表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
生まれて初めてゲームをしたらパーティーメンバーが最強すぎる件について!  作者: ゆーしゃエホーマキ
真章前編:Not Game Online

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

150/241

真編・第23話【勝利は誰の手に】

 作戦その一。《アテナ・ユーベル》と《アルテミス・ユーベル》の分断の成功。さらに苺の覚醒により《アルテミス・ユーベル》を討伐することが出来た。


「結構時間が掛かると思ってたけど早めに決着が着いてよかった…!」


「うん! でも、ここからだね…!」


 苺の言う通りここからが重要…失敗は許されない。失敗は即ち、死だ。



* * *



『あはははっっ♪ もっと! もっと私を楽しませてよ!』


「くっ、一撃が重い! 【見切り】ッ!」


 正樹は《アイギス・Medusa Eye》の先端が剣のように鋭い盾による攻撃を【見切り】で防ぐ。


『いやぁ、でも…その見えない腕すっごいねぇ、そんなこと出来るんだねぇ♪』


 大斗の失った右腕の代わりである【幻手】は、大きさを調整した代償でその手に持つ武器までは透明化出来ない。ただ剣が浮いて見えるだけで特に何の力も持たない手だ。


「正樹、理乃。作戦通りにな」


「「了解」」


 小声でそう会話すると、理乃は【創造】でドーム状の壁を造り、中に閉じ篭もる。


『あれぇ? 今更怖くなっちゃった?』


「よそ見すんなよなッ!」


 理乃の行動に少々驚いている様子の《アテナ・ユーベル》に対して大斗はそう言うと【ボルトチャージ】を発動して雷を纏わせた《勇刻ノ剣》を振るう。


『まぁまぁまぁ! 弱虫さんは後で消せばいい。やっぱりまずは美味しそうなものから食べないとね♪』


 大斗の攻撃は案の定《アイギス・Medusa Eye》によって防がれる。《アテナ・ユーベル》は笑みを浮かべると接近してきた大斗に自身の右手を伸ばす。


「……っ!!!」


 その瞬間、大斗は腕が消滅したあの場面がフラッシュバックし、大振りにその手を避ける。


『ふふっ♪ やっぱり怖いんだ、トラウマになっちゃったんだ♪』


「…あぁ、そうだ…正直怖ぇよ、物凄くな。…でもな、いくら怖くても俺は…仲間の足手まといにだけはなりたくねぇ!!!」


『へぇ? じゃあ精々頑張って見せてよね!』


 作戦その二。《アテナ・ユーベル》の注意を引く、成功。


(ここでしくじれば…全員死ぬ…! やるしかねぇんだ!)


 苺達なら必ず《アルテミス・ユーベル》を倒してすぐこっちに来る。そして、最強の一撃を悟らせないように。


「うおおおおおおお!!!!!!」


 大斗は咆哮すると、剣と盾を構えて《アテナ・ユーベル》に攻撃を仕掛ける。


(奴の言葉に耳を貸すな。右手を常に警戒しろ、でもその他の動きも警戒しろ。大振りな攻撃をするな、最小限の動きで最大限の攻撃を出すんだッ!)


 大斗は盾に身を隠しながら、剣で突くようにして攻撃する。基本的にヒットアンドアウェイ戦法だ。6枚の盾と右手を最大限警戒する。


「…よし、《アテナ・ユーベル》は大斗しか見てない……【残刃刀】」


 そして正樹は隠れながら【残刃刀】を発動して、そこら中に刃を残していく。


『あははは♪ 鈍い鈍い! そんなんじゃ私の盾すら破れない!』


「くっ……!」


 大斗を取り囲むように6枚の盾が空中を浮遊する。少しでも動けばその盾はすぐそこを攻撃するだろう。


『ほらほらぁ♪ 触っちゃうぞ〜、消えちゃうぞ〜? 逃げなくていいのかなぁ? あはははっ♪ 逃げられないよねぇ! だって逃がさないようにこうして盾を全部使ってあなたを囲んでるんだもの!』


