第38話【雷の一角獣、そして……】
遅くなりましたすみません!
「みんな準備は良い?」
第2階層ボスのダンジョン前でベルは銃に弾を装填して言った。
「うん! バッチリだよ!」
ベリーはいつも通り元気よく返事する。
「俺も問題ないが……一人増えてねぇか?」
そうソラがアップルのほうを見て言う。
「あっ、自己紹介忘れてた……私は九宮林檎、こっちではアップルよ」
「あぁ、転校してきたって言う……僕は隣のクラスの二ノ葉正樹って言います、こっちではバウムです、よろしくお願いします」
「……うちの高校、転校生多くねぇか?」
と、自己紹介をするアップルとバウム。そしてソラがフィールとアップルを見て言った。
「……アップル、優しい……仲良くする」
「え、あ、ありがとう?」
2対2のチーム戦イベントで出会ったフィールとアップル。
どうやらアップルはフィールに気に入られたようだ。
「じゃあ行こうか! 第2階層ボス戦!」
こうしてダンジョンの扉は開かれた。
***
「な、なんか……凄く簡単だね……」
ベリーがモンスターを斬り捨てて言う。
「いや、第1階層ダンジョンのレベルがおかしかっただけでこれが通常のレベルなのかも……」
そうベルが答える。人数が増えたこともあるが、やはり難易度は下がっている気がするのだ。
しかし油断は禁物。なぜならまだ第3階層に到着した者は少ない。
「というかあんまりモンスターが湧かないわね……」
「確かに、これじゃあただ塔を上ってるだけだね」
アップルとバウムがそう言った。モンスターのレベルが低いうえに出現率も低い。ただ何か不穏な感じがする。
「……広いね」
「だね、そろそろ中ボスかな?」
ベリーとベルがそう言う。
階段を上がっていくと大きな広場に出た。奥にはまだ階段が続いている。
「やっとか、なんかすげー長く感じるなぁ」
「階段……上ってるだけ……だからね」
ソラは軽く準備運動をして言った。フィールも今回は父親を脅して情報を聞き出そうとはしなかったようだ。
「さぁーて、何が出るかな?」
ベルはハンドガンを構えて言う。
そしてイベントが発生した。それも大きな。
「っ! 【反撃者】、【スキルカウンター】!」
フィールが一瞬で前に出て、【反撃者】、そして【スキルカウンター】を発動する。
その瞬間塔の上、天井を貫いて落雷が落ちてきた。
「【パーフェクトガード】ッ!!」
するとソラが何かを悟り、【パーフェクトガード】を発動する。
「フィール! 俺の後ろに下がれ! 嫌な予感がするッ!」
「わかってる……!」
他も【絶対回避】などを発動しておく。そして嫌な予感……ダンジョン攻略者が少ない理由が今わかった。
『_____ッ!!!』
と、嘶きが聞こえたと思ったら雷と共に轟音をたててモンスターが現れる。
「これが、中ボス……?」
《ブリッツェン・アインホルン》、雷の一角獣。
雷や光を操るモンスターで素早い動きが特徴。第2階層の中ボス。
「【サウザンドシュート】!」
「【旋風】!」
「【神技・大地切断】!」
ベル、バウム、ソラの3人が《ブリッツェン・アインホルン》に向けてスキルを発動する。HPは大きく削れた。
が、しかし。
『____!』
突如角が光りだし、攻撃した3人のところに雷が落ちた。
「これは……カウンター攻撃?」
【絶対回避】で回避は出来たが、雷の速度を避けることはベルでも難しい。
「仕方ない……皆で総攻撃してゴリ押すよ!」
ベルの言葉に皆は頷く。いや、一人を除いて。
「雷……怖い……です」
と、部屋の隅で踞るのはなんとベリー。
いつも元気で明るいベリーだが、雷が苦手でいつもと反対に暗くなってしまう。
「私……ここから弓で射ってるから……あとよろしく……」
「ベリー……まだ雷怖かったんだね……」
「ベリー、雷怖い……意外……」
前から雷が苦手だということは知っていたベルだが、まだ克服出来てなかったとは知らなかった。
「仕方ないわね、私達だけでやるわよ! 【白狼】、【フリーズブレス】!」
アップルは【白狼】を召喚し、【フリーズブレス】というスキルで攻撃を指示する。
「そうだな、【ソードビーム】!」
ソラも【ソードビーム】で攻撃する。
『___ッ!』
カウンターの雷を回避しようとするソラとアップル。しかし避けきれずにダメージを受けてしまう。
「攻撃が白狼に行くかと思ったんだけど……駄目みたいね」
「あぁ、どうするよこれ……」
雷の攻撃力も高く、なんとか避けながら攻撃するか、カウンター攻撃を無効化する方法を見つけるしか無い。
「……【メテオシュート】」
するとベリーが【メテオシュート】を放ち、《ブリッツェン・アインホルン》の頭に命中させた。
するとどうだろう。頭に強い衝撃が走り、《ブリッツェン・アインホルン》は気絶した。
「……ナイスベリー! 【乱射】、【サウザンドシュート】!」
「【幻手】! 【新月】ッ!」
「【神技・絶断】ッ!」
「【創造・槍】グングニル……」
気絶した瞬間、総攻撃が《ブリッツェン・アインホルン》を襲う。
破壊的な攻撃力でHPは一瞬で消え失せた。
「……このパーティー火力おかしくない?」
そう言ったアップル、そして白狼は呆然と立ち尽くしていた。
***
《ブリッツェン・アインホルン》を倒したことで、ベリーもいつもの調子に戻った。
「うぅ……ごめんねみんな」
「大丈夫だってベリー、というかベリーのお陰で倒せたし……」
皆に謝るベリーにベルがそう言った。
「ん……? あれ、ドロップ品……?」
フィールが指を指した先には《ブリッツェン・アインホルン》のドロップ品と思われる角が落ちていた。
「ホントだ、なんかレア物っぽいね」
ベルがそう言って角を拾おうとしたその時。上の階へ行く階段から降りてくる足音が聞こえた。
『また駄目だったか……』
そう呟きながら降りてきたのは顔はフードで隠れているが、魔術師風のモンスター……のようなものだった。その声は女性だが、とてもAIとは思えないほど自然だった。
『……これで何度目か……』
魔術師は角を拾うとそう呟いた。
『……やはり生物には限界があるな……あぁそうだ早く戻らなくては、見つかっては危険だ』
「……これ攻撃してもいいかな?」
と、ベルが振り向いて皆に聞くが、そこで異常なことが起きているということがわかった。
ベリー達は全く動かず……いや世界丸ごと、まるで時が止まったようだった。
「あ、あれー? ベリー? おかしいなーバグかなー?」
ベルはバグと言うが自分でもわかっていた。これはバグではない。
『動ける者が居るのか……ふむ、本来なら殺すが……まぁいい、お前とはまたどこかで会いそうだしな……』
魔術師はそう言うと闇の粒となって消えた。その瞬間世界は動き出す。
「あれ? ベル、角は?」
ベリーがそう聞くがベルはそれどころじゃなかった。
「……うん、これは私の妄想だ、そうだそうしよう」
ベルはこの事を忘れるように呟き、気を取り直す。
「な、なんか消えちゃった! あははーバグかもねー!」
「バグ……まぁそうね、アップデートしたばかりだしそんな事もあるわね」
「そだな」
とりあえず皆納得したようで安心したベル。
やがてこの時の事も完全に忘れ去った。
やっと話も中間……なのかな?
100話は行きたい気がしますが……まぁ最後まで頑張ります!
応援よろしくお願いします!




