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生まれて初めてゲームをしたらパーティーメンバーが最強すぎる件について!  作者: ゆーしゃエホーマキ
真章中編:音の無い世界

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真編・第70話【峰奉祭、12月29日:午前】

祭りです。(夏祭りイベントやってなかったし冬祭りやっとくか!なんて安易な考えじゃないんだからねっ!)

 12月29日……この日の朝から、年の終わり…12月31日までの3日の間、峰奉祭(ホウマツサイ)は行われる。この祭りは今年も無事に過ごせたことに対する感謝と、来年の豊作祈願、そして冬を生き抜き、また春を迎えられるよう神に舞や供物を捧げるものだ。

 そしてこの村で言う神とは《焼結島》にある活火山のことだ。以前、鈴が《ヴルカーン・カイザー》と戦った場所でもある。


「寒いんですけどぉ!?」


「そりゃ冬だから、ほらコート」


 身体をブルブルと震わせ、ハヅキは叫ぶ。冬ということもあり気温は低い。ミツルはこんなこともあろうかと上に羽織るものを持ってきていたのでそれをハヅキに着せる。


「ありがと〜ミツル! お礼にあそこにある金魚すくいやって来ていいよ! あれ全然金魚じゃなさそうだけど!」


「遠慮しとく、取っても飼えないし……謎の魚だし」


「えぇー、じゃあわたしの為にリンゴ飴とか買ってきて」


「はいはい……ってあれ? お礼って言ってたよね?」


 なんで自分がパシリに使われているのだと思いつつもミツルはその辺の屋台で食べ物を買う。村は不思議な雰囲気が漂い、どこか懐かしい感じがする。そして、ミツルが戻って来ると村の中央に設置されている高台から村長らしき人が顔を出し、両手を広げて声を張り上げて言う。


「……それではぁ、これより生贄を決めたいと思いますが! 立候補者の方はいらっしゃいますかな?」


「い、生贄!?」


 生贄という言葉に驚いたハヅキが、食べていたリンゴ飴を落として言う。村人達は躊躇(ためら)いも無く一斉に手を挙げ、自ら生贄になることを志願する。


「今回も多いですねぇ、では…… !」


 そう言うと村長は何かが入ったカゴを持つ。


「毎年恒例、この中に1つだけ灰が入った小包があります! これを手にした者が生贄ということで!」


 カゴの中身をばら撒き、村長は言った。村人達は血眼になって小包を拾い、中を開いて確認していく。


「こ、これ……ハヅキ姉、苺さん、離れた方が良さそう…ってハヅキ姉なんでそれ持ってるの!?」


「え、あ……だって目の前に落ちてきたら反射的にキャッチしちゃうでしょ?」


 ハヅキとミツルが言い合う中、苺はハヅキが持つ小包をじっと見つめていた。


『ベリー、あれはもしかして……』


「うん……ハヅキちゃん、早くそれ捨てた方が___」


 そう苺が言った瞬間、高台に居たはずの村長が苺達の目の前に現れる。


「あなたが今回の生贄ですか! 村の外の人が生贄になることは無いと思っていたのですが……神が選んだお方ですから、きっと大丈夫でしょう! さあ、こちらへ……」


「え、ちょ、ちょっと!?」


「ハヅキ姉っ! おい! ハヅキ姉は関係ないだろ!?」


「関係…? ありますよ、だってこの村に入った時から……あなた方はこの村の一員ですから」


 ミツルの言葉に、村長はにこやかに笑いながらそう言った。優しい笑顔だが、今はそれが不気味に感じる。


「さあ、ハヅキ様。まずは正装に着替えて、身体を清めますよ」


 周りに居た村人達がハヅキを取り囲み、苺達と引き離す。


「ハヅキ姉ぇぇぇ!!!」


 村人達に押さえられ、地面に顔を擦り付けながらミツルは叫ぶが、その声はもうハヅキには届かなかった。



* * *



 しばらくして苺とミツルは解放され、村人達は何事も無かったように散開して再び祭りを楽しみ始める。


「な、なんだ……これ……」


「……多分、ゲームだった頃にあったクエストだね」


「この世界じゃ死んだら生き返ることはないのに……生贄……?」


 ミツルは膝を地につけて砂利を掴みながら、顔を俯かせて言う。


『村に入った時からクエストは始まっていた……? でもクエスト名もクエスト開始の通知も無いなんて……』


「とにかく、急いでハヅキちゃんを探そう」


「そ、そうですね。身体を清めるとか言ってましたし、きっとまだ間に合うっ!」


「うん、行こう……!」


 それから、苺とミツルは手分けして村中を探し回った。

 ……だが、途中でお面を着けた怪しいNPCを何人か見つけてもすぐに見失ってしまう。村の中もかなり広く、自分が今どこの道を走っているのかわからなくなる。


「日が上にってことはもうお昼……これだけ探して見つからないとなると《焼結島》に行っちゃったのかな……」


「じゃあこっちも!」


「いや、船が出てたら私達はこの島を出ることが難しくなる……でも気になるし、とりあえず一度村を出て船着き場に行こう」


「はいっ!」


 かれこれ3、4時間探し回っていたようだが、苺とミツルはハヅキが居た痕跡すら見つけていない。誰かに話を聞こうにも周りに居るのは全てNPC……しかも無害ではない、数時間前のようにいきなり襲ってきてもおかしくないのだ。

 苺は思考しながら村の出口へミツルと共に向かう。


(清める……水がある場所かな、でも近くに川は無さそうだし……まさか海水で身体を……? いや、そもそも水で身体を洗うってこと自体間違っているなら……ダメだ、わからない……)


 火山を神として崇めているなら、生贄をどう捧げるのか見当はつく。だがやはりヒントが少なすぎて考えようにも答えに辿り着けない。

 苺がそんなことを思いながら歩いていると、いつの間にか村の出入り口に着いていた。


「__さん、苺さん!」


「あ、ごめんね、考え事してた。どうしたの?」


「いや、その……おれ達、村を出ました…よね……?」


「え……?」


 その言葉に、苺は視点をミツルから前に戻す。……考え事をしていたといっても周囲の状況は見ていた。出入り口に着いて、村を出たことも記憶している。それなのに気付くと……苺達は村に戻っていたのだ。


「村から……出れない……?」

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