第48話【正宗ノ技】
あれからさらに数日経ち、ベリーは修行を重ねていた。
「496……497……!」
場所は第1階層の山岳地帯にある渓流。涼しげな川の水が流れる音と美しい鳥達の鳴き声、そしてベリーが刀を振り風を斬る音だけがあった。
川辺の地面は砂利で少し踏ん張りにくいが、バランス感覚も鍛えられるだろう。
「500ッ! 501……502……!」
現在ベリーが振っている刀は《鬼神ノ太刀・閻解》よりも重い、ベリーが鍛治師で作った刀、《無銘・重》だ。
これは重さに慣れてくるとどんどん重くなっていく。
つまりずっと一定の重さを感じることが出来るのだ。
「999ッ! 1000ッッ! ……ったはぁ~!」
1000回振ったところで止め、少し休憩する。
ベリーは《無銘・重》を地面に突き刺すと大きめな岩に腰掛け、コロッケを食べる。
「……んむ? 『侍熟練度100%達成』? なんだろう……ベルに聞いてみよう!」
ベリーは手早くメッセージを書き込み、ベルに送信する。
そして数秒経って返信が届く。
「『熟練度が100%になると上級職になれるクエストが受けれるよー、ベリーなら侍の上級職の武者かなー?』……上級職! やったぁ!」
と、喜ぶベリーだがこれは上級職になるための切符を手に入れたに過ぎない。そのクエストがどこで受けられるか、どんな内容かは毎回変わっているらしく、攻略サイトもあやふやだ。
「さて、っと……!」
ベリーは岩から立ち上がると、《鬼神ノ太刀・閻解》を装備する。
「おぉ、軽い……これなら!」
ベリーはそう言ってアイテムポーチからベルも使っていたトレーニング用のモンスターを召喚する球体を取り出し、適当に設定してモンスターを召喚する。
「せいっ! やぁ! とりゃあ!」
ロウを倒すために、無駄な動きをしないよう心掛け、次々とモンスターを倒していく。
そしてあとは【鬼神化】の連続でスキルを使用した時の頭痛を無くすことが出来ればさらに戦いやすいのだが……。
「【鬼神化】っ! 【鬼神斬り】ッ!」
ベリーは【鬼神斬り】を連続で18回使用するがやはり頭痛が来る。
【鬼神斬り】は15回、【閻魔】は5、6回くらいは連続使用して頭痛が起きないのだがそれ以上はまだ無理があった。
「【閻解】っ!」
そして【閻解】も使いこなせなくてはいけない。
ベリーはそうして凡そ半日、刀を振り続けた。
***
「ハァ……ハァ……もう腕が動かないよぉ~」
ベリーは手首をぷらぷらさせて言う。
もう何回刀を振ったかわからない。
「うん? 『スキルを取得しました』?」
ベリーはシステムメッセージを見て、スキルリストを確認する。
「こ、これはっ!?」
ベリーが取得したのはエクストラスキル、その名も【正宗ノ技】。
取得条件はわからないが、とんでもないスキルを手に入れた。
その効果は、“一定時間、装備している武器の攻撃力を2倍にし、あらゆるペナルティを無効化する。”というものだ。
これで【鬼神化】の頭痛が無効化されることは無いが、ペナルティの無効化ということは状態異常が全く効かなくなるということだろう。
そしてこのスキルの凄いところはもう1つある。
「えっ?! 鍛治師でも使用可能!?」
もう1つの凄いところ、それは鍛治師で使用すると、“成功率を2倍にし、スキルが付属している武器を生産できる”というものだ。
普通はスキル付きの武器はかなりレアで、ダンジョンの宝箱やモンスターからのレアドロップでしか手に入らないのだ。
それを作れるとなるとかなり凄いことなのだ。
「す、凄い……これならホームもすぐに買えるかも!」
ベリーはそう言って、早速武器を作りに鍛治場へ向かった。
正宗……武器じゃないです。