 その言葉を聞いた大斗は、安心したように息を吐く。


「安心したよ、その盾。もしかしたら6枚以上あるんじゃないかってずっと警戒してたんだ。でも良かった、これで全部なんだな」


『…は? だったら何? 6枚もあればあなた達全員に攻撃が___』


「だったら素直にそうしとけば良かったな、全部俺に使わずにな!」


 その瞬間。正樹が【残刃解放】を発動する。残された刃は一斉に斬撃を発生させ、樹海の木々を次々と倒していく。そして倒れる方向はもちろん、《アテナ・ユーベル》だ。


『っ! アイギス! 私を守__!』


「遅いッ! 【勇刻ノ剣】ッ!」


 大斗が発動したスキル、【勇刻ノ剣】は断続的に何度も発動すると強化されていく、特殊チャージができるスキルだ。大斗が自身の盾に隠れながら攻撃していたのは、《アテナ・ユーベル》の攻撃をガードするためではなく、スキル発動を気付かれないように口元を盾で隠して、最低限の声量で発動していたのだ。


『…めんどくさい事してくれたねッ!』


 これにより、四方八方から押し寄せる倒木を盾で防げば大斗の攻撃が命中し。逆に大斗の攻撃を防げば倒木に押し潰される事になる。


『チッ! アイギス!!!』


 《アテナ・ユーベル》はすぐに命令を出す。ダメージが大きい大斗の攻撃を防ぐ事にしたのだ。


(だと思ったぜ、誰でもダメージがデカいほうを防御したくなるよなっ! だから!)


『はっ!?』


「【日食月刀(にっしょくげっとう)】ッ!」


 さらに背後から正樹が奇襲を仕掛ける。太陽という大きな存在すら喰らう、その一太刀を振るう。6枚の盾は大斗の攻撃を防御するために使っているため、《アテナ・ユーベル》がそれを防御する手段は無い。


『___なんてね♪』


 その言葉を聞いた瞬間、正樹は全身の鳥肌が立つほどの物凄い寒気を感じる。


「っ!?」


 すると、2枚の盾…真ん中に翠色の宝石が埋め込まれた盾が反転し、宝石が強く光を放つ。そして……それを見た正樹は、一瞬で“石化”したのだった。


「何!?」


『油断したね♪ アイギス!』


 石化能力に驚いた大斗の攻撃を、《アテナ・ユーベル》は見逃さず、すかさずカウンターを入れる。


「ぐお…っ!?」


『潰されるのはあなた達だよ!』


 そう言った《アテナ・ユーベル》が6枚の盾で屋根を作った瞬間、遂に周囲の木が倒れた。


(__くそっ、そうだ…アテナのアイギス、あれには見た者を石化させる、メデューサの首が付けられているってどっかで見たな…まさかあの宝石の盾がそれだとは…っ!)


 《アイギス・Medusa Eye》は本来その石化させる能力を持つ、2枚の盾の事なのだ。他の4枚はただの飾りでしかない。

だが、まだ大斗も正樹も死んではいない。大斗はうまく木と木の間の空間に入り込み逃れた。石化して正樹も運良く倒木の餌食にはなっていない。しかし、正樹の意識が消えているようで、大斗の右腕になっていた【幻手】は消えていた。これでは剣を持つことは出来ない。


「………来いよ、戦神…!」


 しかし大斗は剣が持てなくても、そう言った。諦めてなるものか、状況が少し劣勢だが、まだ作戦通りなのだ。


『見つけた♪』


 周囲の倒木を盾で全て退かした《アテナ・ユーベル》は、大斗を見つけるとそう言って右手を伸ばす。


「あの子も石化して、あの見えない手はもう使えない。そしてあなたに反撃する手段はない! 私の勝ち♪」


(あぁ…弱りきった敵に対して油断し、盾でトドメを刺さずに右手を伸ばす……本当に、ありがたいッ!)


