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生まれて初めてゲームをしたらパーティーメンバーが最強すぎる件について!  作者: ゆーしゃエホーマキ
真章後編:君ありて幸福

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真編・第99話【終幕地点(End Point)】

 《ユミニオン・ユーベル》の翼を1枚斬り取り、その心臓部に赫灼した刃を突き刺し、不気味なほど白い皮膚が少し抵抗して裂け、紫色の血が噴き出す。


『△クォォ◆▲ォォ■ォッ!?』


 刹那、天使が内側から爆裂し、その歪な身体が黒く焦げて砕ける。こうして《ユミニオン・ユーベル》のHPゲージを1本吹き飛ばし、第二形態へ移行する。__身体の至るところから白い腕が血を撒き散らしながら皮膚を突き破って、それぞれ不規則に(うごめ)く。


『《ユミニオン・ユーベル》、第二形態への移行を確認! 強制的に状態異常、幻視になっています!』


「問題ない…! 氷華よ纏え__

【氷華満開・反転地獄】ッ!!」


 氷の花が咲き誇り、部屋全体を覆い尽くす。その花弁から放出される冷気が部屋に充満して、《ユミニオン・ユーベル》の身体に霜が降りる。


「……ッ!」


 その瞬間、苺の周囲が“反転”される。氷は炎へ反転し、部屋は炎の花が咲き誇り、熱気に包まれる。《ユミニオン・ユーベル》に付いた霜も炎へ変わり、全てが燃え上がる。温度の急激な変化に悶え苦しみ、火を消そうと沢山の白い腕をバタバタと自分の身体に打ち付ける。


「【永炎属性解放】……【断ち斬り】ッ!」


 そして、燃える歪な天使に斬撃を喰らわせ、苺は周囲を再反転させる。


『▲●…■●△◆∀……!!?』


 炎は氷に変わり、《ユミニオン・ユーベル》は完全に氷の中に閉じ込められる。……更に反転。再び燃える。__反転。再び凍る。そんなことを何度も何度も繰り返し、やがて限界を迎えた《ユミニオン・ユーベル》はHPがゼロになり消滅した。


『705にレベルアップ……ベリー、休憩していきますか?』


「ううん、このまま走り抜く。最速最短でこの塔を攻略する、しなきゃいけないから……!」


 苺は二刀を納刀すると、氷の花が散っていく中を駆け抜け、次の階層へ続く階段を登って行った。



* * *



 __苺が恐るべきスピードで攻略していき、《バベルの塔・第10階層》に着く頃。第四階層 《水晶の街》や第三階層 《峰奉村》にも、《クインテットタウン》と同じように多くのモンスターが侵攻していた。


「サナ、まだ行けるよね……!」


「余裕だよミナ! 苺ねーちゃんとまた会うためにも、ここで倒れるわけにはいかないよ!」


 双子の少女が巨大な水晶を背を向け、モンスターを食い止める。そして同時刻、《峰奉村》でも姉弟がモンスターと対峙している。


「ハヅキ姉! 3体そっち行った!」


「わかってるよっ! 全部叩き潰す!」


 ハヅキが《ディモス・ハンマー》を振り回し、モンスターを潰して消滅させていく。全員が苺と出会い、希望を持って戦っている。世界の終わりを願って、英雄の勝利を願って……だから__


「「「「取り戻すために、全員で迎え撃つッ!」」」」


 《水晶の街》に引きこもっていたプレイヤー達、《峰奉村》に住むNPC達、そして《クインテットタウン》でも……地下シェルターに避難していたプレイヤー達が立ち上がって外へ出る。

 苺というたった1人の少女が《バベルの塔》に向かったことを、ローゼがワールドチャットにて伝えていた。レベルの低い者は怯えて、隠れながらも強化系スキルや回復スキルを使って支援し、《NGO5》のプレイヤーだった者はモンスターの存在に恐怖しながらも立ち向かう。


 __全人類の総力を持って()の偽神に対抗する。



* * *



 《クインテットタウン・第二魔障壁前》……理乃が負傷者を治療する最中に創造した、街を覆う防壁とは違う魔法結界。第一魔障壁は防壁とそう離れていない場所に展開され、苺と途中で別れた正樹の近くに第二魔障壁が展開されていた。

 3つの街を護る壁は硬く、簡単に壊せるものではない。だが、《創造者》である理乃が倒れてしまえば創造物も崩れる。


「はァ……はァ……」


「回復はわたしに任せて、少し休んではどうですか? まぁ、わたしも余裕ないですが……」


「平気…とは、言えない状態……でも、これくらい……林檎や鈴…苺に比べたらっ……!」


 永遠の灯望剣 《キャルヴレイグ》をModeⅠの状態で地面に突き立て、それを支えに理乃はなんとか立っている。息も荒く、汗が垂れる。頭痛や耳鳴り、手足も痺れ始め、ガクガクと震えてしまう。だが、それでも尚……理乃は【極創術】を保ち続ける。苺が未来を解放するその時まで、創り続ける。


「ほんと……あなた達は凄いですね。ポーションを飲ませるくらいはしてあげるので、必要なら言ってください。……わたしも、士狼さんを助けられなかった分ここで頑張らないと……いつかあの世で士狼さんに会った時、顔向け出来ませんからね!」


 白は理乃の汗を拭い、笑顔でそう言った。治療室に居る回復担当者は、元医者を含めてもたったの10人。もちろん組織戦闘員の中にも【ヒール】などを使うことが出来る者は居るが、治療班に回れるほどの余裕はない。総合戦力はどうやってもこちらが下なのだ。見咲の指示が適切で、うまく交代して戦線を保っている状態で、もし五島が今よりも多くモンスターを投入してきたら、一気に崩されて落ちる。それくらい危機的状況なのだ。


「白……ありがとう」


「こちらこそ、ですよ。ここに居たのが理乃で良かったです」


「ん……絶対に、乗り越えよう……!」


「もちろんです! 士狼さんなら……“負けるつもりはハナからねぇよッ!” って、言いますかね……」


 士狼の存在が、白の背を押す。昔から突然現れては居なくなったりする神出鬼没で、荒々しい態度が目立っていた。


(実はわたしを守ってくれてたとか……って、そんなことはないですよね)


 過去の記憶を遡り、フッと微笑み白はスキルを発動する。負傷者を【ヒール】で回復していく。


(ここがわたしの戦場です。見ていてくださいね、士狼さん……!)


 杖を握る手に力を込めて、白は強く、そう心の中で思った。

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