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生まれて初めてゲームをしたらパーティーメンバーが最強すぎる件について!  作者: ゆーしゃエホーマキ
真章前編:Not Game Online

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真編・第24話【メッセージ】

 《アテナ・ユーベル》と《アルテミス・ユーベル》との戦闘の翌日。皆はホームで身体を休めていた。しかし苺は鍛冶場で作業をしていた。


「正樹君、大斗君、強化出来たよ!」


 そう言って苺は、正樹に《月輝弓》を《アルテミス・ユーベル》のドロップアイテムで覚醒させた、《月神弓(げっこうきゅう)・アルテミス》を渡し、大斗には《大熊ノ盾》を同じく《アルテミス・ユーベル》のドロップアイテムで覚醒させた、《星空の巨盾(きょじゅん)・カリスト》を渡す。

 いずれもアルテミスに関係が深い装備だが、《アテナ・ユーベル》からは何もドロップしなかった。


「正樹の【幻手】にいつまでも頼ってるわけにはいかないからな…今後俺はタンクに徹する」


「私としては大斗に前に出て欲しくないんだけどねぇ」


「…あのなぁ鈴、今更後衛職についたとしても戦力にならねぇし、それにこのパーティーは他にタンク出来るのは理乃しかいねぇ。でも理乃は火力を活かして攻撃に回って欲しい」


「うぅ、わかってるよ! でも、腕無いっていうのはかなり不便だよ、今まで出来たことが出来なくなるんだから」


「あぁ、気をつける」


 その時、端末から『ザザッ__』というノイズが聞こえてくる。


『これは…皆さん、ボイスメッセージを受信しました! 展開します!』


 しかしローゼにより展開され、聞こえてくるその音声に全員が息を呑んだ。


『__これを聞いているどこかの誰かさん。……わたしは、もうダメみたいです。さすがに1人でアレと戦うのは…無謀でした。街も水没して……わたしも…力尽きて、この水の底に沈んでいくでしょう。かなりHPは削れたはずですけど、多分もう回復してます、すみません。無力なわたしを許してください。……でも…そんなわたしでも、願うことが許されるのなら、誰か…っ、誰かこの惨状を…終わらせてください…!』


 …そこで通信は声からして苺達と同い年かそれ以下の女の子、そんな子がたった1人でモンスターと戦っていた。最期…その子は疲れ切って息が荒く、途切れ途切れの言葉で必死に願っていた。

 水没した…ということはつまり、3体目のモンスターは…。


「……海神、ポセイドン」


 鈴がそう呟く。海神ポセイドン……なんとその力はオリュンポス十三神の主神である全知全能の神…ゼウスに次ぐとされている。かなり強力なモンスターであることが(うかが)える。

 そして、発信元をなんとか特定させたローゼが言う。


『発信位置の特定完了…! マップに表示します!』


 大きく表示されたマップには、周辺エリアの名称が表示されている。苺達の居る街…《クインテットタウン》に、昨日、苺達が戦闘を行った樹海。そして街の北西に位置する《バベルの塔》…そこからさらに北西に行ったところに、発信位置である目印の点があった。


「そこに街があるんだ。今まで他の街なんて見たことなかったけど…ボイスメッセージのこの人が確かに言ってた。あの言葉に嘘はないと思う」


 正樹がその点を見つめながら言う。


「……」


 苺は無言のままその点を見つめる。


「……これ、私達の分断が…目的…?」


 そう理乃が言う。確かにその可能性は高いだろう。


「分断か…厄介だな」


 そう言った大斗は眉間にシワを寄せて親指の爪を噛んだ。

 分断されればそれだけ苦戦することになる。今の状態でもギリギリで勝てているのだ。昨日の二手に別れて戦闘を行ったのは、《アテナ・ユーベル》と《アルテミス・ユーベル》を分断した方が戦いやすいからだ。


「っ、そうか…《アテナ・ユーベル》が言ったあの時の言葉は…この事だったのね…」


 林檎は《アテナ・ユーベル》が消滅直前に言っていた言葉を思い出してそう言った。作戦通りなのは、敵も同じだったのだ。しかし、苺達が全員…距離もどれ程かわからない別の街へ移動すれば、その間この街で戦闘を行える者は限りなく少ない。


「…俺は…これを無視するのが最善だと思う」


 大斗がそう言う。しかしその声は少し震えているような気がした。


「大斗君…でもっ!」


「苺、お前がこういうの無視したくないのはわかってる。だがな、この通信を聞く限りじゃ…もう、手遅れだ。_だったら敵がこっちへ攻めに来るまで待った方がいい!」


「…そう…だとしても! 私は…助けに行きたいよ!」


 苺は声を荒らげながら言う。


「苺…! ……理乃?」


 言い返そうとした大斗は理乃に袖を引っ張られて止まる。


「……苺は、何を言っても行く」


「大斗意見は正しいと思うわ。でも、もしかしたらこの声の主はまだ生きているかもしれない…。それにこんなのを聞いておいて、助けないわけにはいかないじゃない」


「…ったく、お人好し共め」


 理乃と林檎の言葉を聞いて大斗はそう言う。しかし表情は嬉しそうだ。こうして、これが罠だとしても助けに行くという選択肢を選んだ。しかし、苺達が留守にしている間だけモンスターの襲来が来ないということはない、必ず何かしら行動を起こすだろう。


「あー、でも、私達が留守にしてる間どうするかなぁ! うーん…」


「…戦える人は…居る」


 悩む鈴に、理乃が答える。そうだ、戦うことが出来る者は少なからず存在する。その人物達に頼むしかない。


「ごめん、皆…私のわがままで危険なところに……」


「何言ってんだ苺、こんな世界…別にどこに居たって危険だから問題ない! それに、人としてその判断は正しいぜ」


「うん、あと状況からして敵はかなり強い。迎え撃つより街から離れてこっちから仕掛けた方が安全かもだしね」


 鈴が言うように、今回の敵…《ポセイドン・ユーベル》は絶大な力を持つ。それも街一つを水没させるほど。現場を見なければどれ程の威力なのかはわからないが、本能的に危険だということはわかる。いずれにせよ、苺達が街を離れている間に何も無いなんてことはほぼ有り得ない。なので戦える者に声をかけておかなくてはならない。


 __最も、戦うか戦わないかは本人次第だが。

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