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生まれて初めてゲームをしたらパーティーメンバーが最強すぎる件について!  作者: ゆーしゃエホーマキ
真章中編:音の無い世界

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真編・第71話【峰奉祭、12月29日:午後】

暗くなってきました。

「やっぱり村から出れないね……」


 何度試しても、やはり《峰奉村》から出ることは出来ない。気付くと村に強制的に戻されてしまう。


『いや、ベリー達は確かに村から出ました。でも出た瞬間に、操られたように村に……自分から戻っています!』


「……何か条件をクリアする必要がある? でもそんな時間はないし……」


「苺さん、NPCが!」


 いつからそこに居たのか、複数のNPC達が苺とミツルを取り囲んでいた。虚ろな目で苺達を見つめ、フラフラとした足取りで迫っている。


「ミツルくん、捕まったらめんどうだし逃げるよ」


「はい!」


 逃げる……とは言ったものの、NPCの数も100人は居るだろう。幸い反応が遅いので追いつかれることは無い。が、村から出れないので逃げ切ることも出来ない。


「ローゼ、ミツルくんとボイスチャット繋いでおいて」


『了解です! あと見ていて思ったのですがこのNPC達は意識が無いようですがこの動きは統率が取れています。つまり何処かに“統率者”が居るはずです!』


「村長が怪しいね、探してみよう……【鬼神化】」


「どうしますか? 二手に別れて探したほうが早そうですけど……」


「……そうしようか。ミツルくん、何かあったらローゼに伝えて」


「わかりました、じゃあまた後で! 【エレボス】、【スピードアップ】ッ!」


 ミツルはそう言うと村の端へ向かう。苺はそれを見送ると再び村の中央を目指して走った。



* * *



「__っ、ここは……」


 線香の匂いが染み付いた部屋で転がされていたハヅキは目を覚ます。装備品が無く、巫女服のような格好に変わっていること以外は特に問題はない。木造の部屋には唯一の光源であるロウソクが1本と、壁や天井に無数に貼られている(ふだ)。部屋は軋む音を立てながら、左右にゆっくり揺れている。そして……“何か”がそこに佇んでいた。


『………………』


 ボヤっとしていて輪郭が何処なのかハッキリしないが……恐らくは人。しかし雰囲気や見た目から“それ”が人と呼べるモノではないことはわかる。


「わ、わたしは生贄なんて嫌なんですけど! 苺ちゃんとお祭りを楽しみたいんですけど! 百合の間に挟まれると嫌われるよっ!」


 恐怖を誤魔化すようにハヅキはそう言うが、“何か”は何も言わずにそこに居る。


「……あなたは誰? 村人のNPCじゃない…よね?」


『………………』


 やはり返ってくるのは静寂だけだった。


「答える気は無いかぁ。うーん……この壁ボロっちいし蹴り破れないかな?」


『……ヤメ……テ』


「うわぁぁぁ喋ったぁぁぁぁぁあ!!?」


 どうやら部屋を荒らされるのは嫌らしい。意思は持っているようだ。


「……あなた名前は?」


『ナイ……ドコニモ……ナニモ……ワタシタチニハ……ナイ……』


「じゃあ、なっちゃんって呼ぶね!」


『…………』


 拒否しないということは良いのだろう。とにかくハヅキは情報が欲しい。


「ここはどこ?」


『《神域へ向かう箱舟》……イケニエヲハコブモノ……』


「ということは海の上……逃げ場なし!? 武器も無いし詰んだ……先輩を子供扱いした罰だろうか……」


 ハヅキは頭を抱えそんなことを言う。なっちゃんはもちろん無反応だ。


「じゃあ……あなたは誰ですか! って聞いてもよろしいでしょうかぁ!」


 ここまで明るく振舞っているが、実はホラーが苦手なハヅキは結構限界まで来ていた。後が怖いのでまず承諾を得ようとする。


『ニンゲン……ダッタモノ……ダッタ……ワタシタチハ……ワタシハ……ボクハ……オレハ……キミハ……』


 そう呟きながらなっちゃんは消える。誰かと聞くのがトリガーだったらしい。部屋が波にぶつかったのか大きく揺れる。確実にクエストが進行している。


「苺ちゃんとミツル……どうしてるかな……あ〜お腹空いたぁああ〜お祭りでもっと食べとけばよかったよぉぉぉ〜!」


 朝に襲われてから数時間、もう午後だ。お昼ご飯も食べていないハヅキは空腹を紛らわそうと床に転がる。その姿はまるで子供が母親に欲しいものをねだり、駄々をこねているようだったが……どうやら床に仕掛けがあったらしく、『カチッ』とスイッチが押されると部屋の端の床が動き出し、下へ降りる階段が出現した。


「よし、今すぐ出よう!!! 待ってて苺ちゃん! すぐ抱き着きにいくからっ!」


 ハヅキはそう言うと部屋にあったロウソクが乗った受け皿を持ち、暗い階段を降りていった。



* * *



「数が多い……!」


 倒してしまうことも出来るが、本来は害のないNPCである以上無闇な殺生はしたくない。苺は【覇気】を連発してなんとかNPC達を無力化していく。


「儀式の邪魔はさせませんよ」


「村の外から来たあなたにこれを止める資格はありません」


「友達を奪われて黙ってなんていられないよ。【真・雷公ノ太刀・八雷神(ヤクサイカヅチ)】……!」


 【鬼神化・雷公】に成り、八雷神を発動した苺は続けて【鳴雷】を発動すると空から雷を落とし、弾けさせる。弾けた衝撃で爆音が鳴り響き、衝撃波でNPC達が後方へ吹き飛ぶ。


「ローゼ、ミツルくん、そっちはどう?」


『やはりどこにも手がかりがありませんっ! 道がどんどん変化して……まるで私達を遠ざけようとしているみたいです!』


『【エレボス】を使ってるから捕まることは無いけどそろそろ限界……一度合流しませんか!?』


「……そうしよう。ローゼ、案内お願い」


『はい!』


 村から出れないだけでも厄介なのに、道……いや、村そのものが変化し続けて苺達が真実に到達するのを妨害している。誰かにずっと見られているような感覚に不気味さを覚えながらも、苺とミツルはローゼの案内の元、NPC達を避けながら合流する。

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