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生まれて初めてゲームをしたらパーティーメンバーが最強すぎる件について!  作者: ゆーしゃエホーマキ
真章中編:音の無い世界

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202/241

真編・第75話【プレデターズ・アナイアレイション】

猛攻です。

 【閻解ノ大太刀】を20回以上発動したので、普通に落とすだけでもゴツゴツとした地面との衝突による衝撃波は凄まじく、亀裂が生成されるほどの威力だった。


『《プレデターズ》を7体撃破しました! 他の《プレデターズ》がこちらに向かって来ていますっ!』


「【大閻解】解除、【真閻解・嘷虎(ゴウコ)纏】……!

 【真・閻解ノ燈太刀・嘷虎纏・嘷覇抜(ゴウハバツ)】ッ!」


 接近する数体の《プレデターズ》をじっと観察しながら苺は《鬼神ノ太刀・真閻》を元の大きさに戻し、渢龍(フウリュウ)と対になる嘷虎(ゴウコ)を纏い、嘷覇抜によって納刀状態から一撃、二撃、三撃と目にも止まらぬ速さで《プレデターズ》を斬る。さらに討伐数に応じて苺のクリティカルヒット率が上昇する。


「【パワーアップ】、【スラッシュ】……!」


『グロロッ!?』


 ミツルは苺に言われた通り、隙が出来た《プレデターズ》の首を大剣で斬り付ける。しかし、レベル差があるためHPを完全に削り切ることは出来ない。それをわかっていたミツルは攻撃するとすぐに後ろへ後退する。以前とやることは変わらない、ヒットアンドアウェイ戦法だ。


『グルロォォ!!!』


「……っ、ハァッ!」


 一方で複数の《プレデターズ》に囲まれ、隙を突かれて重い一撃を横腹に喰らった苺は一瞬顔をしかめるが、なんとか体勢を崩すことなく反撃する。


「【フルチャージ】、【ライトニング】ッ!」


 苺が反撃したことで倒れた《プレデターズ》に、ミツルはチャージした【ライトニング】を放って心臓部を貫く。


「いい感じですけどキリが無いですね……」


「うん、全体を一気に攻撃出来ればいいんだけど……」


「村から出る時にやったあの大きな炎はもう出来ないんですか?」


「出来るけど2人に無茶するなって言われちゃったし……」


「2人……?」


「あ、なんでもないよ。ミツルくんの【エレボス】も制限時間があるでしょ? 今からやったら途中で無防備になっちゃうと思う」


 苺はあっちゃんとひーちゃんの説教を思い出して言う。

 ミツルの【エレボス】の制限時間は、現在5分間となっている。戦闘開始時に【エレボス】を既に発動してしまっているので、残り時間は精々あと1、2分程度だろう。


「とにかく【エレボス】が切れるまで出来るだけ数を減らしておこう」


「そうですね、もしおれが死んじゃったらハヅキ姉をお願いします」


「君は死なないよ」


 苺はそう言うと雷公を纏い、雷の尾を残しながら瞬時に10体を撃破する。


「私が絶対に死なせないから、もう誰も殺させないから……!」


 雷公から【真閻解・嘷虎纏】に移行して苺は言う。そして声に出さずに【赫灼ノ陽魂】を発動すると、続けて《プレデターズ》を5体斬り倒し、近くに居た他の《プレデターズ》を爆発に巻き込んでさらに追加で18体倒す。それでも《プレデターズ》はまだ全滅していない。


「【燈火燦然】六連……! 【獄閻鬼斬】ッ!」


 【燈火燦然】の連続使用で、苺の周囲には火球が数え切れないほど生成され、それが放たれると同時に55連撃の【獄閻鬼斬】を発動して苺は《プレデターズ》に突っ込む。その姿は、やはり“鬼神”と呼ぶに相応しい。数十体の《プレデターズ》を撃破する。


「【閻解ノ大太刀】! 【旋風】、【覇気】、【真・閻解ノ燈太刀・嘷虎纏・嘷撃(ゴウゲキ)】ッ!」


 苺はまだ止まらない。《鬼神ノ太刀・真閻》を大太刀化すると《燈嶽ノ太刀・真閻》のスキル、【同鬼】で現在の《鬼神ノ太刀・真閻》と同じ状態……つまり大太刀化させる。その二刀を用いて【旋風】を発動し、円形に《プレデターズ》を斬ると続けて発動した【覇気】で拘束する。動けなくなった《プレデターズ》に接近すると嘷撃を使い、その硬い鱗を殴り砕く。


