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生まれて初めてゲームをしたらパーティーメンバーが最強すぎる件について!  作者: ゆーしゃエホーマキ
第一章:生まれて初めて

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第29話【ニーゼルレーゲン・フェッター】

なんとなんと累計アクセス数が30000を越えました!30000ですよ30000!ありがとうございます!

これからも頑張って行きたいと思います!


修正しました。

「やぁぁぁぁあ!!!」


『――――ッ!!!』


 霧雨の剣士の刃を受け止めたベリーだが、明らかに力量差がある。

 体格差も相まって、押し返されるのも時間の問題だ。


「かっ、【開放ノ術】!」


 ステータスを上げてみるが、それでも霧雨の剣士には届かない。

 そしてこれ以上、力を上げることも出来ない。

 自己強化系のスキルをほとんど持たないベリーは、どうやってもここが限界なのだ。

 そして、それがベリーの欠点――絶対的に所持しているスキルが少ない。

 攻略サイトなんて存在すら知らないベリーは、行き当たりばったりでスキルを手に入れていた。

 それがたまたま【鬼神化】などの強力なスキルだっただけだ。

 本来の目的であった《果ての弓》も、ベルが調べていた情報を貰っただけで、こうなる事とは夢にも思わなかった。


 そのため、回復ポーションも数が少ない。

 この戦いは早期決着といきたいところだが、霧雨の剣士のHPを一気に削るには【閻魔】をフルチャージした状態で、さらにリキャストタイムやスキル発動後の硬直状態を無視した連発の特殊能力を使って……それも、全て弱点部位に当てなければならないだろう。


「ハァ……ハァ……うぐぅ……!」


 そして、第一、第二形態と、休憩無しの連戦にベリーを疲れきっているはずなのだ。


『――霧……雨ッ!!!』


 すると、霧雨の剣士は力を込め、【霧雨】というスキルを発動した。

 それと同時に霧雨の剣士が押してベリーを後方へ倒すと、そのまま【霧雨】の力が転倒したベリーに襲い掛かった。


『【第壱型・霧薙(キリナギ)】ッ!』


 そう言って太刀を薙ぎ払うが、何も起こらない――と、そう思った瞬間。


「うあっ!?」


 突然腹部にじわりと熱を感じ、HPが減少していく。

 斬られた腹部、みぞおち辺りに細かい切り傷が残っていた。

 今の一振りで付いたとは思えないほど無数に付けられた傷に、ベリーは直感する。


「霧雨って……そういうこと……?」


 霧雨――それはただ霧のように細かい雨のことだが、今、霧雨の剣士が放ったのは雨の一粒一粒が刃のように、鮫の歯のように、ドラゴンの爪のように鋭いものだ。

 言うなればこの斬撃は、霧雨ではなく『斬り雨』だろう。


 スキル【霧雨】は発動時、【鬼神化】と同じく専用のスキルを限定解放し、さらに『霧・雨』の文字が付くスキルの能力を上昇させるという特殊能力を持っている。

 霧雨の剣士が放った【第壱型・霧薙】は第壱と言うように他にも型が存在する。

 壱型は先程やって見せたように前方へ大きく薙ぎ払い、弐型は上から広範囲に霧雨を降らせるなど多種多様で、厄介なことにそれらは全て霧のエフェクトであることから正確な当たり判定がわかりづらい。

 さらには確定で裂傷と同様の『霧傷(きりきず)』という特殊状態異常になるというおまけ付きだ。

 その状態異常も霧の字があるので【霧雨】の効果で威力が増し、ベリーのHPはどんどん削れていく。


「んぐ、んぐ……ぷはっ」


 ベリーは回復のポーションを飲み、HPを回復させる。

 ……この時点でほとんどのプレイヤーはリタイアするだろう。

 ポーションもなく、火力も足りず、スタミナもない。

 それなのに相手は攻撃威力を増していき、当たり判定のわかりづらい攻撃で追い詰め、さらに持続ダメージ付き……他にも何か隠している可能性もある。

 もう、これだけで諦めたくなるだろう。

 ベリーも【閻魔】を連発すれば勝てると思ったが、【閻魔】という必殺技を連発なんてすれば、頭痛が酷くなることは明らかだ。

 というより、そもそもMPが残り少ないので、連続で使えるとしてもせいぜい三回が限界だろう。


「……………………」


 アップルはその戦いを静かに見守っていた。

 ここからバフをかけて支援することも可能ではあるが、この戦いに割り込んではいけないような気がした。

 あるいは、ベリーの力でこの局面を乗り越えてほしい……その光景を見てみたいと思っているのかもしれない。

 アップルの隣に座る白狼と大鷲もまた、攻撃の指示はまだ消えていないのにも関わらず、静かにこの戦いを見守ることを選んだようだ。

 ただ攻撃しても意味がないので攻撃をしてないだけにも見えるが、その瞳には確かに意思があった。


「…………ダメだ、全然わからないや」


 ベリーは珍しく苦笑いをする。

 ただ勝つ方法がないわけではない。

 後々の頭痛が心配だが、【捕食者】でHPとMPを吸収しながらであれば【閻魔】連発も三回以上出来るかもしれないのだ。


「これしかない……かな……?」


 スキルの少なさが仇となり、自分の身を削るという選択肢しかなくなった。

 元よりベリーは、逃げるという選択肢を考えていなかった。


「ベルなら……もっと上手くやってたかな……?」


 手段を増やすために必要そうなあらゆるスキルを必ず入手するベルなら、この状況を簡単に突破することが出来ただろうか。

 しかしいくらなんでも当たり判定がわかりづらい攻撃を避けることなどベルにも出来ない……いや、バウムとの戦闘で、バウムの【幻手】を利用までしたベルだ、もしかしたら霧雨の攻撃も避けられるかも知れない。

 だが、ベルはベル、ベリーはベリーで、ベルには出来ないがベリーに出来ることはある。


「ベリー! いける!?」


 思考を巡らし、硬直していたベリーにアップルがそう声をかける。


「――全然……余裕っ!」


 ベルの姿を見習うように、ベリーは強気な目で笑いながら答えた。

 それは同時に、純粋にゲームを楽しむ少女の目でもある。


「【絶対回避】、【開放ノ術】、【捕食者】――【閻魔】チャージ開始ッ!」


 リキャストタイムが終了した【絶対回避】と【開放ノ術】をし、続けて【捕食者】も発動する。

 ベリーのHPとMPはぐんぐん回復するが、吸収されている霧雨の剣士のHPに大きな変動は見られない。

 残りゲージは一本だが、その一本が膨大なHP量であると予感させる。


「私だって、みんなみたいに強くなるんだっ! ……アップル!」


「ひゃいっ! な、なに?」


 急に名前を呼ばれて少し戸惑うアップルだが、ベリーは続けて言う。


「これ終わったら……みんなでピクニックに行こう! 明日!」


「あ、うん……明日なのね」


「多分明後日かも!」


「ど、どっちよ……でもいいわねそれ、えぇ、悪くないわ! パーっとやりましょ!」


「よぉぉぉっし! やる気出てきたぁぁ! 行くよ、剣士さんッ!」


『………………』


 もちろん彼から返ってくる言葉などないが、霧雨の剣士 《ニーゼルレーゲン・フェッター》は応えるように太刀を構え直し、ベリーと向き合った。

さあ、最終ラウンドだッ!

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