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生まれて初めてゲームをしたらパーティーメンバーが最強すぎる件について!  作者: ゆーしゃエホーマキ
―周年記念などのおまけ話―

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EX【ゴールドラッシュ・ウィングハンティング】

祝☆四周年記念!ということで、久しぶりにちゃんとゲームがしたくなったのでifっぽい感じでイベントクエストを書かせていただきましたァン!

お楽しみください!

「これでトドメ! 全身全霊ディスチャージ!

 ――――【閻魔】ッ!」


 抜刀と同時に爆裂させ、目にも止まらぬ速さで翼の生えた豚っぽいものを両断する。

 ヘンテコな豚を倒したのは、イチゴのように赤い髪の少女――ベリー。

 砕けて舞い上がる光を見上げながら納刀して、半透明の板に記載されたドロップアイテムをひとつひとつ確認していく。


「うぅ、またイベントアイテム無し……! なんでぇ! これじゃあ順位ビリッケツだよぉ……」

「ビリッケツとか今日日聞かないね」

「うぁぁぁぁベルぅぅぅぅ!!!」


 涙と鼻水を垂らしてガバッと両手を広げるベリー。その先は、共に狩りをしていた金髪の少女――ベルの胸の中だった。


「おーおー、よしよし……ヨシヨシヨシヨシヨシヨシヨシ……」

「ちょ、ベル! 頭が! 燃えちゃう!」

「いつも燃えてるじゃん。自己発火で」

「いや、摩擦熱はちょっと……なんというか、むず痒い?」

「熱に好き嫌いとかあるのか……んまぁそれはいいとして、アイテム落ちないんだっけ?」


 話を戻したベルはメニュー画面を操作しながら言う。

 今回のゲームイベントは、特定のモンスターからドロップするイベント限定アイテムの収集。

 収集した限定アイテムが多ければ多いほど、イベント終了後に特定素材の換金率が上がるという美味しいおまけ付きで、日々街で買い食いに勤しんでいたベリーにとって一攫千金のチャンス到来というわけだ。


 なのだが、狩りを始めて一時間。モンスターを狩れども狩れどもアイテムは落ちない。隣の親友は順調に数を増やしているというのに、ベリーのところだけひとつもドロップしていなかった。


「きっとベルに吸われてるんだよ!」

「残念ですねぇ苺さんや。そんなシステムはない☆」

「うぅ、ですよね……あっ。え、えっとね、ベル……そのぉ……ね?」

「分けてと言われてもトレード不能アイテムだから無理だよ〜」

「うぐぅ! そ、それにしたってドロップしなさすぎだよ! もう三十くらい倒した!」

「うーん、確かに私もそれは見てたけど……いや、まさか……もっかいドロップアイテム見せてもらっていい?」

「はいぃ……」


 一時間、ベリーが集めたモンスターのドロップアイテムをベルは凝視すると、硬直する。


「あ、あぁ……なるほど……」


 これを言うべきか否か。言った方がいいことは確実だが、もっと早く気付いていればよかったと後悔する。

 ドロップアイテムはどれも鶏肉だの豚肉だのだけで、羽根系アイテムがひとつもなかった。その惨状を見て、ベルはあることを思い出す。


「あのねベリー。落ち着いて聞いてほしいんだけど……今回のイベント対象モンスターって〝有翼型飛行モンスター〟ってことはわかってるよね?」

「う、うん。だからそこの《トリポーク》をいっぱい倒してて……」

「……《トリポーク》は鶏と豚のキメラモンスターでね。確かに鳥の羽が生えてるんだけど、その……この子システム上は豚扱い……なんだよね」

「……?」

「飛べないん……だよね」

「???」

「今日のイベント終了まであと三時間か……ここのモンスターは大体倒しちゃったし、天使系のモンスターがいっぱい出るとこ知ってるからさ。そこ……行ってみよっか」

「?????」

「ベリー、これは現実だよ。ここはゲームだけど。だからほっぺをつねっても仕方ないんだよ……」

「うぅぅ……そんなぁぁぁぁぁぁ!!!」


 ベリーの絶叫がフィールド中に響いた。

 羽根系アイテムは飛行しているモンスターしかドロップしないというゲーム上の設定で、それ自体はよくドロップするアイテムだ。

 しかし、ベリーがせっせと倒していた《トリポーク》。こいつは開発スタッフが面白半分で豚に鶏の翼を付けただけのモンスターで、飛ぶ能力は一切ない。滑空すら出来ない。飛べない豚はただの豚なのだ。

