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生まれて初めてゲームをしたらパーティーメンバーが最強すぎる件について!  作者: ゆーしゃエホーマキ
真章前編:Not Game Online

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真編・第16話【ココロノツルギ】

「苺!? 苺っ! 返事して! ねぇ……ねぇってば!」


 とてつもなく強い光に包まれたと思ったら、突然傍にいた苺が力無く倒れる。鈴は慌てて苺を受け止めると、苺の身体を揺すり呼び掛ける。しかし苺は目蓋を閉じて脱力している。見た所、気を失い眠っているだけのようだ。


「どうなって…っ、とりあえず俺達はあいつの注意を引くぞ! …って、こいつも動かない?」


 大斗の言葉に、全員が《ヘファイストス・ユーベル》を見る。

 《ヘファイストス・ユーベル》はただその場に立っているだけで、攻撃する素振りもない。


「……まさか…【一閃】ッ!」


 正樹がそう言って、《ヘファイストス・ユーベル》に【一閃】を発動して攻撃する。すると【一閃】は弾かれたかのように、《ヘファイストス・ユーベル》に当たると消えていった。そして、《ヘファイストス・ユーベル》にダメージはない。


「何かわかったの…?」


 そう林檎が不安そうな目で正樹に聞いてくる。


「……多分これは、精神攻撃…なんじゃないかな、そして精神攻撃を受けた対象との一騎打ちでしかダメージが通らない感じの」


「精神…? んでもよ、ヘファイストスって言ったら炎と鍛冶の神様だろ? 精神に関することなんて何もないぞ?」


 正樹の推測に、大斗が疑問をぶつける。


「いや、鍛冶師は魂を込めて鉄を打つとかよく聞くし、無関係ではないかも……それにユーベル化しているから、不可能なことも可能なのかもしれない」


「ということは……苺が精神攻撃を何とか出来れば、戻ってくる…目が覚めるのね?」


「ただの推測だけどね……でもどのみち敵もあの状態じゃ僕達は信じて待つことしか出来ない」


 敵を目の前に、鈴達は武器を下ろす。正直それはとても不安になる。いつ起きて攻撃してくるかわからないのだ。

 精神的に今一番不安定なのは苺だろう、敵もそれを行動からわかっていた。しかし、彼女なら必ず戻ってくるだろうと、鈴達は信じて待つことを選んだ。


「信じてるからね、苺…!」


 苺の手を強く握って、そう鈴は言った。




* * *




「……っ?」


 色の無い…真っ白な空間で、苺は目を覚ます。…いや、覚めたのかは疑問だが。この空間は【真閻解】解放の時に鬼神閻魔と会って話した場所と酷似している。


「ここ…は? 鈴…? 皆……居ない」


 しかしあの状況があってから、1人になるのはツラい。そして、心細くなる苺の前に何処からともなく《ヘファイストス・ユーベル》が現れる。


『ここは お前の 精神世界』


「精神……」


 無言だった《ヘファイストス・ユーベル》は精神世界の中だからなのか、カタコトのようにだが語りかける。


「私は、どうすれば……?」


『簡単だ 己の力を 示せ』


 己の力…しかし、今の苺に武器も防具もアイテムも無い。


『人の力の 元は 精神 心の強さ… 我は 強い魂を 欲する』


「魂を…? で、でもなんで私なんですか?」


『…… 我 邪悪に なった しかし 我は 鍛冶と炎の神 それ以外には 何も出来ぬ…

  …お前は 我と似ている 火を使い… 鉄を打つ。 そして 我は お前の 潜在能力を 魂を 戴く』


「私の魂……お、お断りします…!」


 状況がうまく理解できないが、苺はこのままだと魂を持っていかれそうなのでお断りする。


『ああ だから ここで我を討て そうすることが 出来れば 魂は 諦めよう』


 《ヘファイストス・ユーベル》はそう言うと刀、《鬼神ノ太刀・閻魂》を虚無より取り出し、苺に投げる。

 苺がそれを掴むと、たちまち苺は《霧雨》などの、装備に身を包む。


『ここは お前の 精神世界 好きに 暴れろ そして 見せてみろ』


 《ヘファイストス・ユーベル》はそれだけ言うと、また無言になり、苺を取り囲むように剣や槍などを出現させる。


(精神世界…つまり夢みたいなもの……そして今この人は好きに暴れろと言った…ということは…!)


