真編・第31話【継承者はそれを振る】
『●GC♭n8■▽〃sッッ!!!』
《ポセイドン・ユーベル》は声らしきものを荒らげて左腕を振り上げる。
「【七星】ッ!」
その瞬間に大斗は盾を構えてスキルを発動し突撃する。直後、かなりの破壊力を持つ【七星】と、《ポセイドン・ユーベル》の左腕が衝突し、さらに追撃で6回もの衝撃波が発生することで左腕は勢いよく弾かれる。
「大斗君はそのまま攻撃を引き付けておいて! 正樹君もお願い!」
「任せろ!」
「わかったよ苺さん!」
「理乃ちゃんと林檎ちゃんは総攻撃! 鈴、サポートお願い!」
苺の指示で大斗と正樹は《ポセイドン・ユーベル》の攻撃を阻止。理乃と林檎はそれぞれスキルを用いて巨体目掛けて攻撃する。
「それじゃあ、【クリンゲル・シックザール】っ!」
そして鈴は【クリンゲル・シックザール】で《ポセイドン・ユーベル》の防御力を低下させ、その後接近してショットガンで凹んだ頭部分や破損した右肩を撃ち抜いていく。
「【赫灼ノ陽魂】」
苺が《燈嶽ノ太刀・真閻》の付属スキル、【赫灼ノ陽魂】を発動するとその手に握る二刀が熱を帯びて赤く光り輝く。続けて二撃、四撃と《ポセイドン・ユーベル》の胴体に斬りこむとその効果が発動され、切り口から炎が噴き荒れる。これは【真閻解】解除後の爆炎と同じものだ。【赫灼ノ陽魂】は戦闘時の自身に溜まった高熱を刀身に宿すことで斬ったものにその力を移し、爆炎を発生させるのだ。
「【開放ノ術】、【風林火山】! 【千力千斬】、【正宗ノ技】!」
「ふっ! 【パワーアップ・ショット】っ!」
火力を増幅させる苺に鈴も攻撃しながら協力し、苺の攻撃力を上昇させる。
「【パワーアップ・フィールド】!」
モンスター達を大量に召喚して攻撃させている林檎も同じく苺をサポートする。
『;-┓”●F/T)-t8H/y■┓▲■fu〃“A∀ufdッッ!!!!』
「鈴、理乃をこっちに!」
「はいよっ! 【テレポート】ッ!」
《ポセイドン・ユーベル》の動きが変化したことに気付いた大斗が鈴に言う。鈴は理乃に触れると【テレポート】を発動させて大斗の隣に出現させる。
『■■■■▲●◆■▲▼▼▼●ッ!!!!!』
《ポセイドン・ユーベル》の胸部が展開され、青く輝くコアが露出するとそこから超高エネルギーのレーザーを発射させる。
「「【カウンター】ッ!」」
1人では受け切れるかわからないレーザー攻撃を、2人同時に受けることで【カウンター】を成功させる。レーザーは弾かれ、《ポセイドン・ユーベル》の左胸部を貫通する。
「【バースト・グレネード】!」
さらに鈴が貫通した穴に爆発物を投下し、追撃する。数秒後爆発が発生し、既にボロボロだった左腕が様々な部品を撒き散らしながらちぎれ落ちる。
『-gc/▼urj∀◎▲^|◆b●○waッ!!! ___ッ!』
《ポセイドン・ユーベル》は声を荒らげ、理乃の作り出した街全体に広がる床から抜け出そうとする。
「この街に住んでいた人達の仇……討たせてもらいます!」
暴れる《ポセイドン・ユーベル》を見据えて、苺は《鬼神ノ太刀・真閻》と《燈嶽ノ太刀・真閻》を交差させる。そして目を瞑り、深く息を吸い、刀に意識を集中させる。
「……これは……皆、ここ離れるよ! 多分巻き込まれる!」
空気が変わり、鈴がそう言う。
「わかったわ、【テレポート】のリキャストは…?」
「すぐ終わるよ、早く私に掴まって!」
召喚したモンスター達を解除して林檎は鈴の手に掴まり、正樹、大斗、理乃も不安そうに苺を見ながらそれぞれ鈴に掴まる。
「苺! 私達の分もお願い!」
「…任せて!」
そう言った瞬間に鈴は【テレポート】を発動し、出来る限り離れた場所に転移した。
「…すぅ……【真閻解・鬼神纏】…右、氷華纏。…左、獄炎纏…!」
そうして刀だけを部分変化させる。かなり維持が大変で、少しでも気を緩めると解除してしまうだろう。苺はなんとかそれを維持して攻撃に入る。
「__ハァッッ!!!」
一連撃目。苺は右手に持つ《鬼神ノ太刀・真閻》を振り上げると【真・閻解ノ燈太刀・氷華纏・氷槌】を発動させて【創造】で作られた足場を破壊する。
『◆●○◆!?』
身体の拘束が解けた《ポセイドン・ユーベル》はそのまま水の中に沈む。苺も水の中に入ると、左手に持つ《燈嶽ノ太刀・真閻》から炎をジェットのように噴射して《ポセイドン・ユーベル》に接近する。【封解ノ術】の効果はまだ続いているので苺の周りは空洞になっている。その為、炎の熱が籠り空洞内は暑く、苺は額に汗を浮かべている。