 そのため、ドロップアイテムも豚肉中心で、鶏の手羽先がたまーに紛れる程度。手羽先は肉であって羽根ではないというわけだ。


 さて、場所を移して第五階層。クインテットタウンから出発し各所に設置された転移門を正しく潜ると、木々に囲まれ、不思議な光を放つ遺跡に辿り着く。

 青っぽい光で模様が描かれた四角柱があちこちに点在しており、光から産み落とされるように、堕天使が這い出ていた。



EXステージ〈Nephilim(ネフィリム) Stagnation(スタグネーション)



 堕天使が巣食うそこは、プレイヤーが門を潜り始めた時点でモンスターが出現し、何時間経っても倒さない限り消えない。

 時間が経つほどに難易度が上昇していくため、早期決着が求められる。

 が、しかし。今回、モンスターを狩りまくることが目的であるため――。


「……【潜伏】っと、んじゃここから三十分くらい放置しとこっか」

「じゃあその間に腹ごしらえだ!」

「随分と大きなお弁当箱なことで……」

「唐揚げ弁当です! ベルの分もあるよ〜!」

「おぉ、黒胡椒唐揚げ! すご、こんな大きいのよく見つけたね」

「おまけしてもらっちゃった!」

「ゲームにそういうのあるんだ……は〜むっ。んん! うまっ!」

「でしょー! おすすめなんだから!」


 スキルで隠れ、二人は呑気に箸を持って弁当をつつく。

 カリカリジューシーな唐揚げを頬張り、続々と湧く堕天使を背景に遠足気分で楽しんでいた。


 《ランゲ・エンデル》――レベル90前後のモンスターでありながら、その攻撃力はレベル100相当。さらに、範囲内の同種族の数に応じてステータスにバフがかかり、天使故に飛行も可能という厄介なモンスターだ。


 やがて、うじゃうじゃと集まりつつある堕天使らを眺め、ベルはピストルを二丁構える。

 それを見たベリーも、すぐに唐揚げをリスのように頬張り、太刀を抜く。


「そんじゃまぁ、いっちょ暴れますか!」

ふぁふほぉー!((やるぞー!))


 ベルの潜伏解除、ベリーの雷公纏。それと同時に周囲のモンスターに気付かれ、一斉に視線が集まる。

 一匹の天使が弓を引き、ベルを狙って矢を放とうとした。

 その瞬間――――


「【真纏(しんてん)雷火(らいか)紫電一閃(しでんいっせん)】ッ!」


 閃光が弓の天使を焼き斬り、天使達の目を潰した。

 暴れ狂う紫電を制御し力を刀身に込めたベリーは、まだまだ現れ続ける天使を見て、振り返る。


「前は任せて!」


 二本目の太刀を抜き、火を纏った。


「お任せするよ。私はテキトーにちょっかいかけとくからさ〜、好きにやっちゃいな!」

「はーい! 好きにやりまーす! 【鬼神化】ッ!」


 刹那、鬼の力が身に付けている装束を、髪を、瞳を紅く染め上げ、ベリーは額に赫灼する角を生やす。それは火が燃え盛り、炎を燃え滾らせ、熱が風巻(しま)いて焼き焦がさんとする。


「ハァァァァァッ!!!」


 炎を爆破させ、強引に加速したベリーはそのまま敵陣に突っ込んだ。大量の天使で溢れる中心部に、ひとつの火花が散る。


「〝大閻解〟――! 二刀流、新必殺技ぁ!」


 巨大化した二本の太刀を構え、横へ薙ぎ払った。

 その勢いに乗せたまま、さらに薙ぐ、薙ぐ……薙ぎ払い、斬り裂く。


「〝龍辿(るてん)天翔(あまがけ)〟ぇぇッ!」


 つまりは竜巻だ。炎を渦巻き、刀身に宿しておいた紫電を解放して超大太刀で薙ぎ払い続ける。大きければ当たりやすいし、炎と雷が合わされば火力は言うまでもない。頭の悪い脳筋プレイ。