 大斗がそう思い、《アテナ・ユーベル》の右手が大斗の額に触れた瞬間、大斗の身体は【絶対回避】により自動的に回避行動を取る。そして回避する過程で落としていた《勇刻ノ剣》を口で咥えると、地を蹴り、その右手を狙って思い切り剣を振った。


『___ほんっっっと、そのスキルウザイよねぇ…』


 《アテナ・ユーベル》は大斗に斬られ、地面に落ちて消滅した自分の右腕を見て言った。その顔に今までの余裕の表情は消えている。特に痛がる様子はなく、《アテナ・ユーベル》は冷たい目で大斗を睨んでいる。


「これでお互い右腕を失ったな」


『もう怒った…あなたはそこで、仲間が死ぬのを見ていればいいよ』


 《アテナ・ユーベル》はそう言うと大斗の足だけを石化させる。


「なっ、ぐっ…!」


 そして《アテナ・ユーベル》は完全に石化している正樹__ではなく、閉じ篭っている理乃の方へ向かった。


『さあ、早く出てきなよ! 弱虫!』


 《アテナ・ユーベル》はそう叫び、壁を盾で破壊した。そして…詠唱が完了した理乃が、その姿を現した。


『!? それは…! このために私の注意を…!』


 ただ1つ、どんな最強の存在でも返り討ちにする可能性があるスキルが存在する。それは___。


「【ラグナロク】……!!!」


 理乃がそれを発動した瞬間、敵のHPが0になるまで攻撃を続ける、チートアタックが開始される。


「お前の負けだ、《アテナ・ユーベル》」


『…何? この攻撃を私が防げないとでも思ってるの?』


「さぁな」


『まぁいいよ、すぐに絶望させてあげるから!』


 すると《アテナ・ユーベル》は出現した様々なモンスター達を6枚の盾で蹂躙していく。


『ほらほらほらぁ! 所詮はこの程度! どんな攻撃を仕掛けても私には1ダメージだって入っちゃいないんだ!』


 【ラグナロク】で出現しているモンスター達のHPが次々に無くなっていく。しかし効果で無限に湧き出てくる。だがいずれ《アテナ・ユーベル》が門を破壊すれば、【ラグナロク】は終了する。


「皆! 大丈夫!?」


「鈴、グッドタイミングだ!」


 ここで、《アルテミス・ユーベル》を倒した苺達が合流する。


『アルテミスが倒された…? まさか本当に…?』


 《アテナ・ユーベル》は、混乱しているのかその場で座り込む。盾はそんな彼女を守るようにモンスターを倒していく。


『……チッ、この雑魚達もウザイ! アイギス、全部壊せ!』


 すると翠色の宝石が埋め込まれた2枚の盾が【ラグナロク】で召喚されたモンスター達に向けて光を放つ。


「皆! その光は見ちゃダメだ!」


 大斗の言葉に、皆はすぐに視界を閉ざす。直後目を閉じていてもわかる、強烈な閃光が一瞬だけ光った。


「っ、す、凄い威力ね…」


 目を開けた林檎は、全てが石化したフィールドを見て言う。


『…光が石化させてるから目を閉じる。当たり前の発想だよね。でも今のでわかったはずだよ、目を閉じていても、あなた達は“光った”ことを認識した。つまりそれは、光を見たということ』


 その言葉を聞いて、全員が身体の違和感に気付く。足など、身体の所々が石化しているのだ。


「う、動けない…!」


『少しずつ痛めつけてあげる』


 《アテナ・ユーベル》はそう言うと6枚の盾を全員の石化した部分に強くぶつける。


「ぐあっっ!?」


『神経までは石化させてないから、痛いよね♪』


 そして《アテナ・ユーベル》は楽しむように、何度も何度も盾をぶつける。強烈な激痛に、全員が悶え苦しむ。その時、理乃が口を開く。


「…ありがとう」


『…は? 意味わかんないんだけど、とうとう頭イカれちゃった?』


 《アテナ・ユーベル》はそう言うと攻撃を止め、理乃に近づき顔を覗き込む。


「……私の行動に…気付かないでいてくれて、腕を大斗に斬られて怒ってくれて、こうして私の近くに来てくれて…本当にありがとう、【創造・魔法】、【ストーンブレイク】…!」


