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生まれて初めてゲームをしたらパーティーメンバーが最強すぎる件について!  作者: ゆーしゃエホーマキ
真章前編:Not Game Online

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真編・第41話【女王の果樹園】

 時刻はおよそ20時半。鈴達が《ハデスロゥグ・ユーベル》を討伐した直後だ。タイムリミットまであと3時間半。


「私は負けない、絶対……みんなのところに帰るんだ! 【真閻解・鬼神纏】ッ!」


 苺はそう言いながら《霧雨》に防具を変更し、スキルを発動すると《鬼神ノ太刀・真閻》と《燈嶽ノ太刀・真閻》を持って構える。


「………」


『……あの偽神の気持ちはわかりたくもないけど、確かにあなたってちょっとアレかも。あなたが使っているもの、纏っているもの、その全てが他人の力……あなたのものなんて1つもない』


 《ヘラ・ユーベル》は苺の姿を一瞥(いちべつ)すると言う。


「うん、この太刀は受け継いだもの。この防具も貰い物だし……技術だっておじいちゃんから教わったものだよ。私の周りの人達のおかげで私は戦える!」


『そ、まぁ精々頑張ることね。……めんどくさいからあなた達に任せるわ』


 《ヘラ・ユーベル》はそう言うと、長い髪が床に付かないようにしてしゃがみ、水晶の床に手を触れる。


『【ヘスペリデスの園】』


 すると触れているところから黄緑色の光が現れ、徐々に広がると床は草花に満たされ、部屋の壁に沿うように木々が生える。

 中央に一際大きな木が生えると3人の女性、そしてその木に巻き付く竜が現れる。


『ヘスペリデスの《アイグレー》、《エリュテイア》、《ヘスペレトゥーサ》、そしてあの竜は100の首を持つとされる《ラドン》……! あのスキルは“ヘラの果樹園”を再現するのですか!』


『あら、頼もしいお友達が居たのね。さすが《ローゼ・システム》。ということは、この実が何なのかも知っているのかしら』


 そう言って《ヘラ・ユーベル》は、リンゴの果梗(かこう)を摘んで見せると、その小さな口で一口かじる。もちろんただのリンゴではない、黄金のリンゴだ。


『ベリー、あれは食べると不死を得るとされる黄金のリンゴです』


「えぇ!? じゃ、じゃあもう勝ち目ない……?!」


『いえ、ゲーム的に改変されているはずです、不死を得ても制限時間が設定されているでしょう』


 制限時間があったとしてもその間、《ヘラ・ユーベル》を倒すことは出来ない。さらにリンゴは1つではなく、【ヘスペリデスの園】により生えた木、全てに実っている。そしてその木全てに《ラドン》の首が巻き付いているので、切り倒そうにもまず《ラドン》を倒さなくてはならない。


