EX【モンスターを食べてみよう!2】
哮轟竜が咆える前に、その首下へ潜り込んだベリーは太刀を斬り上げて咆哮を阻止。
しかし防がれた咆哮の隙を潰すように、前脚での踏みつけ攻撃でベリーを後退させた。
杭のような爪先は地面を抉り、引き上げると土が舞う。
「ダメージがあんまり入ってない……! スキルで畳み掛けなきゃ!」
ただ首に傷をつけただけではHP減少は微々たるものだ。
ベリーは鬼神化中、スキルでの多段攻撃で削り切れるだろうが、いかんせん隙がない。
次の咆哮は〝音〟より〝息〟だった。
ブレスで発生した風が螺旋状になぎ払われ、ベリーは逃げ惑う。
「【絶対回避】っ!」
逃げきれないと判断し、スキルで回避。
その回避方向をドラゴンへ向けて接近したベリーは太刀を前へ突き出し、自らを槍のようにして突撃した。
「よし、刺さった!」
左前脚に突き刺し、柄を握りしめる。
「――大閻解!」
スキル【閻解】を重ねがけし、太刀を大太刀へ、巨太刀へと大きくすれば、突き刺さったままの刀身は哮轟竜の傷を大きくし、それに比例してダメージも大きくなる。
「ゴルル……ッ」
赤いライトエフェクトが散る中、それでも怯まない哮轟竜は再度息を吸い込んだ。
また麻痺すると杭爪に抉られる。
単純な攻撃だが、地面を抉るほどの威力を持った攻撃だ。プレイヤーが喰らえば大ダメージ……運が悪ければ即死級だろう。
ベリーは防御力に自信はない。
仕留めるなら、咆哮直前の隙――。
「逃げずに、突っ込む!」
自身の背後で炎を爆発させて加速し、属性を変換。
空気が凍りつき、髪が白く変わる。
【鬼神化・氷華】――。
「【雪名・雨氷柱】!」
刀身から冷気が漏れ出し、鋭い氷柱が哮轟竜の喉元に突き刺さる。
これで咆哮は阻止した。
さらに、【鬼神化】の効果でMPが許す限りクールタイムを無視した連発で、太い腕、退化した翼に氷柱を打って拘束すれば。
「ガッ――アァァァッ!」
「トドメ……!」
納刀してポーションでMPを回復させると、冷気を最大解放して構える。
「――凍てつく花よ、咲き誇れ。
凱旋を歌え、我が勝利を謳え――」
――真・抜刀。
「畢竟、私が勝者だった!
【勝華爛漫・凍ての鏤め】――!!!」
薙ぎ払われた一太刀は哮轟竜のHPが無くなるまで斬り刻み、数刻後には光の粒子が舞っていた。
冷気を放出しながら、ベリーはドロップアイテムを見て目を輝かせる。
「おにくだーー!」
角が消え、髪色も元通りになったベリーはお目当ての竜肉を実体化させて掲げた。
ベリーの顔より何倍も大きい竜肉は《哮轟竜の霜降り肉》という名前で、あの凶暴なモンスターから採れたとは思えないほどツヤツヤ輝いて見えた。
ならば、やることは決まっている。
「よっこいしょ……あとはお肉をセットして……」
《哮轟竜の霜降り肉》をまるまる一個、串に打つ。
鬼神化の炎で大きな肉焼き機に火をつけるとその上にセットして、いざ、肉焼き。
焦げないようこまめにくるくる回しながらじっくり焼いていく。
したたりゆく、肉の芳醇な脂。
お腹を空かす匂い、これだけでご飯が食べれてしまいそうだった。
「はっ……ここだ!」
いい感じに焼けたタイミングで肉を引き上げると、ふわふわと白い熱気が立ち昇る。
「上手に焼けました~♪」
まだジュワジュワと肉の表面で脂が跳ねていた。
お肉を切り揃える? いいや、このままかぶりつくに決まってる。
「いただきますっ! あー……むっ! ……んっ!?」
噛んだ途端、口から肉汁が溢れ出た。
「しゅ、しゅごい……もぐ……んぐ、臭みあるのかなって思ったけど、香りがいい……! 噛むたびにお肉の美味しさを感じる……! おいしい!」
ひと口、またひと口と、食べるのをやめられない。
「はむっ、もぐもぐ……あーんっ!」
顔より大きい肉の塊に何度もかぶりつき、気付けばぺろりと食べ終えてしまった。
満腹になった可愛いお腹をぽんぽんと叩き、満足そうにベリーは笑う。
「ごちそーさまでした~! これだけ美味しいなら他のも……もしかしたらもっと美味しいモンスターが!?」
夢が膨らむ。
食欲もみなぎる。
「やっぱりここは楽しいなぁ……次は魚もいってみようかな? うん、みんなも誘おう!」
この世界はなんでも出来る。
仲間と一緒なら、もっと楽しいことだって――。
「よーしっ! 食べ残しはいけないからね! 残りのお肉も全部焼いちゃおう!」
こうしてベリーは肉を平らげた。
今度は、仲間たちと食卓を囲むことを夢見て。
前回から少し間が空いてしまいましたが、5周年記念でした!
それではまたどこかで~!




