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生まれて初めてゲームをしたらパーティーメンバーが最強すぎる件について!  作者: ゆーしゃエホーマキ
真章前編:Not Game Online

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真編・第22話【鬼神纏う者は果てを射抜く】

成長期なんです。

 翌日、時刻は午前6時半。苺、鈴、林檎、理乃、正樹、大斗はそれぞれ起床し、戦闘準備をする。


『皆さん、おはようございます!』


「おはよーローゼ! 気分は良くなった?」


 ローゼのモーニングコールに、苺がそう言うとローゼは笑顔で言う。


『はい、もう大丈夫です! それよりも、私のメンテナンス中に皆さんが遭遇した人型のモンスター…《アテナ・ユーベル》……恐らく《アルテミス・ユーベル》も同様に人型だと思います』


「なんで人型なんだろう…?」


 正樹が疑問を抱くと、それにローゼが答える。


『予測に過ぎませんが…これまでの皆さんの戦闘データを元にモンスターを再構成…キャラクタークリエイトした。ということでしょうか?』


「俺達の行動が全部把握されてるかもしれないってことか…」


「それでも…やらなきゃ……」


「そうね、その2人を倒したら残りの神様はもうあと少しでしょ? ここで止まってられないわ!」


 そう林檎が言うと、遠くから破壊音が響いてくる。


「…来たみたいだね、皆、準備は?」


「うん、大丈夫だよ鈴!」


 全員の戦闘準備が完了したことを確認すると、ホームから街の外へ出発する。


『では、行きましょう!』



* * *




 ローゼが敵の位置を調べると、街から少し離れた樹海エリアに2人居ることがわかった。


『…1人は確実にわかるのですが、恐らく《アルテミス・ユーベル》は樹海の何処かに潜伏しています。詳しい場所を特定出来ないので注意してください!』


 樹海に入ると、さらに正確な位置を特定しようとしたローゼがそう言う。


「でもなんで街に来ないんだろう? 僕達にとっては人の居ない場所は戦いやすいんだけど…」


 正樹は周囲を警戒しながらそう言って武器を構える。


「モンスターの考えることはよくわかんねぇな…とにかく作戦通り、二手に別れよう」


「そうだね、じゃあそっちは任せ__」


 しかしそう簡単にはいかないものだ。鈴の言葉を遮るように矢が顔のすぐ横を通っていった。


「ッ! 相手にはもう私達の位置がバレてる!?」


『矢の方向と速度から位置を特定しました!』


「じゃあ鈴、苺! 私達はそっちに行くわよ!」


「うん! 皆、必ず勝とうね!」


「ん、了解…」


 そうして二手に別れた苺達は、木々を利用して矢を回避しながら《アルテミス・ユーベル》に接近する。


「居た! やっぱり人型なんだ…林檎! 苺を強化!」


「了解! 【パワーアップ】【スピードアップ】【ディフェンスアップ】【クリティカルアップ】!」


 《アルテミス・ユーベル》を目視した鈴の指示で林檎は苺に強化スキルを使用する。


『来た…私とアテナを分断したのはいい判断。でも私1人なら倒せるなんて思わない方がいい』


 《アルテミス・ユーベル》はそう言うと弓を構えたまま苺に接近する。


「【鬼神化】! 【鬼撃】ッ!」


 こちらに向かってくる《アルテミス・ユーベル》に、【鬼撃】を数発放つが、華麗に回避される。1つも無駄な動きがなく、素早く動く《アルテミス・ユーベル》はすぐに苺の目の前に接近すると、矢を放つ。