 しかしそれが通じてしまうのがこのプレイヤー、ベリーの力。どんな技でも、大量討伐の突破口となりうるのだ。

 軽く飛翔したベリーは、上から敵を目視する。数はざっと数千と言ったところ。


「またオリジナルで技作ったな〜? 私も負けてらんない! ベリー、肩貸してもらうよ! 【テレポート】」


 続いて、ベルはベリーが生み出した竜巻の中心へ転移する。


「おぁ!? べ、ベル!?」

「踏ん張っといてねっ!」


 ベリーの肩に足を乗せ、そこからさらにジャンプした。

 地上に落ちたベリーはというと、全身に炎を纏って擬似隕石として天使を粉砕していた。


「【バウンド】っ! ……と、よしよし、みんな見えてるね〜」


 敵全体を目視出来る高さまで飛び上がったベルは、二丁拳銃を下に構えてその運命を視認する。


「【クリンゲル・シックザール】ッ!」


 目視した敵全てにデバフを与える【クリンゲル・シックザール】により、全体の防御力、火耐性、爆破耐性を低下させた。

 これだけの数相手に三つの状態異常を与えた代償はかなり重く、ベルのHPは80%減少してしまうが――


「HP調整完了! 【ソニックエフェクト】ッ!」


【ソニックエフェクト】――それは単なるスピードアップのエンチャント系スキルだが、最大HPが残り少ない時限定で、〝自身以外にも適応する〟という効果を持つ。

 つまり、今のベルが撃ち放つ弾にも適応され、ただの実弾がレーザー光線並になるのだ。


「【エンチャント・アステロイド】……フルチャージッ!」


 ベルは落下しながら、敵を残らずロックオンしていく。

 銃口から星の光が溢れ、今にも爆発しそうなほどになっていた。


「鬼神纏……赫醒ッ!」


 チリッと赤雷が走る。

 紅い炎が一瞬白くなると、絶対に消えることのない〝永炎〟として再点火された。


鬼氣壊界(ききかいかい)芽冰華焔(がひょうかえん)】――……零度の冷気が天使達を凍りつかせ、芽吹いた氷が、ベリーの一弾指を合図に咲き誇る。


 そして、咲き誇った氷は刹那に焔へと――。


「畢竟、私が勝つ! 爆咲(ばくさ)――ッ!」

「星落とし、終焉の鐘を打ち鳴らせ! 神音(かおん)――ッ!」


 二人が同時に詠唱し、燃え上がった堕天使達を睨む。

 燃えても尚、攻撃しようとしてくる天使らには()()()()()()