 苺は思考を巡らせ、軽く身を落とすようにしゃがむと足に力を入れ、ダッシュする。そしてそのスピードは【アクセルブースト】を発動した時の鈴とほとんど同じスピードだった。


『………』


「【鬼神化・真閻解】、【大大大閻解】ーーッ!!」


 苺は《鬼神ノ太刀・閻解》の精神世界バージョン、《鬼神ノ太刀・閻魂》を大きく振りかぶると、3倍【大閻解】を発動する。もはや刀身の大きさは苺がさらに小さく見えるほどになるが、その重さは通常と変わりなかった。なので苺は少々扱いづらいが、それを横に振り、遠心力で回転する。


『……!』


 しかし《ヘファイストス・ユーベル》はそれをジャンプして回避し、炎を生み出し遠心力で止まれない苺に放つ。


「ッ! 【大閻解】解除! 【絶対回避】ッ!」


 苺はすぐにそれに反応し、《鬼神ノ太刀・閻魂》を元の大きさに戻すと【絶対回避】で炎を避ける。


「この世界は何だって出来る! なら…これはどうだ! 【真・絶解ノ溟太刀・激流纏・高霎】…37連ッ!」


 いつかの《ベリードール・ユーベル》が使っていた技。【真絶解】のスキルではあるが、夢のようなこの場所、精神世界でそれは関係ない。《ヘファイストス・ユーベル》は苺の技術と記憶、その全てを出し切らないと倒せない。

 37連続発動した【真・絶解ノ溟太刀・激流纏・高霎】により、《ヘファイストス・ユーベル》は身体の至ることに切り傷が付く。しかし《ヘファイストス・ユーベル》は仁王立ちのままそれを受け切り、見覚えのある剣や槍、そして斧、金槌、刀とあらゆる武器を出現させる。


『…我が打った 渾身の 武器達… それを 打ち破れるか?』


「っ……! 【正宗ノ技】!」


 苺はそう言うと【正宗ノ技】で攻撃力を2倍に増加させ、反撃の隙を探る。

 出現した武器は、ゆっくり動き出したかと思えば急加速し、苺に向かってくる。


「ふっ……!」


 苺は敵から目を逸らさずに、それを最小限の動きで受け流す。


「ここだ! 【一閃】ッ!!!」


 全て一定の速度で向かってくるのでわかりやすかった。苺は出現している武器が無くなり、新たに武器が出現する一瞬の隙に【一閃】を放つと、その光に隠れるように、それを追い掛けるように走る。

 その【一閃】は向かってくる武器を弾き、苺に接触させない盾となっていて、苺は《ヘファイストス・ユーベル》に近付くことに成功した。


「ッ! やああああーーーッ!!!」


 苺は気を込めて《ヘファイストス・ユーベル》を一刀両断する。しかし、《ヘファイストス・ユーベル》はなお、その様子を仁王立ちで見て、両断された身体を当たり前のように再生する。


『この場所に入ってから 今まで お前の奥底の 力を 探っていた…』


 そう、《ヘファイストス・ユーベル》自身が動かなかったのは苺の精神の底を見ていたからだ。武器を出し、飛ばすだけで対処し、無言だったのもこちらに集中していたからだ。


『これからはお前の真の力を見せてもらおう』


 《ヘファイストス・ユーベル》はそう言うと、何の装飾もない…全て水で出来たような質感の真っ青な1つの剣を虚無から取り出し、地面に突き立て、静かに…しかし重々しく、強く声を発する。


『【リベレーション】』と___。

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