「そこッ!」
そして《ポセイドン・ユーベル》から凡そ1メートルまで接近した苺は、燃え盛る炎刃を横に薙ぎ払い、《ポセイドン・ユーベル》の上半身と下半身を分断する。
「天より堕ちし一振りの剣、我が身を燃やし地を焦がせ…!! ハァァァァ!!!」
再び苺は華炎刀墜を発動させ、《ポセイドン・ユーベル》の上半身を押して水底に衝突させる。
「せいッ!」
続けて《鬼神ノ太刀・真閻》を胸部に突き刺し、氷結による拘束スキル【氷縛ノ術】を発動して《ポセイドン・ユーベル》を凍り付かせる。
「【獄閻鬼斬】ッ!」
そして自分の身体を燃やしながら、二刀流になったことで連撃速度が上昇した55連撃を《ポセイドン・ユーベル》に与えると、その衝撃で地面がヒビ割れて亀裂が形成される。
「【鬼神武双・烈火】! せいやァァァッ!!!」
そんなことも気にせず、【獄閻鬼斬】を全て撃ち終えると、苺はさらにスキルを発動して攻撃する。すると割れた地面が青く発光し、強く点滅する。
「っ!? 逃がさないから!」
どこかへ転移して逃げるつもりだと思った苺は二刀を《ポセイドン・ユーベル》に突き刺し、スキルを発動する。
「【真・閻解ノ燈閻真太刀・鬼神全真纏・華創氷崩】___ッッ!!!」
苺が華創氷崩を発動すると、周囲が一瞬で冷却される。それにより水は凍り、苺自身も巻き込まれて氷の中に閉じ込められる。
そしてこのスキルはこれで終わりではない。その能力は物体を凍らせた分だけ攻撃力を1分の間上昇させる。普通に使えば一定範囲しか冷気を発生できないのでそこまで攻撃力は上がらない、が、特殊条件として周囲が水ならば範囲など関係なく、連鎖するように凍っていく。その気になれば海だって凍らせられるだろう。そして二連撃目、崩。これは凍らせたものを破壊消滅させてダメージを与えるものだ。敵味方関係なくダメージを与えてしまうので鈴の判断は正解だった。
「ハァッ!!」
氷が爆散し、《カルテットタウン》の壁がヒビ割れて崩壊していく。かなりの範囲凍らせていたので、街周辺フィールドにも氷塊が墜ちて地面を抉っていく。《ポセイドン・ユーベル》も氷が壊れたと同時に身体が限界を迎えて崩れ、HPも残り少ない。
『まさ<◆かッ! ■神で▲ある我がggg、人bf間如きロ△に▼負け◆◆▼○rrrrr●∀だと§ッ!?』
「あなたは…! あなた達は神様なんかじゃない! 神様であっても、心ある人達を物のように扱っていいはずがないッ!」
『我ッッ[◇神◎ロっ、DDda!!! 何tfx▼xがaaろう§◆▲と、■神なjcのだッ! +ff○△ゼzzゼッfhc■◆□ッタイtdsiNi〃ii□edッッ!!!!』
声がほとんど聞き取れないほどノイズが酷くなっていく。それと同時に胸部から高熱が発さられる。またあのコアレーザーを放つつもりなのだろう。
「永炎、解放…ッ!」
苺は特殊属性付与スキル、【永炎解放】を発動し、青白い炎を刀に纏わせる。自動的に氷華纏と獄炎纏が解除され、完全な【真閻解・鬼神纏】となる。
『キエeee▼ロォ△ォオoオオj◆cオhc/dk:■●□gxtオオオオ!!!!!』
「【断ち斬り】ッ!」
自滅覚悟の最大出力コアレーザーと、ありとあらゆるものを斬る【断ち斬り】が衝突する。
「やあぁぁぁぁぁぁッ!!!」
当たれば一撃死も免れないであろう高威力のレーザー。だがしかし、【断ち斬り】はそれすらも切断する。そして二刀の刃は《ポセイドン・ユーベル》だけでなく、《カルテットタウン》の地面すら断ち斬る。
『gガアア○アアaaアア●■◆アアA!!!!?』
完全にHPが0になり、《ポセイドン・ユーベル》は叫びながら消滅して行った。__瞬間。
「っ!? じ、地面が!」
何度も何度も攻撃を繰り返した結果、地面の耐久値が0になったのか大きく揺れ、崩れていく。そしてその中心点に居た苺は巻き込まれ、建物の残骸と一緒に落下していった。
「え…うそっ……! 苺っっ!!?」
鈴は叫ぶように名前を呼ぶ。離れた場所からでも街が崩れ落下しているのがわかった。数分も経たないうちに街は跡形もなく消え、そこには大穴だけが残った。
《ポセイドン・ユーベル》戦__完。




