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生まれて初めてゲームをしたらパーティーメンバーが最強すぎる件について!  作者: ゆーしゃエホーマキ
真章後編:君ありて幸福

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真編・第102話【泰然たる天玄の峰角龍】

第99階層です。

「【閻魔】ッ!」


 燃え盛る炎を放ち、《バベルの塔・第98階層》のボスモンスター《サヴァイブ》を焼いて消滅させると、苺は息を切らしてその場に倒れる。


「ローゼ……! ど、どれくらい…までっ、来た……!?」


『これで98です。もうすぐですよベリー!』


「そっか……はァ、はァ……」


 MPが回復したらすぐに登ろう。呼吸を整え、回復ポーションを飲みながら苺は思う。


「『___ッ!?』」


 苺は一瞬で炎を爆発させ、その場から離れる。その瞬間、天井が破られ、巨大な柱がさっきまで居た場所に突き刺さった。ローゼと同期して未来を見ていなければ避けることは出来なかっただろう。

 柱はゆっくりと引き抜かれ、上へ消える。間違いない、上階…第99階層のボスモンスターが攻撃してきたのだ。


「【飛焔ノ翼】ッ!」


 敵が開けた天井の穴に向かって飛び、苺は《バベルの塔・第99階層》に着く。


「……違う、柱じゃない…!?」


 そこは今までのどの階層よりも広く、目の前の敵は“巨大”だった。柱と思っていたものはその額にある一角で、巨大な翼が少し動くだけで暴風となる。


『モンスターネーム…《泰然(タイゼン)たる天玄(テンゲン)峰角龍(ホウカクリュウ)》……レベル、950です…!』


『____』


 巨大な龍の唸り声が雷のように轟き、空気を揺らす。ゆっくりと前左脚が持ち上げられ、苺を踏み潰そうとしてくる。


「ッ!!!」


 それが落ちる様はまさに隕石のようで、苺は瞬時に雷公を纏って部屋の端に移動する。脚が落とされると衝撃波が走り、耐えられずに苺は壁へ強く衝突する。脚が落とされた地面は見事に抉れていた。


「…でもこんなに大きいならっ! 【雷公降来・禍神鏖殺陣】__ッ!!」


 すぐに起き上がった苺はそう言って両手を掲げる。龍の、天を突く山のように大きな角の先に真っ黒な雲が出現する。苺が腕を振り下ろすと同時に獄雷が無数に墜ちて、《泰然たる天玄の峰角龍》にダメージを与えていく。


『____!』


『攻撃有効! ですが……!』


 苺は予測演算によって導き出された未来を見る。炎ブレスが来るようだ。範囲は意外にも狭い。ブレス、というよりはレーザーと言った方がいいだろう。


「【絶対回避】!」


 【絶対回避】で避けた反動を利用して接近する。…そう考えながら、苺は峰角龍の口から漏れる炎を眺め、圧縮熱線が来るのを待つ。

 __でも何か……嫌な予感がする。そう思った瞬間に、新たな未来を見た。


「____ハッ!!?」


 反射的に顔を逸らす。その刹那、圧縮熱線が苺の頬を掠めて背後の地面に当たる。


「なん、で……」


 苺はそう呟きながら背後の地面を見る。圧縮熱線は地面を貫通していた。どこまで行ったのかはわからない。だが、苺の【燈灯線】の数十倍の威力はある。そして驚くべきなのはそれだけではなかった。《泰然たる天玄の峰角龍》が放った圧縮熱線は苺の頬を掠めた……そう、少し掠っただけでも“攻撃判定”なので自動的に回避する【絶対回避】を発動していたのにも関わらず、苺はダメージを受けていた。

 …苺の身体中からドッと汗が吹き出す。もしも未来予知が遅れ、反射的に顔を逸らしていなければ、苺の頭は無くなっていただろう。


「【解放者(リベレーター)】……血解」


 早くなる心臓の鼓動を抑えるように胸を左手で押さえ、苺は血解状態になる。その効果中、【アクセラレート】【フルカウンター】【ダメージカット】が発動する。

 二度目の圧縮熱線が来る。もし…もしも、【絶対回避】だけではないのだとしたら……。


「あ__ッ!!」


 圧縮熱線が再び放たれた瞬間、苺はその場から飛び退いて回避する。


『ベリー…これは…!』


「うん……回避スキルと防御スキルが発動されないッ」


 《泰然たる天玄の峰角龍》……そのユーベル能力は回避系スキルと防御系スキルの完全無視。よって【絶対回避】は発動せず、血解状態の【フルカウンター】や【ダメージカット】も意味がないのだ。ローゼとの同期状態による未来予知が無ければ初見殺しでゲームオーバーだった。


「ここまで来て倒れるわけには…いかない…ッ!」


『攻撃モーション入りました! 拡散熱線、来ますッ!』


 【伏雷】と【アクセラレート】…さらに未来予知を使い、苺は放たれた流星の如く降り注ぐ拡散熱線を回避していく。


「地面が穴だらけに……!」


 熱線の太さはちょうど苺の顔くらいある。それを避ければその大きさの穴が地面に空く。その穴からは第98階層の床が覗き込める。永遠と熱線を放ち続けられると苺の足場がどんどん失われていくのだ。相手は空を飛ぶことも出来るため、むしろ苺ではなく、先に足場を壊しに来ているようにも見える。


『____◆■ッ!』


『圧縮じゃない!? ベリー、超広範囲ブレスが来ます!!』


「【鬼神・真渢龍纏】……【大龍巻(オオタツマキ)】ッ!!」


 苺は《鬼神ノ太刀・真閻》で空気を振り払い、風を起こして炎を遮ると、【大龍巻】と炎が混ざり合って炎の渦となる。


「その炎、私の力に変えてッ!」


 【火炎吸収】の効果で炎の渦から熱を奪い、火属性攻撃力を上昇させていく。……だが、しかし。


『◇___』


「……えっ」


 刹那、左腕に激痛が走る。苺は手に力が入らなくなり、《燈嶽ノ太刀・真閻》を落としてしまう。


『未知の金属物……!? 一体どこから…』


 その場所に“出現”したとしか考えられない。黒い光沢のある金属物が苺の左腕を貫いていた。その金属は苺の血液を吸い上げ、徐々に膨張していく。


「ぐぁッ……うあああああッ!!」


 膨張していくに連れ、肉が裂けてしまう。苺は未知の金属物を掴むと勢いよく引き抜く。生命吸収が途絶え、金属は塵となって消え去る。


(まずい……っ!)


 炎の渦の中、今は風を起こすために渢龍を纏っているため、吸収出来る熱量や防ぐことの出来る熱の限度は低い。回避と防御も無視されるため、出れば無事では済まない……死さえありえる。

 《泰然たる天玄の峰角龍》には高い知能がある。苺は自分が作り出してしまった檻に閉じ込められ、峰角龍はその檻の中で自由に未知の金属物を出現させることが出来てしまう。


「ローゼ! 攻撃予測に全集中、相手のMPが切れるまで自力で避け続けるよッ!」


『了解しました! 炎ブレス、及び未知の金属物による攻撃を優先的に予測しますッ!』


 ローゼがそう言うと、予測された攻撃映像が苺の視界に現れる。暴れ狂う炎を【大龍巻】で制しながら《泰然たる天玄の峰角龍》が出現させる未知の金属物を、苺は限られた範囲で回避する。

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