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生まれて初めてゲームをしたらパーティーメンバーが最強すぎる件について!  作者: ゆーしゃエホーマキ
真章後編:君ありて幸福

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真編・第93話【八坂苺の暴走】

迫る終結__

 ローゼと苺のリンクが強制切断されてから数十分が経過し、ローゼから状況を聞いた者達は顔を(うつむ)かせ、悩んでいた。


「……ね、ねぇ、本当に…苺ちゃんが……?」


 八神が声を少し震わせて言う。当然だ、苺のレベルは高く、その実力も全員知っている。敵として対峙すれば、勝てる確率はゼロに近いのだ。


「まさか最強の切り札をこうも簡単に奪われるとは……これでは、暗号解読に成功したとしても……」


 見咲は爪を噛んで言う。《エクス・システム》へ接続するためのパスワードもそろそろ解読できそうだったというのに、この有様だ。苺無しでは五島に対抗するのは難しい。


「……どうする、レベル的にも戦えるのは正樹と理乃だけなのに」


 大斗は自分が戦力になれないことを悔いながら言う。相次ぐモンスターの侵攻に、防壁外へ出ている正樹と理乃は遂にレベル100になっていたが、それでも苺には敵わない。


「防壁外はまだモンスターが居る、どっちかが残らないと壁が持たない……二ノ葉さんと理乃さん、八坂さんに勝てる確率が高いのは……」


「理乃…だろうな、ゲームだった頃に苺と戦って、勝ったことあるのは理乃と士狼さんだけだ」


 理乃が暴走した苺と戦っている間、正樹一人では防壁を守り切れないため三嶋と八神、白も出撃しなければならない。そうなると苺のことは全て理乃に任せる形になる。


『ベリーがここに来るまで、およそ一週間です。それまでに準備をしましょう』


「……わかった。それじゃあ解読班も含め、これから暴走した八坂さんに対抗する準備を進める!」


 ローゼと三嶋が指揮を取り、総動員で動く。見咲の指示で組織の戦闘員達も装備整え、防壁外戦闘に備えようとする。


「その前に確認することがある。苺を助けるのか、それとも…殺すのか」


 大斗の言葉に、全員が黙り込む。助けられるのなら助けたい……だが、そう思って戦っていれば全滅させられる。しかし、だからと言って八坂苺という鬼神を殺すことは容易ではない。


「大斗……頑張る……私が頑張って…苺を、助ける……」


「最初から“殺す”なんて選択肢はないですよ。苺には帰って来てもらわないと困ります」


 白に呼ばれた理乃がコンピュータールームに入って言った。


「正樹にも……頼まれたから……」


「…俺がこんな状態じゃなきゃ、一緒に行ってやれたのに……すまねぇ理乃、苺のこと頼んだ」


「……ん」


 理乃は頷く。苺と戦うことが目的ではないが、必ず対峙するだろう。戦闘の中でどうにかして苺を正気に戻さなければ生きて帰ることは出来ない。一番危険な役どころだが、作戦が無い訳ではない。

 【極創術】は理乃の発想等から自由に創り出せる究極創造スキル。それを使ってユーベルウィルスの薬を作ることが出来れば、苺からウィルスを除去して正気に戻せるはずだ。


(でも…それはきっと難しい……)


 部屋にこもり、理乃はイメージトレーニング…もとい作戦を練る。組織の隠れ家には人はほとんど居ない。戦える者は理乃の代わりに防壁外へ出ているのだ。静かな暗闇の中、理乃は創造する。


「……やっぱり、ウィルスに関する情報がないから……うまく作れない……」


 【極創術】には細かい情報が多く必要で、完全オリジナルである永遠の灯望剣 《キャルヴレイグ》は理乃の想像の全てを注ぎ込んだものだ。


「薬を作ったとしても……どうやって苺の身体に……」


 考えても考えても、途中で思考が止まってしまう。連日の戦闘で脳も身体も疲れているのだから当たり前だ。


「……ローゼにもっと苺のこと、聞いておこう……」


 頭を振り、思考を放棄すると理乃はそう呟いて部屋を出ていった。



* * *



 第二階層、鉱山エリア。独りの鬼が太刀を振るう。


「くふっ○、アハハ●ハハッ! もっともっともっ◆と壊したい! こんなガラクタ相手じゃつま▼ないよ、腕をちぎ◇っても悲鳴ひとつ上げn∀いしさァ!」


 __私は何をしているんだろう。大切なことを忘れている気がする。頭がぐちゃぐちゃで…真っ暗で…うるさい。


『◆∀▼○●▼!』

『◆▽▽▲◆□△!!』

『○▽△▽◆▼?』


「わかっT▲るよ、全部▼__□壊す∀◆▽んでしょ○……?」


 __わからない。身体が言うことを聞かない。……でも、まぁ…どうでもいっか……。


 苺の心に闇が落とされる。紅いナイフが突き刺さり、ズタズタに切り裂かれ、黒い鎖で縛り上げられる。鬱陶しい笑い声が永遠と耳に響き、悪感情が膨らんで胸が張り裂けそうになる。


 __気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い……吐き出したいのに、もがきたいのに……何も出来ない。何度懇願してもそれを許されない。


 苺の叫ぶ声は届かず、黒い鎖の締め付けがさらにキツくなる。

 ……長い長い、階段を登る。広大な世界が狭く見える。目の前を何かが横切る。……苺はそれを燃やす。それが何だったのかを見もせず、ただ進む。

 炎翼を生やす。傍で飛んでいたワタリドリを燃やし、島を渡る。


「……? あっちに何か……●●▼まぁ、今は上に行かなきゃ……◇」


 近くの森の奥が気になり、足がそっちへ進みかけたが、苺は第四階層へ向かう。モンスターを蹴散らし、白銀の世界に足を踏み入れる。


「壊△なきゃ……燃やさな▼ゃ……」


 そんなことをブツブツと呟きながら、苺は雪を汚していく。露出した地面に火花が落ち、その足跡が燃えていく。


 __ここを登ったら……どうなるんだろう。


 …ダンジョンに着き、ふと苺は足を止める。登ってはいけないような気がするが、耳に響くうるさい笑い声達が背中を押す。


「◆待ってて▲▼ね、■みんな__」


 高い塔を見上げ、苺はにっこりと笑う。これを登れば、第五階層…《クインテットタウン》に着く。胸がざわざわするのを無視して、再び苺は歩き出す。


 __助けて……みんな……もう何も見えない。

最終章突入ッ!かもッ!()

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