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生まれて初めてゲームをしたらパーティーメンバーが最強すぎる件について!  作者: ゆーしゃエホーマキ
真章中編:音の無い世界

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真編・第80話【ツァール】

第二階層へ___

 少し特殊だったが、クエストのクリアにより環境が通常に戻る。苺が焼き払った《峰奉村》も元通りになっている。もうやり残したこともない。


『村に雑貨屋があってよかったですね、ハヅキさんが《海の街》は崩壊していると言っていたので少し心配していました』


「私もどうしようかと思ってたよ、やっぱり回復スキルは持っておくべきだった……」


『【ヒール】の取得は第一階層にあるサブクエスト報酬ですからね……』


 ベンチに座り、苺は肩を落とす。ハヅキとミツルとの出会いの影響か、少しだけ前の感覚を取り戻しつつある。ローゼは口にはしないが、内心では安心していた。この調子で元の苺に戻ってくれることを祈る。


「苺さん、もう出発するんですか?」


「うん、ホントはもっとゆっくり2人とお話したいんだけど……そうもいかないから」


「うう……ひとつ屋根の下でちっちゃい先輩に振り回されながら暮らしたいという夢がぁぁ……はぁぁ〜〜……」


 ハヅキは全体重をベンチに乗せ、だらんとスライムのように力を抜く。


「でも理由が理由だし引き止めることは出来ない……くっ、これも全てアイツが悪いのか……!」


「そんなことよりハヅキ姉、階層ダンジョンまで見送るならおれ達も準備しないと」


「__あ、それなんだけど……二人共、見送るのはここでじゃダメかな」


「うぇ!? そんなぁー!!?」


「ごめんね……2人の実力も一緒に戦ってわかってるよ。でもやっぱりモンスターのレベルは高いし、2人を危険な目に遭わせなくない。道案内ならローゼにお願いするから……2人はここで待っていてくれないかな?」


 階層ダンジョン付近、つまり《海の街》はハヅキの話によればモンスターの襲撃で崩壊している。まだそのモンスターも残っているだろう。《峰奉村》も峰奉祭が最終日を迎えた今、平和なはずだ。ハヅキ達にはここで世界の終わりを待っていてもらうのが一番いい。


「うぅ……また会えますよね……?」


「……必ず。この世界が終わって……全部が元に戻ったら、一緒にゲームをしようね」


「ぐずっ、あい……絶対また会いましょうねっ!!!」


「ハヅキ姉、酷い顔だぞ」


「うっさいわ! いつだって別れはつらいんだよぉぉ!」


「はぁ……苺さん、もうあんな無理はしないでくださいね、おれがハヅキ姉に殴られる……。でも、頑張ってください! 応援してます! 手伝えることがあったらなんでも言ってください、必ず役に立ってみせますよ!」


 泣き顔のハヅキはそう言ってミツルの背中をドスドスと殴る。しかしよくやられているのか、ミツルは気にせず苺に別れの言葉を告げる。


「うん、無理をしない程度に頑張る。ミツルくんもハヅキちゃんを守ってあげてね」


「任せといてください!」


 __またいつか、共にゲームで遊べる日が来ることを願って。苺は準備を済ませると《峰奉村》から出立した。



* * *



 第三階層 《海の街》。崩壊したその街に、苺は足を踏み入れる。建物の瓦礫が道を塞ぎ、あんなにも綺麗だった浜辺は黒く汚れてしまっている。所々にモンスターの姿も見える。


「これ……ダンジョンまで壊れてないよね?」


『そ、それはさすがに……破壊不能のはずですし』


 少し不安だが、ダンジョンがあった場所を思い出してそこを目指す。瓦礫の山を登り、大きな障害物は怖し、かつての楽しかった日々が脳裏を過ぎりながら苺は進む。


「__良かった、ちゃんとあったね」


『モンスターのレベルも高くなっているはずです。慎重に行きましょう』


 第二階層へ向かうため、苺はダンジョンの大扉を開いて中へ入る。……だが、ダンジョンに入ると外とは打って変わって物静かだった。


「何も無い……」


 元々モンスターは少ないダンジョンだったが、ダンジョンの最下層に来るまで、エンカウントがゼロだった。第三階層のボスモンスターである《ナイトメア・クラウン》ですらその場に居なかった。


『……考えられるのは、数分前に誰かが先にダンジョンを攻略したということです。レベル差があるはずなのに……どうやって……』


「攻撃を避けていればダメージは無いし、凄い運動神経の持ち主だったのかも」


 そう言いつつ、苺はダンジョンの外へ出る。もう見飽きた火山に鉱山、その先に見える第二階層 《機械の街》からはいくつもの煙が上がっていた。


『《機械の街》はまだ無事のようですね』


「うん、でもやっぱりモンスターがみんな狩られてる」


 ダンジョン付近だと言うのに、周囲にモンスターの気配はない。気味が悪いほど静かだ。


「変な感じがするし……注意しながら進も__」


「そこを塞がれると出られないのだが」


「__!?」


 突然背後から声がして、苺は距離を取って抜刀する。


「待て、何もそんなに驚かなくてもいいだろう? 僕は君に危害を加えるつもりは無い」


 そう言っているのは、苺と同じくらいの身長の……男か女かわからない、中性的な子供だった。髪は真っ白で、不思議とオーロラのように輝いている。見た目に反して堅苦しい言葉遣いはどう返せばいいのかわからなくなる。


「……あなたは」


 後ろから来たということは、さっきまでダンジョンに居たということになる。全く気配を感じなかったのにも関わらず。


「そうだな、自己紹介をしておこう。僕の名前は“ツァール”。ちなみに姓はない」


「つぁーる……? 外人さんですか」


「ああ、この髪も自前だよ。それで君の名前は?」


「……八坂苺」


 苺の名前を聞いたツァールは「ほう……」と呟くと、咳払いをしてお辞儀をする。


「……すまない、改めさせてもらう。僕はツァール……“対神組織 《アンフェル》の代表”だ。よろしく頼むよ、八坂重郎の孫娘」

やっっと登場出来ましたよツァールさん。

そして重郎や雅信、見咲さんの所属する組織的の名前も出てきました(考えてなかったなんて言えない)




え……?記念閑話?

そのうちやりますよ……うん……多分(˙◁˙)



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