「くぅっ!」


 放たれた矢は苺に接触した瞬間破裂し、微量だがダメージを与える。そして《アルテミス・ユーベル》は高くジャンプして苺の背後に回るともう1発矢を放ち攻撃する。


「【旋風】ッ!」


『遅い』


 苺の反撃も回避し、少し離れた位置にいる林檎に向けて弓を構える。


「【クイックショット】!」


『……っ』


 鈴の【クイックショット】が《アルテミス・ユーベル》の手の甲に当たり、攻撃を阻止するとその隙に林檎は《スケルトン》と《ゴブリン》を召喚する。


『ギャッギャ!』


 小さい身体の《ゴブリン》は樹海を素早く移動し、短剣で《アルテミス・ユーベル》の足を切りつける。


『…ふん!』


『ギャアッ!?』


 《アルテミス・ユーベル》は矢を《ゴブリン》に突き刺して攻撃し、片手剣と盾を持つ《スケルトン》に向けて爆発性の矢を放つ。


「複数人との戦闘に慣れてる…!」


『【テレポート】』


 そう言った鈴の背後に【テレポート】で移動した《アルテミス・ユーベル》は、鈴の回し蹴りを予測していたかのように回避すると3本の矢を同時に放つ。


「はあっ!」


 鈴はその矢を短剣で弾き防ぐが、既に移動して鈴の視界から消えた《アルテミス・ユーベル》は【フルチャージ】した矢を放つ。


「くぁっ! こ、これ…毒…?」


 毒が塗られていた矢を受けた鈴は、毒によるダメージを受けていく。


「鈴! 【ポイズンヒール】!」


 すぐさま林檎が鈴の毒を解除する。が、そこを狙って《アルテミス・ユーベル》は【サウザンドアロー】を発動する。


「林檎っ!」


「林檎ちゃん!!! 【真閻解】、【一閃】ッ!」


『ふっ__と、なんであなた達が今までのモンスターを倒せていたのか不思議……生きていることが奇跡に思える、こんなに弱いのに』


「くっ、【ヒール】!」


 林檎は自身のHPを回復させながら思考を巡らせる。多数相手にしても余裕で戦う《アルテミス・ユーベル》、攻略法は……。


「動きを封じて一気に攻めるわよ!!! 【全召喚】! 【重拘束】!」


 回復を終えた林檎は、自分の召喚出来るモンスター全てを召喚し、《ニュートン》による【重拘束】で《アルテミス・ユーベル》の動きを止める。そして召喚されたモンスター達は、動けなくなった《アルテミス・ユーベル》に群がり攻撃する。


『【ムーンライトアロー】』


 しかし空から光の矢が放たれたことで、召喚されたモンスターの大半が倒されてしまう。


「【クリンゲル・シックザール】!」


 【重拘束】の効果が切れた瞬間、すかさず鈴が【クリンゲル・シックザール】で《アルテミス・ユーベル》を麻痺させる。


「【フルチャージ】、【オーバーチャージ】、【リミットブレイク・チャージ】! 【アイス・エイジ】ッ!」


 さらに【アイス・エイジ】で《アルテミス・ユーベル》を凍結させた鈴は、苺とバトンタッチする。


「【真・閻解ノ燈太刀・鬼神纏・閻魔】ッ!!!」


『ッ、くっ……』


 苺の攻撃を喰らってもなお、《アルテミス・ユーベル》はまだ倒れない。しかしかなりダメージを受けたためか、《アルテミス・ユーベル》はその場に膝をつく。


『正直…私はサポート向きなので防御力は無いんですよね……めんどうな設定です、というか凄い疲れました、もうアテナに任せようかな……』


「そうしてくれるとありがたいんだけどなー」


 鈴はそう言いながら《アルテミス・ユーベル》に向けて銃を構える。


『まあそういう訳にもいかないんですけどね』


 《アルテミス・ユーベル》はそう言うと立ち上がり矢を引く。足元には青白い魔法陣が展開され、矢の先端には黄色い魔法陣が展開される。


「ヤバそうなの来るわよ!」


「林檎、苺! 散開!」


 ただならぬ圧に苺と鈴と林檎は散るようにその場から離れる。《アルテミス・ユーベル》は気にせず空に弓を向けると、その矢を放った。一筋の光が高く高く飛んで行き、雲を突き抜ける。


