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生まれて初めてゲームをしたらパーティーメンバーが最強すぎる件について!  作者: ゆーしゃエホーマキ
真章後編:君ありて幸福

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真編・第97話【アキレア】

 __あれから数時間。苺は輸血され、理乃の【Calvraig・ModeⅠ】の効果も合わさり身体の状態も万全となった。……だが防壁外の戦闘が激化しているのか、重症の戦闘員達が続々と医療室へ運び込まれて来る。


「苺……私はここでみんなのHPを回復させる……」


「うん、外の加勢に行ってくる!」


 苺は武装を装備し直すと、外へ飛び出す。身体に違和感がまだ残るが、休む暇はないのだ。

 ただ、気になることがいくつかある。【鬼神化】が解除出来ないことと、職業(クラス)表記がバグって変な形になってしまっていることだ。身体にある違和感と関係がないとは言い切れず、苺はどこか不安に思いながらも《クインテットタウン・北西門》の近くにある、防壁唯一の出入り口の前に立つ。そして、大きく深呼吸をして頑丈な扉を開いた。

 __もう猶予も、待つ理由も無い。



* * *



 第五階層 《クインテットタウン》防壁外。偽神の居る《バベルの塔》から、《ログモゥズ》を含めた様々なモンスターが出現して真っ直ぐこちらへ向かって来ていた。


「相当焦ってるなこれは。もしかしたら八坂さんの救出に成功したのかもしれない!」


 三嶋は数が増えたモンスター達を見て、そう予想する。この時既に苺はユーベルウィルスから解放され、輸血し終わっていた。


「っ、なら……尚更ここを守り抜くッ! 【幻手・現ノ呪腕】ッ!」


 そう言って正樹はそれぞれの手に太刀を持たせ、《ログモゥズ》を斬り裂く。


「でもこのままだといつか……! あっちは無限にモンスターを作れるんだからっ!」


 少し離れた場所から魔法スキルでモンスターに攻撃を仕掛ける八神が言う通り、こちらは数に限りがあるのだ。レベル30〜40の組織戦闘員は医療班と分けられてさらに数が減っている。高レベルプレイヤーも今は正樹、三嶋、八神、見咲だけで、休憩することは許されない。


「それでも僕達が頑張らなきゃいけないんです! 絶対っ……絶対守るんだッ!」


 正樹は血が混じった汗を垂らし、太刀を振る。もう腕の力も残っていないはずなのだが、次々とモンスターを斬り捨てていく。


「二ノ葉くん、後ろ!!」


「……くっ! 幻手! __っあ、MPがもう……!」


『ギャルルルォォォアアアアアアアアア!!!!』


 まるでMP切れを狙っていたかのように《ログモゥズ》が正樹の背後に現れ、凶悪な爪を振り下ろす。正樹の残量HPは多くは残っていない。しかも相手の方がレベルも上、この攻撃を喰らえばHPはゼロになってしまう。


「ここまで……か……」


「違う! これからだよ、正樹君!! …ハアッ!!」


『グォオル!?』


 熱い炎に包まれた二刀で《ログモゥズ》の腕を断ち斬り、苺は言った。《ログモゥズ》の腕からは真っ黒な血が流れ出て、HPが一気に無くなっていく。


「苺さん……!?」


「ごめんね、凄く待たせちゃった」


「……良かった、本当に! 無事に戻って来てくれて……!」


 傷を負った正樹は、涙を零しながら言う。前の明るさを完全に取り戻してはいないが、それでも階層を降りる前と比べればかなり元の元気で明るい八坂苺に戻っていた。


「八坂さん、平気なのか……?」


「はい大丈夫です! それより三嶋さん、八神さん、このモンスターの数はきっと五島さんも本気を出してきたんだと思います」


「だろうな、一向に減る気配がない……どうするんだ?」


 向かってくるモンスターに攻撃をしつつ、三嶋は言う。


「__決戦の時です」


「えっ!? じゃあ苺ちゃん、もしかして……」


「このまま《バベルの塔》へ向かいます」


 そう言って苺は高くそびえる悪しき塔を睨みつける。モンスターの数が増えたのは苺が奪われ、焦っただけではない。五島も決戦を望んでいるのだ。苺が来ない限り、この侵攻も止まらないだろう。


「なら、このまま行って苺さん! ここは必ず守る。だから行って、勝って……奪われたもの全ては取り戻せなくても、みんなが幸せでいられたあの世界を取り戻するんだっ!」


「い、いいのか二ノ葉さん、八坂さん1人で行かせて……」


「きっと僕達じゃ足でまといにしかなりません。レベルも苺さんに合わせて来るはずです。……だったら僕に出来ることは、この世界が終わりを迎えるその時までここを守ることだけなんです!」


 自分が弱いことを、正樹自身が一番よく知っている。大斗のように強くもなければ、覚悟もない。理乃のように圧倒的火力を出せるスキルも持っていないし、それをタイミング良く使うことも出来ない。……鈴のように的確な判断をして、それを行動に移すことも出来ない。林檎のように周囲の状況に合ったサポートも出来ない。士狼のように1人で強敵に立ち向かう勇気もない。

 誰よりも弱い。だから、自分が出来ることは何としてもやり遂げたいと思っているのだ。


「正樹君……三嶋さん、私なら大丈夫です! ローゼも居るから連絡は取り合えるはずだし……無茶はしません!」


「……わかった。そこまで言うなら、信じて待ってる。__百地さんッ! これから八坂さんを塔へ向かわせるッ!」


 三嶋は声を張り上げ、苺が《バベルの塔》へ向かうことを見咲に伝える。見咲はそれを聞くと頷き、全体に命令を下す。


「皆そのままよく聞けッ! 八坂苺の帰還を確認した! __最終決戦だッ!! 私達の世界を取り戻すぞ!!!」


遂に決戦の時ッ!

終わりはすぐそこまで来ているッッ!!!




-超簡潔な現状-


理乃(防壁内にて負傷者の治療に当たっている)

白(理乃と同じく負傷者の治療に当たっている)

大斗(防壁内にて解読班と共に暗号解読中)

正樹(防壁外にて戦闘中)

三嶋(防壁外にて戦闘中)

八神(防壁外にて戦闘中)

見咲(防壁外にて戦闘、指揮している)


苺(防壁外で正樹達と合流、《バベルの塔》へ向かう)

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