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生まれて初めてゲームをしたらパーティーメンバーが最強すぎる件について!  作者: ゆーしゃエホーマキ
真章前編:Not Game Online

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真編・第48話【血に染る者】

 【幻手】に弓矢を引かせつつ正樹は思う。“なぜ自分の傍に置いている剣を使わないのだろう”と。《ゼウ▼・ユーbEル》のすぐ横には攻撃に参加していない《ケラウノス・ブルート》がある。ただずっと空中で静止していて、動く気配すらない。


『■●●●▼!!!』


「正樹! 今よ!」


「__【月穿(ツキウガチ)ノ矢】ッ!」


 林檎の攻撃で怯んだところに、正樹が【月穿ノ矢】を放つ。職業(クラス)《武者》が使用出来る最高位のスキルだ。正樹は苺のような火力は出せないし、鈴のような正確な射撃も出来ないが、それでも役に立とうと様々なスキルを取得している。刀や弓の技術も修行してなんとか上手く扱えるようになったのだ。


『◆◆◆▲ッ!?』


「よし、命中……! 【残刃刀】ッ!」


 正樹の矢が胸の眼球に命中すると《ゼウ▼・ユーbEル》は体勢を崩し、膝を地につける。そして正樹はすかさず【残刃刀】を発動しその無防備な身体を斬っていく。


「九宮さん! 【残刃解放】、【朧斬り】ッ!」


「【パワーアップ・フィールド】! 【クイックスラッシュ】ッ!」


 そして【残刃刀】によって残された刃が弾けて《ゼウ▼・ユーbEル》を斬り刻み、正樹は【朧斬り】でさらに追撃する。林檎は【パワーアップ・フィールド】で攻撃力を上昇させると、召喚したモンスターと共に【クイックスラッシュ】を発動してダメージを与える。


「私達、なかなかいい感じなんじゃない?」


「そうだね、でも2人でこのまま倒せるとは思えない……火力が低すぎる。あれどうにかして苺さん達と一緒に本体へダメージを与えないと……」


「そうよね…はぁぁ……みんなの火力に頼ってた罰ね、これは。【弓兵・スケルトン】! あの目を狙って攻撃よ!」


 林檎はそう言って弓矢を装備した《スケルトン》を数体召喚し、攻撃指示する。

 一方で苺達は《ケラウノス・ブルート》の猛攻に苦戦していた。


「あっ! また逃げられた……!」


「撃ち落とすよ!」


 《ケラウノス・ブルート》はこちらが攻撃しようとするとその攻撃範囲から瞬時に離脱するのだ。なので鈴のように遠距離攻撃で撃ち落とし、その隙に攻撃するしかない。しかし《ケラウノス・ブルート》の武器耐久値は高く、破壊することは難しい。


「【真・閻解ノ燈太刀・氷華纏・氷塊ノ天拳】ッ!」


 鈴が撃ち落とした《ケラウノス・ブルート》を、苺は氷塊を落として潰す。だがその程度ではやはり壊れない。


「やっぱり……これかな、【解放者(リベレーター)】ッ!」


 そう呟いて【解放者(リベレーター)】を発動し、血解する。それにより苺の一角が燃えて身体に赤い模様が浮かび上がり、《鬼神ノ太刀・真閻》と《燈嶽ノ太刀・真閻》が血色の刀身へ変化する。


「__【断ち斬り】ッ!!!」


 あらゆるものを断ち斬ることが出来る【解放者(リベレーター)】のスキル、【断ち斬り】はその効果を発揮し、《ケラウノス・ブルート》を真っ二つに斬る。すると斬られた紅い雷霆剣は解けるように消滅する。


「これなら! みんな、私が斬るまで待ってて!」


「私は援護射撃するね」


「うん、お願い鈴!」


 苺はそう言うと血解スキル【アクセラレート】の効果で加速し、まず三嶋の元へ向かう。


「三嶋さん、今斬ります!」


「ああ、頼む!」


 その会話が終わった瞬間に、三嶋が押さえていた《ケラウノス・ブルート》が断ち斬られる。


「次……!」


 ただ【解放者(リベレーター)】による血解状態の身体への不可は大きい。血が永遠と流れ出ているようなものなのだ。なので苺は続けて三嶋と対峙していた2つ目の《ケラウノス・ブルート》を斬ると、大斗と理乃の元へ急行する。