『中央の木に1つ……地面を通して他の木に巻き付いていると考えるとやはり中央の木に巻き付いているのが大元でしょう、そこを叩けば一網打尽です!』


「わかったよローゼ!」


 苺が早速、《ラドン》に一直線に向かう。すると中央の木周辺に居たヘスペリデス達が歌い出す。


『『『〜〜〜♪』』』


『ギャルァァアアア!!!』


 《ラドン》は咆哮すると、苺を攻撃するために首を4つ木から離す。


『《ラドン》に持続回復効果、攻撃力上昇効果、全属性耐性上昇効果が付与!』


「っ、【真・閻解ノ太刀・雷公纏・雷鏖降災陣】ッ!」


 雷鏖降災陣により、複数の雷撃が降り注ぐ。が、しかし。属性耐性が上がっているためダメージが少ない。


『ギャラァァァ!』


「フッ……!」


 《ラドン》が苺に噛み付こうと口を開く。苺は両サイドから来た首2つを斬り付け、正面から来た首は後ろへ身を(ひるがえ)して回避する。


「もう1つは……!」


『__下ですっ!』


『グルゥゥッッ!!!』


 ローゼの言葉とほぼ同時に床から大口を開けて現れた《ラドン》はそのまま草花と一緒に苺を呑み込む。


「___【赫灼ノ陽魂】ッ! ハアッ!!!」


『グオオオオオッ!?!?』


 苺は赫い刀身を振り、首を中から焼き斬る。首を1つ倒すと、《ラドン》本体のHPは一定まで削られる。


「【心眼】ッ!」


 苺は《燈嶽ノ太刀・真閻》のスキル。相手の弱点部位を発見する【心眼】を発動する。


『ギルァァァアアアア!!!』


「【鬼神武双・烈火】ッ!」


 向かって来た《ラドン》の弱点である喉元を【鬼神武双・烈火】で突き、また1つ倒す。さらに本体のHPが一定まで削られる。


『《アイグレー》、しっかり回復してあげなさい』


 中央の木の太い枝に座り、戦闘を眺めていた《ヘラ・ユーベル》が指示を飛ばす。ヘスペリデス達が《アイグレー》の歌に合わせて歌うと、持続回復効果がさらに上昇して《ラドン》のHPが回復していく。


『ベリー……このままでは全回復されてしまいます。判断は任せますが、ヘスペリデスから倒した方が良さそうです』


「その方が良さそうだけど……っ、【見切り】ッ!」


 苺は《ラドン》の攻撃を防ぎ、【見切り】の効果で攻撃力が上昇するが、ヘスペリデスを攻撃しようにも《ラドン》が邪魔で攻撃が出来ない。


『どう攻略してくれるのかしらねぇ』


 焦る苺を見下ろし、楽しそうに《ヘラ・ユーベル》は微笑む。


「なら、全部……斬り倒すッ! 【閻解ノ大太刀】、【解放者(リベレーター)】ッ!」


 そう言うと二刀を大太刀化させ、【解放者(リベレーター)】を発動すると中央の木の周りを走る。


「【真・閻解ノ燈太刀・閻魔纏・我炎車(ガエングルマ)】ァァァ!!!」


 苺は【解放者(リベレーター)】による【アクセラレータ】の効果で加速し、我炎車で二刀と自身に炎を纏わせると回転するように舞う。そして床の草花を焼きながら、壁に沿う木々とそれに巻き付く《ラドン》の首を次々と斬り倒していく。


『ゴリ押しなんて芸の無いこと……』


 《ヘラ・ユーベル》は燃える木々を眺めて言う。一瞬で周りの木、そして《ラドン》の首を斬った苺は回転を止めると炎を振り払う。


「はぁッ、はぁッ……! これだけ炎があれば……! 【火炎吸収】!」


 苺は周りの炎を見て言うと【火炎吸収】を発動し、炎を刀に吸わせて攻撃力と火属性効果を上昇させる。


『なるほど……自分の攻撃を利用してさらに自分を強化……見たところ単数の敵にも複数の敵にも対応出来るし、状況に応じて属性を変化させることも出来るのね……《ヘスペレトゥーサ》、属性耐性上げといて』


『〜〜〜♪』


 《ヘラ・ユーベル》は苺の攻撃方法を観察して呟き、指示を出す。今度は《ヘスペレトゥーサ》の歌に合わせて他のヘスペリデスが歌い、属性耐性がさらに上昇する。

 《ラドン》のHPは持続回復しているが首は残り1つのため、HPも残り僅かだ。


『……ベリー、攻撃を観察されています。これまでの《ヘラ・ユーベル》の攻撃は全て神話通りです。まだユーベル化による追加能力がわからない以上、下手に攻撃してこちらの手の内を探られないよう気を付けてください』


「そうだね、ありがとうローゼ」


 ローゼと苺は《ヘラ・ユーベル》に聞こえないよう静かに会話する。


『……やっぱあの《ローゼ・システム》、邪魔ね……世界と世界を繋ぐためだけの存在の癖に無駄な知識を……《ラドン》、もう少し観察したいわ。頑張りなさい』


『ギュルオオオオオ!!!』


 《ヘラ・ユーベル》は親指の爪をかじり、《ラドン》に指示する。《ラドン》は答えるように強く咆哮すると、中央の木から首を離し、苺に攻撃を開始する。

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