 理乃は【創造】で石化解除魔法を発動すると、続けて【反撃者】を発動させる。


『……っ!?』


「【リベンジカウンター】…ッ!」


 範囲内の味方も含めて、敵に減らされたHPの1.5倍ダメージを与える【リベンジカウンター】。これこそがどんな最強の存在でも返り討ちにする可能性がある、本命のスキル。そして範囲内の味方というのは、【ラグナロク】で召喚されたモンスター達も含まれている。《アテナ・ユーベル》や《アルテミス・ユーベル》に減らされた総HP量はもはや不明だが、この攻撃は過去最高のダメージだろう。


『アイギス…!!!』


 《アテナ・ユーベル》はすぐに6枚の盾でその攻撃を防御する。しかし、苺達一人一人に盾で攻撃していた為、6枚同時に防御することが出来ず、1枚…また1枚と理乃に盾を破壊されていく。


「やあぁぁぁぁ!!!」


 そして、最後の1枚を破壊し、理乃は《アテナ・ユーベル》を斬る。瞬間、爆発とも思える一撃が発生し、苺達も吹き飛ばされないよう倒木にしがみつく。


『こんなっ…こんなことで…!』


「俺達の作戦勝ちだ、《アテナ・ユーベル》」


 注意を引いて、怒らせ、【ラグナロク】をラストアタックと思わせてさらに苺達が合流することで6枚の盾を分散。【ラグナロク】を封じて勝った気になって完全に油断した《アテナ・ユーベル》に真の本命、【リベンジカウンター】を発動させる。

 理乃がカウンター系スキルを使えることは既に知られているので、もしも《アテナ・ユーベル》がこれに気づいて【ラグナロク】で召喚されたモンスターではなく、理乃を真っ先に攻撃していればこの作戦は失敗していた。


『……確かに、私はこの戦いに負けた……でもね、作戦勝ちなのはあなた達じゃない、私達だよ』


「何?」


『ふふっ、これで___』


 《アテナ・ユーベル》は穏やかな笑みを浮かべると、消滅した。


「かはっ! ハァ、ハァ……!」


「正樹君! 良かった、石化ちゃんと解けたね! 大丈夫?」


「苺…さん、うん、倒したんだね…みんな無事で良かった」


 《アテナ・ユーベル》が消滅したことで、全身石化していた正樹も、その効果が切れて身体が元に戻る。そして【リベンジカウンター】の効果で普段より長く硬直状態が続いていた理乃も起き上がる。もしこの攻撃を耐えていたら、鈴がチャージした苺の一撃をすぐに叩き込むつもりだったが、大斗の挑発で予定より多くモンスターを倒したことで《アテナ・ユーベル》のHPを削りきることが出来た。


「理乃、頑張ったな」


「……ん」


 大斗はそう言うと左手で理乃の頭を撫でる。理乃は少し頬を赤らめ、嬉しそうに頷く。


「でも最後のあの言葉…気になるわね」


「うん、でも周りは特に何の変化もない…一体何なんだろう」


 そう言った林檎と鈴だけではなく、その場の全員がその言葉に胸がざわつく。


『__はっ! み、皆さん! 待ってください、今…今倒したのは《アルテミス・ユーベル》と《アテナ・ユーベル》の2人…ですよね?!』


 突然ローゼが焦ったように言う。


「う、うん、そうだね、確かにその2人だよ?」


 困惑しながらも、鈴はそう答える。


『…っ、すみません、すぐに言っておけば良かったですッ、実は…私が感知したモンスターの反応は“3つ”なんです!』


「な、なんだって!? じゃああと1体は!?」


『周囲に反応はありません、少なくとも街に侵入しているということは無いです』


 戦闘中も反応が2つだけだったのでローゼも忘れていたのだろう。しかし最初…《バベルの塔》からの反応は3つだったのだ。つまり。


「どこかに行っちゃったのかな?」


「うん、多分ローゼが感知出来ないくらい離れたどこかに向かったんだと思う…それに《アテナ・ユーベル》のあの言葉……嫌な予感がする」


『私、少し探ってみます』


 もう1体居た十二神は、一体どこへ向かったのだろうか。苺達の胸のざわめきは止まぬ一方だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