 光が見えなくなったその瞬間。突如周囲の空気が震え、樹海の木々が次々となぎ倒されていくほど強い爆発が起こる。


「うぐぅぅーー! 飛ばされるぅーーー!!!」


 そう言って太めの木にしがみついている苺だが、今にも飛ばされてしまいそうだ。


「一体何を__って、な、何あれ…」


 鈴が空を見上げると、爆発の光と思っていたものが円状になり大きな輪となると、空の色とは全く違う、暗い…まるで宇宙のようなものが見える。


「あ、あれは…隕石っ!?」


 そう、見えていたのは宇宙のようなものではない。正真正銘、宇宙である。《アルテミス・ユーベル》は輪の部分だけ地面と空の距離を縮め、その周辺に漂う固体物質を呼び寄せたのだ。

 そして数百もの隕石は激しく燃えながら地面に直撃していく。


「うわああああああ!?」


 苺は叫びながら走り、隕石から逃げ回る。


「ど、どうすんのよこれ!」


「どうするって、倒すしかないでしょ! あーでもこれじゃあ近づけないし!」


 降り注ぐ隕石を操っているのか、《アルテミス・ユーベル》はさっきの場所から動かずにいた。無防備ではあるが、隕石に邪魔をされ近づくことが出来ない。さらにここは樹海…木の葉で空がよく見えないので隕石をほぼ勘で避けなければならない。


「一か八か……! やるしかない! 【解放者(リベレーター)】!」


 走りながら苺は【解放者】を発動する。それにより隕石を【フルカウンター】で防いでいく。


「【真・閻解ノ燈太刀・氷華纏・天氷柱(アマノツララ)】!」


 《アルテミス・ユーベル》に向けて放った【真・閻解ノ燈太刀・氷華纏・天氷柱】で、《アルテミス・ユーベル》は空から降ってきた巨大な氷柱に囲まれ完全に逃げ道を失う。


「苺! 【バウンド】!」


「てやぁぁぁあ!!!」


『くっ…!』


 鈴の【バウンド】を使い飛び上がった苺は、上から《アルテミス・ユーベル》を目視すると【真・閻解ノ燈太刀・鬼神纏・閻魔】をチャージする。


『…まだ、やられる訳にはいかない』


 《アルテミス・ユーベル》はそう言うと降り注ぐ隕石を一点に集中させる。


「なっ! 自分ごと苺を隕石で潰すつもり!?」


「いや、《アルテミス・ユーベル》は【テレポート】が使える! 苺、逃げて!」


「う、うん!」


 そう言われて苺は【真・閻解ノ燈太刀・鬼神纏・閻魔】を解除する。


『【テレポート】』


 苺がチャージを解除したその瞬間、《アルテミス・ユーベル》は【テレポート】で空中にいる苺の背後に移動する。


「っ! 苺っっ!!!」


『【ムーンライトレイ】』


 そう言った《アルテミス・ユーベル》の手には、白く光る槍のようなものが作られ、一直線に放たれる。


「…っ! ぁ…ぐっ!」


 【解放者】の【フルカウンター】が発動せず、【ムーンライトレイ】は苺の腹部を貫通して、消えることなくそのまま地面に突き刺さった。


「ま、まずい! あのままだと隕石に!」


『そう思った瞬間に行動しなきゃね』


 さらに《アルテミス・ユーベル》は林檎に麻痺毒を塗った矢を放つことで、林檎を麻痺させる。


「林檎っ! 【クイックスラッシュ】ッ!」


『そんなの当たんないよ』


 《アルテミス・ユーベル》はそう言うと、鈴に直接麻痺毒を塗った矢を突き刺す。


「く…あ……苺、だめ……逃げて…!」


 痺れた身体で必死に言うが、苺に突き刺さった【ムーンライトレイ】はまだ消えていない。苺に集中している隕石も、もうすぐで衝突してしまう。


(死…ねない…! こんな、ところで…!!!)


