。
そんなロウを見て、ベリーは笑っていた。そしてロウもまた笑っていた。
二人が思っていることはただ1つ。
“こんなに面白い戦いはない!”
そこからの戦闘は、もし観戦者が居たのならその人は目が追い付かないほどのスピードの戦闘を見るだろう。
「【旋風】ッ! 【一閃】ッ! 【剣ノ乱舞】ッ!」
ベリーはスキル発動後の若干の硬直状態を【鬼神化】の効果で無視し、連続で別々のスキルを叩き込む。
「ハッ! その程度じゃあ俺に当たらねぇぞ!」
しかしそれもロウは難なく避けていく。
避けられていれば【千力千斬】の効果は発動しない。だが一度当たればそれでいい。
「【エンチャント・パラライズ】!」
ベリーも自身の弱点であるスキルの少なさを克服しつつある。
職業侍、武者が使う基本スキルやエンチャントスキルはなんとか取得したのだ。
その中で手に入れた麻痺属性を付属させるエンチャントスキルを発動させる。
「エンチャントしたところで当たらなきゃ意味ねぇだろうが! 【竜巻】ッ!」
「くうっ……! 【鬼神斬り】ッ!」
名の通り竜巻を発生させるスキルでベリーを攻撃するロウ。
ベリーも【鬼神斬り】で攻撃するが当たらない。
「届かない……ッ!」
ロウにも体力の限界があるのか、ほんの少しだけ速度が落ちたがギリギリで避けられてしまう。
時間が経過すればロウはスキルの効果が切れ、さらに体力的にも疲れ、反応速度が低下する。
しかしそれはベリーも同じだ。
「もっと速くッ!」
ベリーは無駄な動きを最小限に抑え、少しでも素早く攻撃する。
「ははッ! まだまだだなぁ! 【神速】ッ!」
しかしどれほど俊敏力を上げるスキルを持っているのか、さらにスピードアップするロウ。
もはや目で追いかけることがやっと出来るレベルだ。とても攻撃が当たりそうにない。
「……ッ、やっぱり……勝てな………いや、まだある!」
一瞬勝てないと思ったベリーだが、ある秘策を思い付く。
と言っても、出来るかは不安だし、それで戦況が良くなるとは限らないが。
「【閻解ノ大太刀】ッ!!」
「いかにも必殺技って感じだが……当たらねぇよ!」
違う。確かにベリーがやろうとしているのは【閻解ノ大太刀】を当てることだが、その前に……。
「ふぅ……ッ!」
ベリーは刀に力を込めると、【閻解ノ大太刀】は熱をさらに上げ、その大きさを保ったままの状態になる。
「す、スキルを……維持しただと? そんなことが……」
大抵のスキルは自動的にゲームシステムがアシストする。
だから攻撃スキルの中断は出来てもそれをそのまま維持するというのは出来ない。いや、ただベリー以外のプレイヤーが出来ないと決めつけていただけかもしれない。
大太刀となって重量も重くなり、確実に振りづらいだろう。
しかし修行の成果なのか、重さは気にならなかった。
「はは、そっちが小次郎だったか?」
「わ、私は女だよ!?」
ロウが言ったのはそういうことでは無いのだが。
ロウはベリーの扱いにも結構慣れてきたのか気にしていない。
「で? そいつがでかくなったからって俺に当てられるのか?」
「え? まだまだ!」
ベリーはそう言うとさらに【閻解ノ大太刀】を発動させる。
「は……?」
ロウは言葉を失った。《鬼神ノ太刀・閻解》はさらに大きくなったのだ。そしてベリーはその後もさらに【閻解ノ大太刀】を発動し、どんどん巨大化させる。
「うぅ……さすがに重いかも……」
「いやいやいやいや!!! 反則だろそれッ!!」
ロウは自分が予想していた事よりも斜め上すぎるこの事に驚きを隠せないでいた。
「ルールは言ってない!」
「そうだけどな!? 限度があるだろ!?」
ロウはそう叫ぶが、ベリーに限度があるのかは不明だ。
もう佐々木小次郎が使っていた通称“物干し竿”と呼ばれる刀なんて可愛いものだ。