「【解放者(リベレーター)】……!」


 そして【解放者(リベレーター)】を発動して血解状態になると、苺は青き永炎を二刀に纏わせる。


『『グロロロロォォォオオオオオオッ!!!』』


 《プレデターズ》は一斉に咆哮すると、苺に向かって突進してくる。


「もっと炎を硬く、鋭く、刃のように……!」


 そう呟いて、苺は強くイメージする。炎の揺らめき、火花、感じる熱、それら全てを刃とする。


「【第一形態・焔炎刃(ホムラエンジン)】」


 今まではただ暴れていた炎を完全に制して一点に集中させる。そうすることで一撃の威力を上昇、一撃必殺にも届くだろう。《鬼神ノ太刀・真閻》と《燈嶽ノ太刀・真閻》の刃は永炎化し、風に揺れるだけで空気を斬り、熱気だけで相手の命を削る。纏の力を応用した苺のオリジナルスキルだ。


「【一閃】__ッ!」


 閃光の刃を飛ばす【一閃】も、青い炎になって放たれる。《プレデターズ》に命中する前に鱗を熱し、揺れる炎に当たることでその鱗を剥ぐ。そして無防備になった柔らかい肉に本命の【一閃】が入り、《プレデターズ》を焼きながら分断する。この【一閃】だけで11連撃だ。


「雷公……! 【一閃】ッ!」


 焔炎刃に雷公を纏わせ、もう一度【一閃】を放つ。今度は雷も加わって12連撃となる。


「す、凄い……!」


『敵に攻撃の隙を与えない超連撃、超威力。様々なスキルを組み合わせることで別の攻撃方法が出来る……そして【真閻解】の効果でMPの消費も抑えられている……これがベリーの力……』


 近付けば巻き込まれるため、傍観していたミツルは息を呑んでその光景を見る。数え切れないほど出現していた《プレデターズ》も苺の猛攻で残り数体程度まで減った。さすがに戦意喪失したのか、運良く生き残った《プレデターズ》は後退りながら警戒している。


「みんな助ける……絶対……この受け継いだ力で、助けるんだ……!」


『グッ、グロロロロッ!!!』


 すると、相討ち覚悟で1体の《プレデターズ》が両前脚を大きく広げて接近する。牙から垂れたヨダレが下の石を一瞬で溶かす。毒性があるのだろう。


「雷鏖降災陣ッ!!」


 《鬼神ノ太刀・真閻》、そして《燈嶽ノ太刀・真閻》を地面に突き立てて苺は【真・閻解ノ燈太刀・雷公纏・雷鏖降災陣】を発動する。二刀をその場に残し、雷鏖降災陣を発動させながら苺は拳を構えて接近してきていた《プレデターズ》を殴り飛ばし、ランダムに墜ちる雷に打たせる。残り数体の《プレデターズ》も雷に打たれ、完全殲滅した。


 毒性のヨダレが飛び散って苺の両腕に少し付着し、包帯が溶けて(ほど)けてしまったが、幸い包帯だけでダメージは無い。


『《プレデターズ》の討伐を確認……エクストラスキル【捕食者】がユニークスキル【喰魂者(プレデター)】へ進化しました』


「スキル進化クエストだったのかな……?」


『いえ、少し違うみたいです。恐らくあの《プレデターズ》の中に特殊個体が居たのでしょう。【捕食者】の進化にはその特殊個体の討伐が条件だったようです』


 生息地を問わない《プレデターズ》は全フィールドで様々な形に擬態している。その上、数が多いので特殊個体の発見は困難を極める。苺は《エクス・システム》が関わっているかとも思ったが、あまりフィールドやモンスターを変化させると五島に気付かれてしまうため違うだろう。今回は偶然だったのだ。


「あ、ミツルくん大丈夫? 私、巻き込んで…ないよね……?」


「【エレボス】もあったから大丈夫です! 苺さんこそ、その腕……大丈夫なんですか?」


 ミツルはそう言って苺の火傷した両腕を心配する。最初包帯を見た時はそういう装備なんだと思っていたが、よく見れば頬にも同じ火傷の跡が残っている。“あの時”から数日経っているので、自然治癒で痛みはもう無い。


「この火傷は大丈夫だよ、心配してくれてありがとね」


「それなら良かったです」


 苺からこんな世界にした元凶を倒すということ等は聞いた。だがミツルは何故そんな傷を負っているのか、何故誰もやろうとしないことをやろうとしているのか、そういった深い部分は聞いていない。


(……それでも、察することくらいは出来るんですよ)


 ミツルは“もう誰も殺させない”と苺が言っていたのを思い出す。それは、過去に誰かを殺されてしまっているということだ。だからあえてミツルは聞かない。トラウマを掘り起こすつもりはないのだ。


「……っと、《プレデターズ》がリポップしてきましたね」


「うん、戦闘態勢になる前に行こう」


 そう言って苺は火山へ向かって歩き始める。ミツルも大剣を背負うと後を着いていく。火山を登るのに何時間掛かるかわからないが急ぎすぎて体力を消耗し、今後の戦闘に支障をきたしても困る。急ぎたい気持ちを抑え、暑さで吹き出た汗を(ぬぐ)いながら進んで行った。

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