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生まれて初めてゲームをしたらパーティーメンバーが最強すぎる件について!  作者: ゆーしゃエホーマキ
真章前編:Not Game Online

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真編・第39話【その剣で灯すは希望の光】

「え、喋っ__」


「鈴、避けて!!!」


 白の声が聞こえたと同時に、鈴は自身の状況を理解する。冷気が身体に纏わりついているのだ。


「っ、ありがとう白!」


 後方に飛び退くことで簡単に抜け出せたが、冷気の影響で鈴のMPは全て吸収されてしまった。


『仲間に助けられたな』


「あなた……理乃のお父さん……?」


『あれはもう居ない。完全に定着するまで時間はかかったが……今やっと終わったところだ』


「定着……って、どういうこと」


『魂の上書きだ』


 《ハデスロゥグ・ユーベル》はそう答える。冷気の身体はゆらゆらと周囲に冷気を放出しており、身体との境界線がわからなくなっている。


「じゃあ……もう理乃は、お父さんと話をすることも出来ないの……」


『………』


「なら容赦はしない……ッ!」


『だろうな、【アイス・エイジ】』


 鈴がハンドガンを《ハデスロゥグ・ユーベル》に向けて言うと、【アイス・エイジ】が発動して鈴の身体を凍らせていく。


「く……あ……っ!」


「鈴さんッ! 【残刃刀】ッ!」


『【冷蝕(レイショク)】』


 身体が凍り、動けなくなった鈴を助けようと正樹が飛び出す。しかし、《ハデスロゥグ・ユーベル》が発動した【冷蝕】により正樹の周囲に冷気が発生、纏わりつくと急激なスピードでMPを吸収した。MPが無くなれば【残刃解放】を発動出来ない。回避手段も減る。


『【Bident Over Explosion】……! 』


 スキルが発動されると《ハデスロゥグ・ユーベル》の冷気の尾が光りだし、周囲に二叉の槍……《バイデント》が無数に召喚される。


『グォォオオオオオッ!!!』


 《ハデスロゥグ・ユーベル》は咆哮すると《バイデント》と共に冷気の尾で突く。そして、動けなくなった鈴に《バイデント》が襲いかかる。


「【マジックヒール】ッ!」


「白……! 【絶対回避】ッ!」


 白の【マジックヒール】でMPが回復した鈴は、すぐに【絶対回避】を発動。【アイス・エイジ】の氷を割り、《バイデント》を回避する。


「【加速】……!」


「【アイアンシールド】!」


 鈴は【加速】を発動して回避。三嶋は【アイアンシールド】で盾に隠れ、《バイデント》や冷気の尾の猛攻を防ぐ。白は背後に横たわる理乃を庇い、【マジックシールド】を周辺に展開する。MPが無くなった正樹は刀を上手く使うなどして受け流す。