10mは超えているだろう。
「じゃあ……避けれるものなら避けてみてよ! 【大閻解】ッ!!!」
ちなみに【大閻解】とは、ベリーが勝手に付けたこの形態の名称だ。
「だ、だが! 【絶対回避】ッ!」
しかしロウも【絶対回避】を使用し避ける。
「【閻魔】ッ!」
「ハア!?」
刀が大きすぎてもはや超至近距離で発動した数発の【閻魔】。
ロウは見事にそれを受けてしまう。
「そ、そろそろこれやめとこう……【閻解ノ大太刀・全解放】!」
そしてベリーはまたまた自分でネーミングしたスキルを放つ。
ちなみに単に何回も使用した【閻解ノ大太刀】のゲームシステムのアシストを抑えていたのを解除しただけだ。
つまり数倍の威力の【閻解ノ大太刀】、さらに【政宗ノ技】と【千力千斬】の効果で上昇した攻撃力の圧倒的な火力がロウに押し寄せた。
「いや、これくらいなら避けれ……なっ!? 効果が切れてやがるッ!?」
「せいやぁぁーー!!!」
俊敏力を上昇させるスキルの効果が切れ、避けることが出来なくなったロウは上空から押し寄せる【閻解ノ大太刀】により敗北した。
***
「回復……っと!」
ベリーは刀を納め、人魂となったロウを復活させる。
「……ハァァ~! 負けた負けた! とんだ隠し玉を持ってやがったな?」
「え、えぇっと、その場で思い付いた作戦なんだけど……」
ベリーはロウにそう伝える。
「ハッハッハ! マジか? それを実行できたのがスゲェーよ! もうガキなんて言えねぇな」
「が、ガキじゃないやい!」
ベリーは一瞬子供扱いされたと思ってそう言うが、すぐに気づく。
「ここまで楽しいゲームは初めてだ、お前さんと戦えて良かった。……そうだな、報酬をやろう」
ロウは言うと《妖刀・村雨》をベリーに差し出す。
「こいつをくれてやる」
「えぇっ!? そ、それは悪いよ!」
ベリーも素直に受け取ることは出来ない。そもそもロウにただ勝ちたかっただけで報酬など求めていない。
「いや、お前に負けたら俺は元の職業に戻るつもりだったんだ、だからこの刀はもう使わねぇ」
「で、でも……」
「元々お試しでやってただけだ、気にすんな!」
ロウはそう言ってベリーに刀を押し付ける。
「……まぁこれで終わった訳だが……何せ俺みたいなゲーマーは負けず嫌いでな、次は本職でやる、またやり合おうぜ? ベリー」
「うん! 受けてたつよ! ロウさん!」
「さんはやめろ、ハクでお腹一杯だ」
ロウはそう言って職業を侍から狂戦士へ変える。
見た目もいかにも攻撃力が高そうな装備だった。
「じゃあロウ君?」
「君はやめろ! ロウでいい!」
ロウは必死にそう言い、首裏を掻くようにしてさらに続けて言う。
「お前と居ると調子狂うな全く……」
「えへへー」
「褒めてねぇからな?」
「えぇ!?」
と、そんなやり取りをして、この二人に友情が芽生えた瞬間だった。フレンド登録もして、この戦いは幕を閉じた。
***
一方その頃、こっそり観戦に来ていた者達は。
「あれ……ベリーなの?」
アップルはそう言ってただベリーが最後の【閻解ノ大太刀】で斬った跡が残る地面を見ていた。
「私……もっと強くなる……」
フィールはベリーとロウの戦いを見てそう言った。
「フィールはまだ強くなる気か……バウム頑張れよ……」
ソラはフィールとバウムにそう言ってバウムの肩をポンポンと手で軽く叩いた。
「が、頑張るよ……うん、頑張る……」
バウムはもう何が起こったのか半ば理解出来ていなかった。
「………………」
そんな中、ベルは静かにベリーを見ていた。
「……私も負けてられないね……」
ベルは皆に聞こえないよう一人そう呟いた。
はい、まさかさらに巨大化するとは……びっくりですね!(作者)
そして次回からはベル中心になると思います!
お楽しみに!




