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生まれて初めてゲームをしたらパーティーメンバーが最強すぎる件について!  作者: ゆーしゃエホーマキ
真章中編:音の無い世界

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真編・第57話【霧に濡れる】

第四階層です。

 数時間、2回程度休憩を挟みつつ歩いてダンジョンの階段を降りて行った苺は第四階層に辿り着く。


『第四階層ダンジョン、最下層に到着。外にモンスターの存在を感知しました』


「モンスター……ボスかな」


『はい、どうやら第四階層の正規ボスモンスターのようです』


 ダンジョンの外に居るのは恐らくかつてユーベル化したクーちゃんが喰らった恐竜型のモンスターだ。苺が暗記した詳細では高威力の大振りな攻撃と火、闇属性の混合ブレス、そして第二形態で追加される高範囲ブレスが強力だ。


「せっかくだし、こっちでやろうかな……【霧村】」


 そう言って苺は【霧村】を発動。すると苺の髪が白く変化し、黒く変色していた部分が紫色になると、身体に霧が纏う。《鬼神ノ太刀・真閻》は《鬼神ノ太刀・雨狼》へ特殊派生され、《燈嶽ノ太刀・真閻》のスキル【同鬼】により《鬼神ノ太刀》と全く同じ状態になって《燈嶽ノ太刀・雨狼》へ特殊派生される。

 

『グルオオオオオオオオッッ!!!』


 外に出ると、雪が吹き荒れる中に黒い皮膚の巨大な恐竜がヨダレを垂らして居た。そしてその恐竜は苺の姿を確認すると吹雪の風の音が掻き消えるほど大きな咆哮をする。


『第四階層ボス《ディラノザウラー》、レベルは130です! 尻尾による薙ぎ払い攻撃……来ますッ!』


「__【霧雨ノ舞】」


 ローゼの攻撃予測を聞いた苺は一定時間物理攻撃を無効化する【霧雨ノ舞】を発動すると、薙ぎ払った尻尾が当たる直前になって苺の身体が霧化してそのまま通過する。


「【(アマ)殲剣(センケン)】ッ!」


 苺が【霧村】のスキルを発動すると《ディラノザウラー》の頭上に雲が出来上がり、雨が振る。


『グギュルォォォォ!?』


 そして、この【霧村】の力でダメージを与えれば【村雨】の効果が発動出来る。即ちHPとMPの吸収。


「最大値を超えることが出来るんだ……複数の相手に便利だね」


 そう言いつつ凄まじいスピードで減っていく《ディラノザウラー》のHPを眺める。


『グゥゥッ! オオオォォォオッ!!!』


『__ベリー! 混合ブレスです!』


 最後の足掻きなのか、《ディラノザウラー》は全力で火と闇属性の混合ブレスを吐く。……範囲がかなり広い、【絶対回避】で避けたとしても避けた先で喰らってしまうだろう。レベルはこちらが上とは言え、相手はボス級モンスターでこの世界は狂っている。何が起こってもおかしくないのだ。


「【解放者(リベレーター)】……!」


 苺は瞬時に【解放者(リベレーター)】を発動し、血解状態による【フルカウンター】が発動される。


『____ッ!?』


 属性混合ブレスは自動的に発動した【フルカウンター】により反射され、《ディラノザウラー》は焼かれて消滅する。


(一瞬でボスモンスターを……)


「レベルアップ……。ドロップアイテムは牙……かな」


 苺の視覚を借りて戦闘を見ていたローゼは思う。一夜にして得た苺の力……やはりこの強さは異常だ。

 苺は完全消滅したのを確認すると納刀し、纏っていた霧で濡れた髪を弄りながら《ディラノザウラー》のドロップアイテムを回収して先へ進む。


「やっぱり大きいなぁ……」


 道中出現したモンスターを狩りながら歩いていた苺は、巨大な水晶の山……そう、《水晶の街》を訪れていた。特にこれといった用事はないが腹が減っては戦ができぬというものだ。


「じょ、嬢ちゃん! そこの刀持った嬢ちゃん!」


「……? なんですか?」


 売店でフランクフルトを買って食べていた苺に、おじさんが声をかける。


「あんたここの街の人間じゃあねぇーよな!? どっから来たんだ?」


「どこから……えっと、上からですけど」


「上……あのデッケェのを降りてきたってのか!? なんでまたそんなこと……」


「……あなたに話す必要はないかと」


「え、あ、おう! 悪かったな引き止めてよ!」


 苺はそそくさとその場を立ち去る。やはり、装備が目立つのだろうか。


『皆さんから注目を浴びてますね……』


「どっかに泊まりたいんだけど……こう注目されちゃうとやりずらいね」


 そう呟きながら苺は宿屋を探す。ローゼも検索して探してみるが……《NGO5》の頃にあったはずの宿屋は綺麗さっぱり無くなっていた。


『確か五島はチュートリアルクリアで《ホーム》が手に入ると言っていましたし……宿屋自体が必要なくなったのでしょう』


「仕方ない、野宿でも……」


 苺がそう言って街を出ようと方向を変えた時、2つのリボンが視界に入る。


「おねーさんおねーさん! 宿屋をおさがしですか!?」


「ねーちゃんねーちゃん! さがしてるならあたしたちの家に来ない!?」


「……えっと」


 リボンの正体は小学生くらいの青色の髪をした双子の少女だった。苺はその双子を交互に見比べる。


「さぁさぁ! こちらですよ!」


「さぁさぁ! こっちだよ!」


「あ、ちょ……ちょっと」


 両手を掴まれ、ぐいぐいと引っ張られていく苺は戸惑う。それもそうだ、何の理由かはわからないが突然現れた双子に強引に“家”とやらに連れて行かれようとしているのだ。


「もしかしてもうどこかに行っちゃうんですか?」


「もしかしてもうどっかに行っちゃうのか?」


「……そういう訳じゃないよ、急だったからちょっとビックリしちゃっただけ」


 苺は双子に顔を涙目でじっと見つめられ……その双子を見返すと、何か思ったのかそう答える。


「そっか! いきなりごめんなさい!」


「そうか! いきなりごめんな! 全くミナが言い出したんだからな!」


「えぇ!? 違うよ! サナが言い出したんだよ!」


「いいやミナだ!!」


「ううんサナだよ!!」


「喧嘩は良くないよ、私は全然大丈夫だから。そんなことより2人のお家に連れてってくれるんでしょ?」


「はぅ、そうでした! こちらです!」


「あっ、そうだった! こっちだよ!」


 そうして案内されるまま苺はその双子の後を着いて行った。

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