 そう、攻撃させてしまっては狩りが遅れる。これはあくまで効率のいい素材集め。なんの手出しもさせはしない。


「【勝華爛漫(しょうからんまん)神薙(かんなぎ)】ッ!!」

「【ステルプルーヴォ・カタストロフ】ッ!!」


――同時。またも同時にスキルを発動する。

 ベルは二丁拳銃の銃口を空へ向け、引き金を引く。するとどうだろうか、遺跡上空は暗くなり、星々が煌めいた。

 ベリーは二刀を揃え、鬼らしく強く薙ぎ払う。そうして太刀風が嵐となり、火花が散った。


 すぐに終わりは訪れる。


 上空から降り注ぐ〝星の雨〟――

 地上で暴れ斬る〝花の舞〟――


 それはまさに地獄絵図。千を超える隕石がそのままでも強力なクセに加速して堕天使を穿ち、そこへダメ押しとばかりに斬撃が襲い来る。

 たった一太刀薙ぎ払われただけの剣で、隕石もろともバラバラに斬られ、《ランゲ・エンデル》の膨大なHPは儚く散るのだ。

 長き終焉を齎す天使はものの数分で一匹も生き残ることなく、烏有に帰す。


 だが、まだだ。まだ堕天使は這い出てくる。

 フィールド全体に設置された四角柱のオブジェクト。これは範囲内のモンスターが一定数減らされた場合に、一度だけ同じ数をリポップさせるトラップでもあるのだ。

 故に、長期戦になるほどモンスターが増え続けるため、このトラップが発動した時、必死になって狩り尽くし、体力もMPも枯渇している状態のプレイヤーにはかなり酷だった。


「でも、それを対策してない私じゃない! ベリー、やっちゃって!」

「了解! 起爆するよー!」


 隕石と共に華麗に着地したベルは、走りながらベリーに声をかける。

〝起爆〟――実は唐揚げ弁当を食べる前に、ベルは四角柱にある仕掛けを施していた。


「永炎凝縮――――【絶刀・鬼神断ち斬り】ッ! 百連ッ!!!」


 ベルの仕掛け……四角柱に貼り付けた魔法陣へ、ベリーは容赦なくスキル攻撃を叩き込む。


(魔法陣の受け付けは三秒……でも、ベリーの【鬼神化】による専用スキルを連続使用する効果があれば、十連でも二十連でも一瞬で与えられる……!)


 そして、限界までダメージを蓄積した魔法陣は四角柱よりも強い光を放ち、他の四角柱にも仕掛けていた魔法陣も連動して光り輝く。


「よし、では退散!」

「はーい!」

「【テレポート】!」


 役目を終えたベリーはベルに掴まり、【テレポート】でその場から脱出する。そのまま待機していては自分達も巻き込まれてしまうからだ。


【マギアエクスプロージョン】――魔法属性の設置型爆弾とでも言おう。

 魔法陣へ三秒間与えたダメージを計算して爆発効果が高まるそれは、手間こそかかるものの威力は絶大だった。

 ベリーの超火力を食わせたなら、絶大なんてレベルでは抑えきれない。フィールドを破壊する勢いで爆発した【マギアエクスプロージョン】はリポップした堕天使達を跡形もなく消し飛ばす。

 ついでに四角柱も破壊してしまえば、この後同じことを考えた他プレイヤーがやって来ても、堕天使が出現することはない。


 ベリーとベルは世界の終わりみたいな光を背に、もう帰路についていた。

 長い長いドロップアイテム欄をスクロールしまくっている。


「にっひひひ……大量大量♪」

「べ、ベルがなんだか悪い顔に……!」

「これだけあれば換金率上昇も200%は夢じゃないよ〜?」

「そ、それは魅力的……えへへ♪ あれもこれも食べられるなぁ!」

「って結局食べ物で消費するのか。ベリーらしいけど」


 想像するだけで涎を垂らすベリーを見て、ベルは思わずそうツッコむ。


「美味しいは正義だから! ベルにも美味しいをおすそ分けするからね〜♪」

「そう? じゃあ楽しみにしておこうかな。狩り場を教えたお礼ってことで」

「あっ、なにそれズルい〜!」

「なはは〜、くすぐったいぞー」

「そんな嘘ついて〜! ベルが脇をくすぐっても効かないことくらいわかってるんだからね!」

「ほぉう? ではどうするか勇者よ! 我を倒してみせるがいい!」

「なにを〜! こうしてやるー!」


 ベリーはにやりと笑みを浮かべると、ベルの首元を容赦なくくすぐった。


「んにゃあああああああああ!!? く、首はやめろぉ!」


 怒っているのか、恥ずかしがっているのか、ベルは顔を真っ赤にして腕を振り上げてベリーを追いかける。


「あははっ! まだまだぁ! 雷公【伏雷】!」

「はやっ――――うひゅぅ!? くっ、ちょ、くすぐるためだけにそんなスキル使うなぁ! んはっ、あっ……!」

「なんだろう。凄くたのしい……やめられない……」

「や、やめっ、やめろぉぉぉぉ!」


――その後、ベリーはベルにこっぴどく怒られ、数日近寄らせてもらえなかった。

 しかしイベントの結果発表当日――二位との圧倒的差をつけて、見事一位に輝いたベルはドヤ顔でベリーに報告してきたという……。


 ちなみに、ベリーは数時間無駄に豚を狩っていたせいもあって五位という結果だったが、それなりにアイテムは集まったので無事に大量換金して、休日はベルや他のパーティーメンバーと共にグルメレースに励んだとさ。

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