「苺、無理はするなよ!」


「ん……1つ片付けてくれれば、あとはなんとかする……」


「わかった! 【断ち斬り】ッ!」


 苺は大斗と理乃を攻撃しようとしていた《ケラウノス・ブルート》を斬ると理乃がそう言うので《ゼウ▼・ユーbEル》の元に向かう。


「【真・閻解ノ燈太刀・鬼神纏・閻魔】ッ!!!」


 苺は二刀を納刀し、チャージしながら接近。ダウンしている《ゼウ▼・ユーbEル》の懐に潜り込むと抜刀しながら【真・閻解ノ燈太刀・鬼神纏・閻魔】を発動して斬り込む。鎧に刃が当たり、火花が散らせながら《ゼウ▼・ユーbEル》のHPを削る。


『■■■▼■●◆●ッッ!!!』


「__【霧雨ノ舞】!」


 それによって《ゼウ▼・ユーbEル》が怒り、警戒した苺は【霧雨】を発動。角が引っ込みその姿が白く変化すると【霧雨ノ舞】を発動して一定時間物理攻撃を無効化する。その行動は正しく、直後に苺の真下から6つの《ケラウノス・ブルート》が突き出てきた。【霧雨ノ舞】の効果で命中は回避したが、このままではまた自動攻撃化してしまう。


「【ムーンライト・レイ】ッ!」


「【破狼砲哮(ハロウホウコウ)】!」


 だが《ゼウ▼・ユーbEル》がスキルを発動させる暇を与えないよう瞬時に正樹が【ムーンライト・レイ】を放ち、《ゼウ▼・ユーbEル》の頭を貫通する。さらに林檎が指示し、《金狼》《銀狼》による【破狼砲哮】で追撃する。


『『___ッ!!!』』


 単発砲撃スキル【破狼砲哮】は狼系モンスターの必殺技のようなもので、咆哮の塊をぶつける技だ。超火力に加え、数秒間スキルバインドする効果を持つので追撃しつつ、敵の反撃を阻止することが出来る。


「ありがとう正樹君、林檎ちゃん!」


「いいからぶちかましてやりなさいっ!」


「うん! 真・閻解ノ燈閻真太刀・鬼神全真纏__!」


 苺は正樹と林檎の支援で生まれた隙を狙い、スキルを発動しようとする。


『■▲▲▲……!』


 すると《ゼウ▼・ユーbEル》は右手を上げる仕草をする。またあの超強力な雷霆を放つつもりかと思ったが……そうではない。


「苺さんっ!!!」


「へっ……?」


 放たれたのは、《ゼウ▼・ユーbEル》のすぐ横で待機していた《ケラウノス・ブルート》だ。静止した状態から一変し、超加速して苺の心臓部分を狙って放たれていた。

 正樹は【幻手】でその紅い雷霆剣を掴み、止めようとするが圧倒的な力で押し返される。


「危ない、苺ッ!」


「林檎ちゃん!?」


 咄嗟に苺の前に立った林檎は、両手を広げて自分が盾になるようにする。目をギュッと強く瞑って、出来れば2人とも……そうでなくても苺は助かるように祈る。だが祈る相手は神ではない、自分自身だ。




 __林檎が盾になろうと苺の前に立ち、その直後 《ケラウノス・ブルート》が林檎に接触するのに1秒も掛からなかった。




「__い、生きてる?」


「う、うん」


 正樹の【幻手】が押さえようと掴んだ時に方向がズレたのだろう。《ケラウノス・ブルート》は林檎の左頬を掠って地面を抉ったのだ。頬からは血は流れるが、HPが少し削られただけで致命傷ではない。


