真編・第62話【晶華燦爛】
どうも作者です。
50万字突破記念閑話どうしようか悩んでいます。はい。
…では今回も是非お楽しみくださいィィィ!!!
「HPが全回復してる……っ」
「な、なにそれ……そんなの勝てないよ!」
散り散りになった身体が元に戻り、完全復活した《END・BEAST》を見て双子は後退りながら言う。
「終わりを齎す……あの時発動しようとしてたスキルかな……ローゼ、わかる?」
『すみません……あのモンスターの詳細データが覗けなくて』
「ローゼでも見れない……っていうことはローゼより上の権限を持つ誰かが制御しているのかな」
『そうすると考えられるのは五島……でもなんでわざわざベリーを強化しようと……?』
今までもそうだが、五島はすぐに苺を消そうとはしていない。苺の祖父、八坂重郎に二度も計画を阻止されているからか苺に対しても敵意を持っている。苺を強化する理由は恐らく戦い、圧倒的な力の差を見せつけ、その後に痛めつけて殺したいのだろう……そうローゼは予想する。だが1つ引っかかる、オリュンポス十三神モンスターの時は特に問題がなかったのに、何故今は完全に覗けないのかということだ。
「……いや、違う…五島じゃない」
『で、ですが五島以外にモンスターを作ってクエストを生成することの出来る者は居ません! 私の自動的にクエストを生成するシステムも今は機能していませんし……』
「五島は本当の神様じゃない、デザインしてステータスを設定して、ゲームでもしているかのように私に攻撃させる。でもそれをするには必要なものが1つある」
それはこの世界で五島が神であるためのもの__
『まさか、《エクス・システム》が……?』
「クエスト名は《終わりの試練》、そして終わりの名を持つモンスター……五島はこの世界を作って、私を殺して、それで終わりだなんて思ってない。むしろそこから始まるんじゃないかって……だから“終わり”っていう言葉は使わない、と思う」
『つまりベリーは……《エクス・システム》が自らモンスターとクエストを作り、ベリーを試していると?』
「多分だけどね、でも……身体の奥から感じる。《エクス・システム》は敵じゃない、望んでいるのはあの子達と同じ……この狂った世界の終わり」
苺はそう言いながら《燈嶽ノ太刀》を継承した時に見た先代所有者である少女……そして黒髪の少女と赤髪の少女を思い出す。
『ならばその思いに答えますか? 世界を終わらせるため、この試練を乗り越えますか?』
「クーちゃん、私はもう全部終わらせるって決めたんだ。だからこの試練は乗り越えなきゃいけない。じゃなきゃ鈴達に怒られちゃうよ」
既に覚悟や決意は出来ている。あとはただ進むだけ。長い道を進んで、終着点に辿り着くだけなのだ。
「ミナちゃん、サナちゃん。私の力……みんなの力を貸すからあのモンスターにスキルを使わせて」
「つ、使わせていいんですか?」
「一撃必殺の攻撃かもしれないよ?」
「大丈夫、そうだったとしても私が守るから。【激流纏】、【雷公纏】」
そう言うと苺はミナとサナ、それぞれの《キラー・フランベルジュ》に力を纏わせる。
「ミナちゃんは高霎が一度だけ使える、サナちゃんは雷鏖降災陣だよ」
「お、おねーちゃんは……どうするの?」
「終わりが齎された瞬間に決着をつける。ローゼ、2人のアシストお願い」
『はい、ボイスチャットを繋ぎます!』
ローゼが双子とボイスチャットを繋ぎ、会話が可能となる。
『アシストします、よろしくお願いしますね!』
「よ、よろしくお願いします!」
「よろしくお願いしまーっす!」
「クーちゃん、私に力を貸してくれないかな……?」
『えぇ、もちろんです。共に行きましょう!』
《クォーツドラゴン》はそう答えると翼を広げて苺を覆う。するとその水晶の身体が苺の炎を受けて紅く輝く。
『引っ掻き攻撃、その後尻尾で薙ぎ払ってきます!』
