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生まれて初めてゲームをしたらパーティーメンバーが最強すぎる件について!  作者: ゆーしゃエホーマキ
真章前編:Not Game Online

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真編・第45話【最後の一柱】

「苺さん!」


「苺……!」


「正樹君、理乃ちゃん、ただいま! 三嶋さんと白ちゃんもありがとうございます!」


 鈴の【テレポート】で正樹達の前に現れた苺は、ペコりと頭を深々と下げてお礼を言う。


「無事で良かったです。さて、長居は無用です、早く戻りますよ!」


 元気そうな苺の姿を見て、正樹達はホッと息を吐く。

 そして外で轟く雷を聞きながら白は言う。苺達は時間も少ないため急いで階段を上る。出現すると踏んでいたモンスター達は、不思議なことに道中出現しなかった。《ヘラ・ユーベル》が統率していたモンスターは全て苺が倒しているからだろう。


 __そして2時間、所々で少し休憩を挟みながら走って苺達は上階の広間に到着する。


「これなら間に合いそうだね!」


「ああ。《クインテットタウン》に残ってる七瀬さんと九宮さん……あとついでに八神のことも心配だ、さっさと出よう」


「そうですね。……っ?」


 また大量のモンスターを出現させてくる可能性もある。そのことも心配な鈴がそう言った時……一瞬だが水晶の壁が突然光ったように見え、警戒する。


「鈴……どうかした……?」


「いや……なんかね、気のせいかもしれないけど……」


 理乃がそう言うと、鈴は光ったように見えた壁の方向をじっと見つめ、“何か”が来ているように感じて口を開く。


「……みんな、壁から離れてッ!」


 “何か”が水晶を通して目視出来るようになり、確信に変わって鈴がそう言った瞬間、雷の轟音と共に水晶の壁が外側から破壊される。


『__来るのが遅いので、降りてきた』


 水晶の破片が舞う中、雷を纏った全身鎧の人型モンスターが現れる。


「まさか、ゼウス……!」


 正樹が言うと同時にHPゲージとモンスターネームが表示される。《ゼウス・ユーベル》……全知全能の神であり、神々の王。身丈は3メートル近くあり、その手には雷を持っている。


「予想はしてたよ、人数も少ないからね」


 鈴は《ゼウス・ユーベル》に照準を合わせつつ言う。


「予想は出来ても、今の状況で来られたら……」


「なら作戦は1つだね!」


 残り約1時間。まだ上へ続いているため、早期決着させないと間に合わない。しかし相手は最後の一柱……30分程度では終わらない。ならばと苺はみんなを見て言う。


『さあ。待ちくたびれたぞ小さき英雄よ! 存分にやり合おうではないか__!』


「全員……逃げろー!」


『な、なにッ!!?』


 作戦とは《ゼウス・ユーベル》を無視して逃げること。《ゼウス・ユーベル》は予想外だったのか、驚きながらも追いかける。


「……一応住人には避難してもらってる! ダンジョンから脱出すれば上で待機してる八神達も戦闘に参加出来る!」


『待て英雄よ! いや逃げる者が英雄なのか!? うむぅ、しかし……正しい判断ではあるか』


「なんかあのモンスター、自問自答してますね……」


「……ん、拍子抜けしそう」


 しかし《ゼウス・ユーベル》はその手に持つ雷霆剣(ライテイケン) 《ケラウノス》を使い、雷霆を飛ばす。その威力は過去最高……《ハデス・ユーベル》の雷を反射させていた水晶の壁も《ゼウス・ユーベル》の雷霆には耐えられず、当たったその部分がいとも簡単に砕け散る。


「ひえっ!? う……うぅ……また雷怖くなりそう……!」


「が、頑張って苺っ!」


『フッ、だがこういった余興も良いか! ならば我の攻撃を避け続け、無事到達してみせるが良い! フハハハハ!!!』


「う、うるさいっ! なんかうるさいですよこのモンスター!」


「気にしたら……負け……」


『ああ! そんなことを気にしていたら我が一撃で消し炭だぞ!』


 そう言いながら雷霆を飛ばす《ゼウス・ユーベル》は、一歩一歩が大きいからか歩いているだけなのに走る苺達に追いつきそうだった。


「【燈火燦然】ッ!」


『ヌオッ!? 反撃するとはやるでは無いか!』


「攻撃は通るけど……HP高いよ!?」


 【燈火燦然】の炎がいくつか《ゼウス・ユーベル》に命中する。しかし6ゲージまであるHPを前に、ほんの僅かしか削れていないように見える。


「苺、気にせず走る! 」


「わ、わかった!」


 ……そのまま走り続けておよそ40分後。息を切らしながらも苺達はやっと出口前の部屋まで到達した。


「苺! 先行って!」


「うんっ! 【雷公】、【伏雷】!」


 鈴達はまず苺を外へ出すべく、《ゼウス・ユーベル》を迎え撃つ。


『むっ、それはまずい!

【Keraunos Over Explosion】!』


「なっ!?」


『出し惜しみはしない、最初から本気だ。ゆけ! 《ケラウノス》ッ!』


 驚く鈴に対して《ゼウス・ユーベル》は、兜を被って見えない顔が笑っていると感じさせる声で言うと《ケラウノス》を投げる。


「【幻手】ッ! 苺さんを守れ!」


 正樹が【幻手】を発動し、出せるだけ出して苺を守る。しかし【Keraunos Over Explosion】の効果により、《ケラウノス》は雷霆を発生させながら自由に動き回り、【幻手】を次々と斬り裂いていく。


「自動攻撃ですか! 気をつけてください!」


 白が注意を呼びかけると、《ゼウス・ユーベル》が両手を広げ、胸を張る。


『我が力、その眼で見て驚愕するが良いッ! ハァアッ!!!』


 《ゼウス・ユーベル》がそう言うと、広げた両手を強く打ち合わせ、それと同時に雷が爆発するように発生する。そのままゆっくりと合わせた手と手を開いていくと、雷霆剣 《ケラウノス》が出現する。


「模造能力か!?」


『模造……? フハハハ! ミシマとやら、笑わせてくれるな。否である、全く同等のものだッ!』


 《ゼウス・ユーベル》の言葉は真実で、2つ目の《ケラウノス》、それは本物に似せて作った模造品ではなく正真正銘の本物で、ステータスも全く同じだ。


『まだまだこれからだぞ!

【Keraunos Over Explosion】ッ!』


 そしてリキャストタイムを無視して【Keraunos Over Explosion】を発動。その効果で雷霆を発生させながら自動攻撃が開始される。


「無茶苦茶……。【極創術・人意創造】……

 永遠(トワ)灯望剣(トウボウケン) 《キャルヴレイグ》……!」


『フッ、面白いッ!』


 2つの《ケラウノス》が暴れる光景を見ながら理乃が創り出した灯望剣を見て《ゼウス・ユーベル》は言うと、3つ目の《ケラウノス》を出現させて構えた。

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