真編・第91話【鬼神閻魔】
鬼神です。
『我の使いである《魘魎》を討つとは、見事だ主よ』
「いえ……」
苺は《鬼神閻魔》の声を聞きながらチラりと横を見る。正座をする《鬼神閻魔》のギリギリのところに巨大な斬り口があることから、《魘魎》達は苺の攻撃をズラすことで見事に主を守り切ったのだろう。
『……遂に、遂にこの日が来た。主よ…我を討つことが出来たなら、その身に似合った力が身に付くだろう』
ここに来た目的は《鬼神閻魔》と会うことだ。太刀に宿るこの鬼と戦うことだ。
『解放者…継承者…喰魂者…終結者……多くの名を持った。レベルも我が解き放った獣達を倒し、成長したようだ』
「……ずっと呼んでいたのは、会話をするためですか」
『……否だな』
息を吐き、《鬼神閻魔》はそう呟くと太刀を持って立ち上がる。角が本殿の天井ギリギリで、今にも突き刺さりそうだった。
『魂と魂のぶつかり合いを。鬼と鬼の争いを。今……ここで』
本殿が震え、花弁と成って散る。風が無いのにも関わらず木々がざわめく。
『ベリー、《鬼神閻魔》のレベルは500です』
「…うん。でもやるよ、ローゼ」
『はい、勝ちましょう!』
全力でなければ、《鬼神閻魔》は満足しない。勝つことすら出来ない。苺はローゼと同期し、【真閻解・鬼神纏】と【解放者】を発動して血解状態になる。
『勝利の花を咲かせよう』
「___勝華爛漫ッッ!!!」
双方の太刀が炎を纏い、衝突する。《鬼神閻魔》の武器は苺と同じ《鬼神ノ太刀・真閻》と《燈嶽ノ太刀・真閻》だ。苺が使うことの出来るスキルは、《鬼神閻魔》も使えるだろう。
『全身全霊で来い、八坂苺ッ!』
「はいッ!!」
その瞬間、苺は足に雷公を纏い《鬼神閻魔》の背後に回る。《鬼神ノ太刀・真閻》を薙ぎ払うと同時に【閻解ノ大太刀】を連続発動する。……だが、それは防がれるだろう。苺は未来予知でわかっている。
「【赫灼ノ陽魂】と【閻魔】発動ッ!」
《鬼神閻魔》が苺の超大太刀を片手の《燈嶽ノ太刀・真閻》で受け止めた瞬間に、苺はスキルを2つ発動する。【赫灼ノ陽魂】により爆発が発生し、続けて超大太刀から【閻魔】の炎が噴き荒れる。
そして、元の大きさに戻すと赫灼した太刀に氷華を纏わせる。
「赫冰双華ッ!」
その巨体を凍らせることは出来ないが、片脚だけなら可能だ。赫灼する氷の花が咲き、《鬼神閻魔》の攻撃力を吸収して、ダメージを与えていく。
「【赫冰一閃】……これでっ!」
吸収した攻撃力分のダメージを、【赫冰一閃】で解き放つ。
『赫く冰る花を__』
苺の予知が外れた。体勢を崩すはずだった《鬼神閻魔》は、同じく赫冰双華で苺を凍らせる。
「っ、くっ……!」
『【赫灼一閃】、三連ッ!』
《鬼神閻魔》は凍った苺に、【赫灼一閃】を三連放つ。一撃目は喰らってしまったが、氷が砕け、身体が自由になったことで血解状態による【フルカウンター】が発動して残りは防ぐ。
「【心眼】……! 【真・閻解ノ燈閻真太刀・鬼神全真纏・閻魔華蔦】ッ!」
【心眼】で弱点部位を見つけ出した苺は、閻魔華蔦を発動する。熱源は燃える自分自身だ。
蔦に絡まれ、HPを吸収して成長する花が爆発していき《鬼神閻魔》はダメージを受ける。その隙に苺は再接近すると、【焔烙】を《鬼神閻魔》の弱点部位である首裏に叩き込む。
『グォォッ!?』
その焼印を押した部分を強制的に弱点部位とする【焔烙】を、元々弱点である部位に押せばウィークポイントダメージは2倍。そして、苺は【風林火山】と【千力千斬】を発動する。
「【真・閻解ノ燈弓・獄炎雨】、【燈火燦然】、【獄閻鬼斬】……!」
苺は《果ての弓》による獄炎の雨を振らせ、【燈火燦然】で無数の火球を放ち、その間に太刀を装備し直すと【極閻鬼斬】で《鬼神閻魔》の身体を斬り刻みながら【焔烙】を押した首裏まで駆け上がる。
【千力千斬】の効果で攻撃回数分、攻撃力が上昇し、苺は55連撃を撃ち終えると【飛焔ノ翼】を4連続発動して高く飛び上がる。
「もう一度ッ! 【真・閻解ノ燈閻真太刀・鬼神全真纏・華炎刀墜】ッ!!!」
超大太刀でもいいが、それを行った場合、元の大きさに戻す時に隙が生まれる。この一撃ではまだ《鬼神閻魔》を倒すことは出来ないのだ。だから苺は【閻解ノ大太刀】を一度だけ発動し、普通に大太刀にすると【焔烙】を狙って墜ちる。
『来い、雷公……!』
「__ッ!? 真閻解、解除! 【霧雨ノ舞】っ!!」
《鬼神閻魔》が雷公を纏った瞬間、苺は攻撃を中断して【真閻解・鬼神纏】を解除すると【霧村】に変化し、物理攻撃を無効化する【霧雨ノ舞】を発動した。
刹那__太刀を捨てた《鬼神閻魔》が【雷槌】で苺を殴る。
霧のように消え、攻撃を避けた苺はその腕に乗り、走る。
「【霧雨ノ太刀・二】ッ!」
霧雨を発生させ、じわじわと《鬼神閻魔》のHPとMPを吸収する。
「よし、解除……!」
MPが回復すると、苺は【霧村】を解除して再び鬼化する。
「【真・閻解ノ燈太刀・氷華纏・氷塊ノ天拳】ッ!!」
『【燈灯線】』
《鬼神閻魔》が紅光を放ち、氷塊ノ天拳を砕いていく。
「【閻解ノ大太刀】、【同鬼】ッ!」
二刀を大太刀化し、未来予知にて見た【燈灯線】と砕けた氷を避ける。氷を踏み台に飛び、【鬼神武双・烈火】を発動して《鬼神閻魔》の仮面を燃やし斬る。
『見事。だがまだ終わらぬ』
「はい、まだ……終わりません!」
仮面の左眼部分が壊れ、鋭い眼光が苺を睨む。
この戦いはまだ終わらない。
この世界の終わりはまだ……来ない。




