閑話【五老人ミニゲーム3とピクニック】
第3回目のイベントが終わり、数日経ったある日。
ベリーは《ニーゲルレーゼン・フェッター》戦で言った通りピクニックを計画した。
「この辺はモンスターも居ないし、湖が綺麗だし……うん! ここにしよう!」
ピクニックの場所の下見に来たベリーはちょうど良い場所を見つけた。
「あとはサンドイッチとか用意しなくちゃ! ……うん? あれって……もしかして……」
一度帰ろうとしたベリーは、湖で釣りをしている老人を発見した。普通ならスルーするところだが、ベリーも勘が良くなった。
「あのー、何をしてるんですか?」
ベリーは釣りをしている老人に近づき、声をかける。
「ん、あぁ……釣りじゃよ釣り、ただわしが狙ってるのはここの主じゃよ……どうじゃお嬢ちゃん、釣り竿はもう1本あるんじゃ、ちょっとやってみんか?」
ここで『《五老人ミニゲーム3》が発生しました、受注しますか?』というメッセージが目の前に出現する。
「はい! やります! やりたいです!」
ベリーは元気よく返事をすると、釣り竿を受け取り、隣に腰掛ける。
「せっかくじゃし、勝負せんか? 大物でも小物でも、多くの魚を釣ったほうが勝ちじゃ」
「受けてたちますよ! やるからには負けませんからね!」
「ほっほっほ……果たして素人がどこまで足掻けるかな? ほい一匹目」
と、老人に先制を越されてしまう。ベリーも負けじと水面と睨み合うが……。
「全然釣れないよぉ……」
「お嬢ちゃんにはちと難しかったかな?」
老人はそう言いつつまた魚を釣り上げる。
「むぅ~……来い~来い~…………お魚さん集まれぇ!」
すると、ベリーの念じが通じたのか、当たりが来る。
「来た! うぉおお……ってあれ? 全く引けな……ッ!?」
びくともしない釣り竿が突然湖の中へ引っ張られる。その力強さは凄まじく、ベリーは引きずり込まれそうになっていた。
「こっ、これは! 主じゃ! お嬢ちゃん、主を当てたぞ!」
老人はそう言って釣り竿を引くのを手伝う。
「【身体強化】! ふんッ!」
すると老人はまさかのスキルを使用、【身体強化】をする。
老人の身体は服が破けるほどムッキムキになり、こちらも力強く引く。
【身体強化】で身体が物理的に変化することは無いのだが……そんなことを考えてる暇は無い。
「【鬼神化】! 【開放の術】!」
効果があるかわからないが、ベリーもステータスを強化する。
「「うおぉぉぉおおぉッ!!!」」
二人で力を合わせ、大きな水しぶきがしたと同時に、巨大な主が釣り上げられた。
『グウゥゥゥウウウ……』
湖の主は地面に強くぶつかると、HPが0になり、光となって消滅した。
「これ……」
ベリーのアイテムポーチに湖の主のドロップ品と思われるものがあった。
「《錆びた指輪》……?」
錆びている指輪だった。しかしなぜ魚から指輪がドロップするのだろう? ベリーはそう思ったが、答えはすぐにわかった。
「おぉ! それはわしが若い頃に、婆さんにプレゼントしようとした指輪じゃ! やはり主が呑み込んでおったか!」
「え、ええぇえ!?」
「ありがとうお嬢ちゃん! 勝負はお嬢ちゃんの勝ちじゃ! 主も釣り上げてわしの指輪まで取り返してくれた!」
「え、えっと、クエストクリア……なのかな?」
ベリーは老人に指輪を渡しながら言った。
「そうじゃこれをやろう………ほれ!」
老人が渡したのは釣り竿……と思いきや小さなハンマーだった。
「これは? って重い!」
ベリーはそれを受け取るとかなりの重さに驚く。
「それは特殊なハンマーでの、スキルが付いとる武器を叩くとスキルを取り出すことが出来るんじゃよ」
「す、凄い……」
「お嬢ちゃん、鍛冶師っぽかったからのぉ……まぁ大切に使っておくれ」
「はい! ありがとうございます!」
ベリーは晴れて《五老人ミニゲーム3》をクリアし、武器のスキルを抽出出来る特殊なハンマーを手に入れた。
しかしベリーは余分な武器を持っていないのでこれを使う機会はまだまだ先だった。
***
後日、皆で約束通りピクニックをした。サンドイッチやおにぎり、唐揚げなど様々な食べ物を用意した。
するとこの前の老人がお婆さんも連れて魚を持ってきた。
「お嬢ちゃんこの間はどうも、これ余ったから、皆で食べてくれ」
「お爺さん! ありがとうございます!」
「ベリー……またいつの間に何かしたの?」
「主を釣ったよ!」
ベリーは老人から魚を受け取りながら言った。
「あ、せっかくだしお爺さん達も食べていきませんか?」
「おや、いいのかい?」
「はいっ! 今からこの魚焼きますので!」
ベリーはそう言って魚を持って立ち上がり、【鬼神化】を発動する。
「えっ、ベリーまさかそれで?」
「そうだよ! すぅ…………ほっ! 【鬼神斬り】ッ!」
ベリーは一度深呼吸をし、魚を上へ投げると【鬼神斬り】で目にも止まらぬ速さで捌く。
「上手に焼けましたー!」
【鬼神斬り】の炎でほどよく焼けた魚は、それはそれは美味しかった。
「はむ……美味しい、なんで美味しいの……」
アップルは魚を食べながらそう言う。
「ベリー……料理……上手?」
フィールも魚を食べながら言う。
「料理上手では無いだろ、なぁバウム?」
ソラはそう言いつつ魚を一番多く食べていた。
「えっと、美味しければ良いんじゃないかな?」
「そうそう! 美味しければ良いんだよ!」
バウムの言葉にベリーもうんうんと、縦に頷きながら言った。
「ベリーらしいね、はむ」
ベルはそう言って料理を頬張る。
「皆とこういうことが出来て嬉しいよ!」
ベリーもそう言って自分で捌いた魚やサンドイッチをパクパクと食べる。
ベリーの表情はとても楽しそうで幸せそうだった。
それもそのはず、ベリーにとってこういった仲の良い友達とのピクニックも、生まれて初めてなのだから。
五老人ミニゲーム3まで行きましたね……
ベリーはあと二人の老人を突破出来るのでしょうか!
あと実はこの話ちょっとだけ重要なところがあったりなかったり(ボソッ




