表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
生まれて初めてゲームをしたらパーティーメンバーが最強すぎる件について!  作者: ゆーしゃエホーマキ
真章中編:音の無い世界

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

193/241

真編・第66話【終視】

その少年は終わりを視る。

「___遅かったッ」


 苺は急いで戻ったが既に2人の姿はなく、モンスター達の鳴き声だけが森に響いている。


『お二人の反応は……確認できません……』


「でも必ずまた来るはず……進むよ、ローゼ」


『はい、何か反応があったら伝えます』


 一先ず苺は2人を探しながら村を目指す。いっそのこと森を燃やし尽くそうかと思いもしたが、ミツルの【エレボス】が発動し続けているのかもわからない。恐らく巻き込んでしまうだろう。


「ん……この木、傷が?」


 すぐ近くにあった木の幹に何かで引っ掻いたかのような傷跡があることに苺は気付く。


『ハヅキさんが背負っていた《ディモス・ハンマー》の装飾が引っ掻いて出来た傷……とかですかね』


「こっちにもある……森の奥に続いてるね」


 木の幹の横に入った傷は同じ高さで、森のずっと奥の方へ続いていた。ハヅキが居場所を知らせるために付けたか、それとも敵に誘われているのかわからないが、行く以外に選択肢はない。


「……行こう」



* * *



『大地が何層にも重なるこの世界の中心は、あの偽神の心と同じく空っぽだ』


 まだ小学生くらいに見える幼い少年が1人、そう呟く。


『世界を動かしているのは天にそびえる塔の最上階に居る、ボクらの母さんなんだ』


 そう言ってレイピアを引き抜くと、少年はその刃を見つめる。


『出来ることならボクが母さんを解放してあげたい。でも、力を継承したのは八坂苺……。解放者も、そして終結者も……八坂苺だ。母さんがそれを望んでいる。羨ましいな……』


 少年がレイピアを降ろし、刃を地面に当てると『カンッ』という小さな音が木霊する。


「あ、あなた一体誰……いや、人間なの? というかずっと目瞑ってるけど見えてるの?」


『ボクはボクだ。あともちろん君達の姿は見えていないよ、ボクの目は終わりを見るためにあるんだからね。ハヅキ、そしてミツル……君達には母さんのために、八坂苺の成長の糧となってもらう』


 手を後ろで縛られ拘束されているハヅキとミツルを見て少年は言う。


「ハヅキ姉……いざとなったらおれを囮に……!」


「バカ、そんなこと出来るわけないでしょ!」


『……ああ、出来ないさ。させるものか。八坂苺には先へ進んでもらわなくてはならない……《END・BEAST》では仲間との絆を、そしてボク、《END(エンド)INFANT(インファント)》が………もう来たのか、早いな』


 少年……《END・INFANT》はそこまで言うと、苺が近くに来ていることを察知してレイピアを柄に挿す。


『もう少しそこで大人しくしていてくれ。何、すぐに出番は来るさ』


 《END・INFANT》は2人にそう言うと扉を開けて外へ出る。


『やあ、八坂苺……《END・BEAST》のことはすまなかったね。母さんも君の力を見誤っていたようだから随分呆気なく終わってしまった』


『ベリー、《終わりの試練》が開始されています! その子の名は終視の子 《END・INFANT》……! レベルは250です!』


「終視……」


『……お友達からの解説は終わったかな? ボクが第二の相手だ。子供だからって舐めてると……』


「__ッ!?」


 さっきまで目の前で話していた《END・INFANT》が消え、苺の背後に立ってレイピアの刃を向ける。


『《END・BEAST》との違い、わかってもらえたかな?』


「……充分わかったよ、【真閻解・鬼神纏】」


 苺には今の動きが全く見えなかった。《END・INFANT》が声をかけなければどこに居るのかわからないほど上手く気配を消していた。【テレポート】などの瞬間移動でないのだとすれば、侮ってはいけない相手だ。


「【燈火燦然】ッ!」


『ボクの動きが速いから範囲攻撃を仕掛けてきたか、でもそのランダムな火の動きも母さんが作ったものだ。それをボクが避けれないとでも思っているのか!』


 《END・INFANT》はそう言って踊るように【燈火燦然】の火球を避けていく。


「当たらない……っ!」


『鈍い鈍い、その程度じゃこの先の試練のなんて到底クリア出来ないね! やはり君には“人を救えない”!』


 レイピアで火球を弾き飛ばすと、《END・INFANT》はそう言う。


「人……? 私の目的は人を救うことじゃ……」


『はッ! 笑わせてくれる。人すら救えないのによく世界を終わらせようなんて思えるな!』


「……っ!」


 「助けて」と、“絶対悪”との戦いの時……林檎がユーベルウィルスに侵された時にも言われた。だが結局、苺はその光景を見ていることしか出来なかった。


『もしかして、あの時はまだ弱かったから助けられなかったとでも言うのか?』


「そうだよ……私は弱いよ、だからこうして試練を!」


『……いいや君は弱くない、君はずっと前から強かった……鬼の力と炎の力を母さんによって得た君達は、何かを救うための力がある! それは決して壊したり終わらせるための力じゃない、君は世界を終わらせるのではなく、世界を……いや母さんを救うんだッ!』


 《END・INFANT》はそう言ってレイピアを振るい、白い閃光を苺に飛ばして攻撃する。


「【一閃】ッ!」


『無駄だ、【スキルキャンセル】!』


 苺は白い閃光を【一閃】で弾こうとするが、《END・INFANT》の【スキルキャンセル】により不発し、右肩に命中する。


「ッ、状態異常が……!」


 自身が受ける効果の反転、苺が攻撃力を上昇させるスキルを使えば、逆に攻撃力は低下してしまう。その為【真閻解・鬼神纏】によるステータス上昇も今は真逆で大幅に低下している。そして苺のスキルリストは大半が《鬼神ノ太刀・真閻》のスキルで、攻撃と同時にステータスを上昇させるものだ。この効果時間が切れない限りかなり戦いづらくなる。しかし時間切れを待つ余裕も無い。


『__さあ! お遊戯の時間は終わりだ。継承者・八坂苺……ボクが今から君を成長させようッ!』


 そう言うと《END・INFANT》は銀色の鎧に身を包み、レイピアを構えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