「……っ! す、すごいですローゼさん! 予測が全部当たってる!」
『はい! でも100%ではありません、気は抜かないでください!』
「もちろんだよ! ミナ、もっとダメージを与えるよ!」
「うん! サナ!」
【激流】と【雷公】が纏っている双子の剣は、【破壊者】の効果も相まって通常攻撃でもかなりダメージを出せるようになっている。ローゼの攻撃予測でそう簡単には攻撃に当たることは無い。
「【高霎】ッ!」
「【雷鏖降災陣】ッ!」
ミナが【高霎】を発動し、瞬時に一撃を与えて《END・BEAST》の体勢を崩すとサナの【雷鏖降災陣】で追い討ちをかけて大ダメージを与える。それによりHPが一定値まで減り、《END・BEAST》の様子が変化する。
『終末ヲ! 終焉ヲ! グォォオオオオオオオオッッッ!!!』
「「来た!」」
《END・BEAST》は声を上げるとまた部屋の雰囲気が一変し暗くなると、やがて終わりが齎される。
『オオオオオオオオッ!!!』
『スキル【終齎咆哮】が発動されました! 《END・BEAST》の攻撃力測定不能……! ベリーっ!』
「……行くよ、クーちゃん」
苺がそう呟くと、《クォーツドラゴン》は覆っていた翼を開き苺の姿を《END・BEAST》に見せる。
『あなたの輝き、確かに受け取りました!』
苺の光を受け、赫灼とした《クォーツドラゴン》の身体がチャージブレスに集束する。
「……晶龍纏ウ鬼神ノ光、鬼神纏ウ晶龍ノ光……フタツノ光ヲ此処ニ集束シ、闇ヲ討チ滅ボソウ」
《クォーツドラゴン》のチャージブレスが苺の《鬼神ノ太刀・真閻》と《燈嶽ノ太刀・真閻》に吸収されていくと光はさらに輝き、《水晶の街》全体を照らす。光は反射し続け、また苺の元へ戻っていく。
「す、すごい光……っ、眩しくて前が見えないです!」
「まずいよ、ねーちゃん達の攻撃の邪魔になっちゃうっ!」
『お二人ともその場で待機です! 大丈夫ですよ!』
詠唱した通り、これは光が力へ変換され、闇を討ち滅ぼす。仲間という光もまた力に変わるのだ。
『「【晶華燦爛】__ッ!!!」』
その瞬間、放っていた光が消えると《クォーツドラゴン》のレーザーブレスが撃たれる。双子はそれに巻き込まれるがダメージが無く、暖かく包み込まれるようだった。
『私達の力を全てあなたに!』
《クォーツドラゴン》の言葉と共にブレスが消えると、その中から《クォーツドラゴン》と双子の攻撃力を吸収した苺が姿を現す。
「ハァッ!!!」
『____ッ!!?』
【真・閻解ノ燈閻真太刀・鬼神全真纏・晶華燦爛】、集束した光を一閃にして放つ一撃。それは爆発的に閃光すると同時に《END・BEAST》の身体を内側から分解して破壊、残りHPを削り切る。
多くの光を集めることが出来る《クォーツドラゴン》が居なければ使えない、完全防御不能のオリジナルスキルだ。
『__と、討伐成功を確認、レベル上限…さらに解放……しかもノーダメージクリア…ですか』
ローゼが消えゆく光を見ながらそう呟く。苺のレベルは今ので200に到達し、【解放者】の何らかの条件を満たしたのか、上限はさらに解放された。
「………」
『ベリー? どうかしましたか?』
「無理に…やりすぎたみたい……っ、ごめん、ちょっとだけ……寝る…ね……」
ふらついた足でそう言った苺は膝から倒れると【真閻解・鬼神纏】が解除される。それと同時に双子の剣に纏っていた【激流】と【雷公】も消え、苺は眠りについた。
うまはじメモ!
ー終齎の獣 《END・BEAST》 Lv200ー
【終齎咆哮】が発動しない限り何度でも復活する。HPを一定値まで減らし、スキルを発動させることで討伐可能となる。
【終齎咆哮】は攻撃力が徐々に上昇して限界を突破すると、動くことで揺れる空気に触れさせただけでも相手のHPを削ることが出来る。
ただし発動すると一定時間、行動不能状態になるためその間にHPを削り切ることが勝利への鍵となる。




