真編・第40話【迫るのは解放か、それとも終焉か】
「その声……ライさん!?」
「おとーさん……!!」
三嶋や理乃が驚きながら言う。そしてライ・スフィールはノイズ混じりの声で答える。
『……理N。…皆サん、○▲みまセん……時間はあMaり残されtt◆いなIデす』
『伝えるbBき事だけヲ、伝ェまS……理乃、キボウ▼……ワタシのドRップアiテむに設定しま■○』
「………ん」
『こrEは、三嶋サン達◆__なら、きっtうまく使えmA▼す……』
「俺達……? ライさん、希望って一体なんなんですか……?」
三嶋の問いにライは少し沈黙し、回答する。
『全てノ原因に▼▼△ナttたモノ……この世界■o、維持スるSysてm……De◆ス』
この世界の核。世界融合を可能とさせた謎のシステム。
『ワタシ◇●が渡すのハ……Sれに、アクセ▼スするたmeの方法と……パスわード、五島に勝つ▲ためニは、k○れシkAない……』
「……おとーさん、絶対……みんなで元に戻す……だから、おかーさんと一緒に……」
理乃は手を震わせ、瞳に涙を浮かべて言う。
「___ええ、理沙と……ずっと見守っています。ありがとう理乃……ごめん……理乃……ワタシがしっかりしていればこんな事には……」
「ん……それでも……無いと思ってた打開策を、用意してくれた。必ず勝つ……私が居るパーティーメンバーは……強い人達ばかりなんだから」
「……そうですね。ワタシもそう思います……あなた方は、強すぎる。少しは見習わないと、ですね」
そう言ったライはにこやかに微笑む。
『___さT&cg▲……もう限界のヨう◆○です。コの世界を……お願いsM…ス……』
「……うん」
ライがそう言うと冷気の身体は完全に消え、それと同時に舞い上がる光の粒を理乃達は見上げる。そして理乃は、いつの間にか手に握っていた紙切れを見た。
「……《エクス・システム》」
ライの字で、走り書きで書かれた文字。それが現実と仮想を融合させた、五島が作り上げたモノの名前。
「……あなたに、託す」
理乃は少しの間その紙切れを眺めると、三嶋に手渡す。
「これは……パスワードか。暗号化されてるな……一番近い部下にすらそのシステムへアクセスさせないってことか、かなり厳重だ。解読に時間がかかるとは思う。でもなるべく早く終わらせよう」
「ん……おねがい」
「あぁ、任された」
三嶋は紙切れを仕舞うと理乃に向かって言った。
「……ひとまず一件落着、ですね……」
白はヒビが入っている杖を撫でながら言う。
「うん、でもやることは残ってる……皆さん、まだ動けますか」
「……正樹君の言う通り、苺を早く見つけなきゃね……私は動けなくても動かす!」
鈴はそう言うと軽く身体を伸ばす。
「オリュンポスモンスターも残り少ないこのタイミングで自分の秘書すら使ったということは五島自身の準備が出来ている……あちらもそろそろ終わらせる気なのでしょう、急いだ方がいいです」
「あぁ、だけど闇雲に探しても時間がかかるだけだ」
「そうですね。……そういえばメッセージは送ったのですか? 場所はわかりませんが、かなり近くまで来ています。ボイスチャットも届くと思いますよ」
白の言葉に鈴がハッと気付く。
「焦ってて気付かなかった……ありがとう白、とりあえずやってみるね」
鈴はそう言うとボイスチャットをオンにし、苺へ繋ぐ。
* * *
『ベリー! ベルからボイスチャットです!』
「ほ、ほんと!? 【旋風】!」
苺はそう言うと【旋風】で周囲を薙ぎ払いモンスターを斬り倒し、すぐにボイスチャットを繋ぐ。
「鈴! ごめんね、今そっちに戻ろうとしてて!」
『うん、わかってる。私達もそう思って今階層ダンジョンに潜ってるよ。今ハデスって言うのを倒して……理乃のお父さんから、希望を受け取ったところ』
「理乃ちゃんの……!? そうなんだ……あっ、だからさっきの……えっと、ろぐも? って言うでっかいのが急に消えたのかな?」
『《ログモゥズ》だったかな……そっちに出たんだね、とにかく苺が無事で良かったよ』
鈴は苺の声を聞いて、少し心が落ち着く。苺もまた、鈴の声を聞いて戦闘続きだった身体に力が溢れる。
「うん、私は上を目指すよ! そろそろ広いとこに出るってローゼが言ってるしもしかしたら鈴達居るかもしれないね!」
『あはは、そうだったらめちゃくちゃ良いんだけどねぇ』
『__ッ、ベリー、何か居ます。反応は……1つだけです』
マップを確認しつつ、敵対反応がないか注意していたローゼが言う。
「うん、わかったよローゼ。鈴、そういう訳だから」
『うん……苺……絶対、戻ってきてね』
「……当たり前だよ! 絶対にみんなのところに戻る! じゃあまた!」
『うん、また!』
2人はそうしてボイスチャットを終了する。苺は階段を昇り、少し広い空間に出る。そこにはローゼの言った通り何かが居た。
「……女の子?」
苺はその少女を見て一瞬だけ警戒を解く。しかし今までのことやローゼの言葉からすぐに刀を抜く。
『こんにちは、あなたが八坂苺ね! 全く……来るの遅すぎて待ちくたびれたわ! まぁその力を持ちながらこのスピードって事は……使いこなしてないおバカさんか、それともこういう時のために温存していたお利口さんか……』
「……っ! あなたは?」
少女の言動で確信した苺は声を低めにし、威嚇するように聞いてみる。
『……あたしはヘラ、《ヘラ・ユーベル》。オリュンポス十三神モンスターの一柱。そして……あなた達が今まで戦ってきた出来損ないとは違う、完璧に調整されたモンスターよ』
「調整……? 出来損ないって……あれで?!」
苺は今までの戦闘を思い出して言う。
『ま、詳しくは言えないわ。だって戦いの勝敗を左右するのは互いの情報量……現時点であなたはあたしの事を、今あたしが話した事だけしか知らない……! でもあたしはあなたを知っている! だからあたしはこの戦いに勝つ! ハデスもペルセポネもみんなあなた達の戦闘能力を知るためのモノに過ぎない! あなたはあたしに勝てはしない……無知なるものは敗北するっ!』
《ヘラ・ユーベル》は満面の笑みでそう告げた。