「多すぎだよ!」


 鈴はそう言いながら【クイックショット】で《バイデント》を数本撃ち落とす。


「……っ? おい、ハデスはどこだ!?」


 三嶋が周囲を見回して言う。


「この状況で隠れて狙うところなんて1つですよ!」


 白はそう言うとファングを背後に出す。それとほぼ同時に《ハデスロゥグ・ユーベル》が出現し、冷気の翼腕で引っ掻く。


『グルォォッ!』


『くっ、さすがに予測されるか』


「そりゃ、理乃も守ってるわたしならすぐに対処出来ないと思うでしょうね! ファング、噛みちぎっちゃってください!」


『グァルッ!!!』


 《ハデスロゥグ・ユーベル》の右翼腕に噛み付いていたファングは、そのまま顎に力を込めて噛みちぎる。


「その冷気で物理攻撃が出来るなら、こっちの物理攻撃も通るって訳ですね」


『フッ、だが……お前はその冷気に触れた』


『__グッッ!?』


 モンスターである前に、ファングは白の武器なのだ。それが翼腕……冷気の手に触れたとなると、武装破壊は発動する。


「それも予想してます! ファング、いやこの杖には武器破壊無効の効果が付与しています、もちろん完全には防げないでしょうけどね」


 ファングの身体の所々にヒビが入るが、完全破壊には至らない。白はファングを杖に戻すと理乃を抱えて後退する。


『人間に味方する……愚かな者よ』


 《ハデスロゥグ・ユーベル》は噛みちぎられた翼腕を眺めて言う。【Bident Over Explosion】も終了し、辺りに静寂が訪れる。


「うぐ……おとー…さん……?」


「理乃! 良かった……ごめんね、あいつは回復効果を奪うからまだHPは回復出来ない……理乃?」


 鈴は目を覚ました理乃の身体を支えながら言うが、理乃は《ハデスロゥグ・ユーベル》をじっと見つめたまま動かない。


『お前の父はもう居ない』


「でも魂は残っている」


『何を言っている……その魂を我で上書きしたのだ、もはや存在していない』


「……おとーさんはまだそこに居る、だから……【神壊】ッ!」


『ぬぅっ!?』


 理乃は一瞬で極創し、【神壊】を放つ。不意をつかれた《ハデスロゥグ・ユーベル》は防ぐことが出来ず、【神壊】は仮面に命中する。


『……姿を消す能力が無くなったとしても、お前達は我に勝てはしない』


 仮面が一部破損したことであらわになった右眼が理乃を見る。


「……うん、やっぱりまだ居る……おとーさん、もう少し頑張って……すぐ終わらせるから」


『終わらせる……? その貧弱な身体で、小さな力で、どうすると言うのだ』


「……貧弱でも、小さくもない。これは……この手は、この力は、みんなに希望を灯すためのもの……おとーさんとおかーさんが掴んだ希望を、私が受け取るための手……」


 理乃は静かにそう言うと、右手を前へ伸ばす。鈴達はその姿を黙って見守る。


「__極創するのは私の心、私の意志、みんなの願いの結晶……そうして得るのは誰もが望む世界……!【極創術・人意創造】……

 永遠(トワ)灯望剣(トウボウケン)《キャルヴレイグ》!」


 理乃が創り出したのはどの神話にも属さない、完全オリジナルの片手直剣……希望を灯す剣。銀色の刃は光に照らされると虹色に輝き、回復効果のある光の粒子が絶えず溢れていた。


「【灯望スル閃光ノ刃】……【極創術】、【連射】を付与」


 スキルを発動し、理乃が灯望剣を振ると輝く光の刃が放たれる。さらに続けて2連、3連と振り、刃を飛ばす。


『グオッ!? こ、これは……!?』


 《ハデスロゥグ・ユーベル》に命中した刃は、その冷気の身体に傷をつける。《ハデスロゥグ・ユーベル》が驚いているのは、永遠の灯望剣 《キャルヴレイグ》が回復効果のある光の粒子を放っているのに、その効果を奪えないからだった。


「……この剣で斬ったものの傷は癒えない。フラガラッハの能力を付与して創り出した……回復効果を奪えないなら私のHPも回復出来る」


 理乃が言った通り、回復効果の範囲内に居る理乃のHPは光の粒子の効果を受け、ジワジワと回復していた。


『ならばその剣、破壊して__ッ!』


「……【極創術】、【破壊成長】を付与」


 冷気の手を伸ばし、灯望剣に触れる直前に理乃は武器破損時、瞬時に自動修復し、さらに武器ステータスを上昇させる【破壊成長】を付与させてわざと壊させる。


『……ッ! グオオオオオッ!』


 さらに《ハデスロゥグ・ユーベル》は雷を溜め、上へ放つ。雷の球は空中で静止するとそこからいくつもの雷を放ち、水晶の壁や天井に反射して理乃の元へ一直線に向かう。


「【創造・スキル】、【オートディフェンス】」


 理乃は【オートディフェンス】で雷撃を防ぐが、反射を続ける雷を全て防ぐことは難しい。だが理乃は剣を構え、防ぎ切れずに向かってきた雷を【カウンター】で返す。


「ふっ……!」


『その程度か、やはりお前は貧弱__』


 【カウンター】で返ってきた雷撃をその身に受けるが、HPに大きな変動は見られない。


「……属性耐性有りか……【エンチャント・ノンアトリビュート】」


 すると理乃は灯望剣にエンチャントを付与、光属性から無属性に変更する。【カウンター】で返したので元の雷属性に加え、剣の光属性もある。それでもダメージが低いということはかなり高い耐性を持っている事になる。ならば無属性で攻撃した方がダメージは大きい。