「い、苺……怪我は?」


「大丈夫……ってそうじゃなくて! なんであんなことしたの! 林檎ちゃん、もしかしたら……!」


 【幻手】によって方向がズレていなければ、林檎の身体を貫いていただろう。そうなれば死は免れない。


「そうよね……ごめんなさい。でも2人共助かってよかったわ」


「そ、そうだけど! ……これ終わったらくすぐりの刑だからね!」


「なんで!? 無策で前に出たのは反省してるから! いやこんな事してる場合じゃない! 苺、来るわよ!」


 林檎は左頬の血を拭うと立ち上がる《ゼウ▼・ユーbEル》の姿を見て言う。


『リ…■…nゴ……▲▼……黄ゴんN●……rン…ご▼◆◆……ヘラ△□▼……ッ!』


 《ゼウ▼・ユーbEル》は苦しそうにその名を呼ぶ。《ケラウノス・ブルート》の猛攻もいつの間にか止まっている。


『A●AA◆▼●▲●fvgrf△(○dk▲◆■AA▽AAAa▼■g+u)gjj◇◇◆●▼▼▼ッッ!!!!』


「残りHP……は、よく見えないわね」


「……みんな、ここは私に任せて」


 苺は吠えて暴れる《ゼウ▼・ユーbEル》を見ながら言う。鎧を破壊して弱点の眼球にかなり攻撃しているが、それでもまだHPは残っているだろう。


「【真閻解・鬼神纏】……【全解放】ッ!」


 苺に一角が生えて装備が煌々と紅く輝き、鈴達……いや、街全体からMPを吸収する。


「『__我は鬼神、我は閻魔、我が力は氷! いざ、審判の時ッ!』」


 苺と鬼神閻魔が言うと、その背後に巨大な鏡が出現して《ゼウ▼・ユーbEル》の姿を映し出す。


『判決を言い渡す。氷華で凍り眠れッ!』


 鬼神閻魔の判決が言い渡され、《ゼウ▼・ユーbEル》は一瞬で全身が凍り、氷華が咲く。


「ゼウスさん、これで終わりですッ! 【真・閻解ノ燈閻真太刀・鬼神全真纏・閻華天昇(エンカテンショウ)】ッ!!!」


 そう言って閻華天昇を発動し、苺は氷ごと《ゼウ▼・ユーbEル》を貫く。その瞬間に《ゼウ▼・ユーbEル》の身体は爆発するように閃光し、その光が消える頃には消滅していた。


「い、一撃……? 凄いよ苺ちゃん!」


「あ、ありがとうございます八神さ……むぐっ!? く、くるひいでふひゃがみはん!」


「八神、少しは自重しろ!」


 八神がそう言って苺を抱き締める。終わったのだ、これでオリュンポス十三神は全て倒した。ライと理沙から希望も受け取った。あとは敵の本拠地……五島文桔(ふみきち)が居る《バベルの塔》を攻略するだけだ。


「とりあえず一度休めるところに行きたいかな……私達の《ホーム》は壊れちゃったしね」


 鈴は《ポセイドン・ユーベル》との戦闘を思い出しながら言う。


「壊れちゃったの!?」


「ん……バラバラ……」


「えぇーーあそこは良い隠れ場所になるとおも……あ、タケちゃん違うんだよ! 決してサボるためにとかそういう訳じゃ……!」


「八神、まだ何も言ってないぞ。でも休める場所がないのはちょっとな……俺達、元《NGO》社員が住んでるところはもう一杯だし……」


「ちょ、いた、痛いですタケちゃ……三嶋さん、いや三嶋様!!!」


 三嶋はそう言いながら八神のこめかみをグリグリと割と強めに押す。


「__それなら問題ないですよ……あ、実際に顔を合わすのは初めて……でしたかね。八坂苺さん、初めまして、対神戦闘組織所属の百地見咲(ももちみさき)です。早速ですが苺さん、そして皆さん。お互い得た情報を共有したいので私に着いてきて貰えますか?」


「い、苺、組織の人と知り合いだったの?」


「おじいちゃんの知り合いだよ、鈴」


 無表情な見咲に、コソコソと鈴は苺に聞く。


「問題ないって、休める場所を提供してくれる……ってことでいいのかしら?」


「はい。……ん? あなたは……林檎さんでしたか、その頬の傷も治さないとですね」


「忘れてたわ……あ、思い出したら急に痛みが……」


 こうして苺達は林檎の傷の治療も含め、情報共有のために組織の《ホーム》へ向かった。

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