 苺は歯を食いしばり、【ムーンライトレイ】を引っこ抜こうと力を込める。


『無駄だよ、抜けないように地面の深くまで突き刺したんだから、その程度の力で抜けるわけ__』


 その瞬間、『パチッ』と火花が散る音がする。


「う…おおおおおおおおッ!!!!!」


『うそ…!?』


 苺の咆哮に反応するように、火花が燃え、豪炎となる。


「こんな…ところで! 死ぬわけにはいかないんだ!!!」


 そう言うと苺は、【ムーンライトレイ】を砕く。砕かれた【ムーンライトレイ】は消滅し、苺は動けるようになる…が、貫かれた腹部はぽっかりと穴が空いており、とても立つことは出来ない。

 しかし、燃え盛る炎が苺を包み込む。


『「【真閻解・鬼神纏】」』


 そう苺と、鬼神閻魔の声が聞こえた瞬間、包んでいた炎が《鬼神ノ太刀・閻解》に吸収される。


『《鬼神ノ太刀・真閻》へ派生が完了しました。』


 《鬼神ノ太刀》が派生進化し、炎から解放された苺の姿は少し変化していた。


 【真閻解】と同じく角は一角。姿も紅色だが、鬼神閻魔のように所々に金色の模様が浮かび上がっている。


『【真閻解】とは我の力を全て解放する』


「そしてさらに、あなた自身を纏う」


 今までは鬼神の力を使っていたが、【真閻解・鬼神纏】により苺は鬼神そのものを宿したのだ。しかし鬼神を宿したとはいえ、この大量の隕石を防げるだろうか。……いや、絶対に防いでみせる。


「【鬼神武双(きじんぶそう)烈火(れっか)】ッ!」


 二連続攻撃スキル【鬼神武双・烈火】__蓄積した炎を瞬間放出することで素早く攻撃することが出来る。そのスキルを苺は連続で30回発動する。


「ハァァァアアアアーーッッ!!!」


 苺は隕石を次々と破壊し、回避する。《アルテミス・ユーベル》はその光景に驚愕していた。


『なぜ…? この短時間でなぜそこまで進化するの…? 有り得ない、その進化スピードは……』


「有り得なくない、人は進化し続ける! 毎日成長しているんだ! しなくちゃいけないんだ!」


 全ての隕石を破壊した苺はそう言うと《果ての弓》を装備し、構える。


『羨ましい、本当に……【アルテミス・アロウ】、【フルチャージ】、【オーバーチャージ】、【リミットブレイクチャージ】……』


 そう言うと《アルテミス・ユーベル》は弓を構え、【アルテミス・アロウ】とチャージスキルを発動する。引く矢の先端に魔法陣が展開されると空が夜に変わり、巨大な月が出現する。


「…! 【ファーディスト・アロウ】…!」


 それを見て苺は、覚醒した事で得た《果ての弓》専用スキル。【ファーディスト・アロウ】を発動する。同じく引く矢の先端に魔法陣が展開されると、苺の瞳が銀色に発光する。


「『【リリース・ショット】__!!!』」


 ほぼ同時に放たれた二矢は、空中で接触するかしないかのギリギリのところで通り過ぎ、それぞれ狙った場所へ向かう。


「【真・閻解ノ燈太刀・激流纏・静水ノ刃】ッ!」


 苺は続けてスキルを発動すると、【アルテミス・アロウ】を受け流す。そして《アルテミス・ユーベル》は防御手段を持たない為か、身体を捻って【ファーディスト・アロウ】の回避を試みる。しかしその果てまで到達する一矢は接触するはずだった場所に魔法陣を展開すると、方向を変えて《アルテミス・ユーベル》の心臓部に深く刺さる。


『……っ、まさか絶対必中能力があるとは…油断してた……あとは、アテナに任せる』


 《アルテミス・ユーベル》はそれだけ言うと、微笑みながら消滅した。


「…よしっ! 鈴、林檎ちゃん! 休んでる暇はないよね! 早く合流しよう!」


 苺はそう言うと理乃達の元へ走る。


「えぇ、そうね、あっちもうまくやってるといいけど…!」


「大丈夫だよ林檎、絶対に!」


 林檎と鈴はそう言うと、苺を追いかけるように走った。


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