「……【Calvraig・ModeⅡ】!」


 理乃はさらにスキルを発動する。

 灯望剣には複数のモードが存在する。ModeⅠは範囲内の味方を持続回復する粒子の放出。そしてModeⅡは範囲内の味方の攻撃力を上昇させる粒子の放出だ。時間さえあればその効果に制限は無いため、攻撃力は無限に上がる。


『ぐ……うぅ! ならば、ならば力の源であるMPを…ッ!!!』


「白……MPを……! 【極創術】、【ラグナロク】に【詠唱短縮】を付与!」


「了解です! 【マジックヒール】!」


 《ハデスロゥグ・ユーベル》が冷気を理乃に纏わせようとする。その前に白が理乃の減ったMPを全回復させる。


「【ラグナロク】……!」


『ぬぉぉおおッ!!?』


 理乃は吸収される前に【ラグナロク】で全MPを消費する。出現した大量のモンスターは《ハデスロゥグ・ユーベル》を攻撃する。


「んぐ……んぐ……ふぅ、【極創術】……永遠の灯望剣 《キャルヴレイグ》に味方モンスターのHPを攻撃力へ変換する効果を付与」


 理乃は【ラグナロク】を使用してすぐにポーションでMPを回復させ、灯望剣に効果を追加する。【ラグナロク】で出現したモンスターのHPは高く、さらに数が多い。HPが攻撃力に変換されたので出現したモンスターは全て消滅するが、おかげで灯望剣の攻撃力は恐ろしく上昇している。


「……【キャルヴレイグ・フィニッシュタイム】ッ!」


『永遠の灯望剣 《キャルヴレイグ》で討伐したモンスターの数が30を超えたためフィニッシュタイムの効果時間を最大300秒に設定します』


「【極創術】……フィニッシュタイムの効果時間を200秒削減、その分を敵対モンスターに【行動制限・極重】を付与」


『フィニッシュタイムの効果時間を100秒まで短縮。敵対モンスター、《ハデスロゥグ・ユーベル》に【行動制限・極重】を付与。解除まで残り200秒です』


 システムボイスを聞き届けた理乃は、《ハデスロゥグ・ユーベル》を睨む。


「……はぁぁあッ!」


 理乃は強く踏み込み、ダッシュする。そして《ハデスロゥグ・ユーベル》の胸にある眼球へ灯望剣を突き刺した。【キャルヴレイグ・フィニッシュタイム】は効果時間内であれば一撃一撃の攻撃威力がフィニッシュスキルと同等になり、さらに攻撃時に全属性の追撃が発生する。


「____ッ!!!」


 理乃は灯望剣を振り続ける。斬り付ける度、《ハデスロゥグ・ユーベル》の冷気の身体が徐々に消えていく。


『ァ……A、まsカ……こんナ人間、1人に……』


「……私は、1人じゃないから……みんなが居るからっ、今ここに立っていられるの……!」


『……グ…オォォォォ………』


 理乃の言葉を聞いて、《ハデスロゥグ・ユーベル》は力無く倒れ込む。光の粒が冷気と共に舞う。直に消滅するだろう。


「おとーさん………」


 そう理乃は静かに呟いた。せめて最後に声を聞いておきたかったが………


『◆■-g△△●fe◇◇ropf__ッッ!!! ………理乃』


 ……今までで一番酷いノイズ音が発されると、次に聞こえたその声は理乃の名を呼んだ。

うまはじメモ!

*永遠の灯望剣 《キャルヴレイグ》


 【極創術・人意創造】にて創られる理乃オリジナルの武器。そのステータス、能力は創る際に自由に設定することが出来る。

 複数のモードが存在し、状況に応じて変更が可能。専用のフィニッシュスキルである【キャルヴレイグ・フィニッシュタイム】は、それを発動するまでのモンスター討伐数で制限時間が延長される。また、制限時間を減らすことで相手に対して強力なスキルを発動出来る。

 今回利用した【行動制限・極重】の効果は“あらゆる行動の一切を禁止とする”ことが出来る。

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