真編・第11話【七瀬大斗はお怒りのようです】
お久しぶり、ほのぼの。
「…………」
((し…視線が怖い!!!))
《ゼラニウム》のホームにて、床に正座させられている苺と鈴はただじっと睨んでいる大斗の目を直視できなかった。
しかし、大斗の大いに気持ちもわかる。だからこそ罰を受けるのだ。
「…俺も止めなかったのが悪かった、でも、一人だけで突っ込んでいくとはどういうことだ?」
「「すみませんっ!!!」」
大斗がやっと口を開くと、苺と鈴は正座の状態から素早く土下座をする。
「謝って欲しいんじゃないんだ、ただ、よぉーーく言って置かなきゃなーと思ってな?」
「「は、はひ……」」
睨み付ける大斗の目は恐ろしいが、それは怒りというよりは、仲間を心配する目だ。
「苺、確かにお前は強い、でももっと仲間を頼れ、一人で勝手に行動するんじゃねぇ」
「うん…ごめんね」
「んでもって鈴、お前はもうちょっと冷静になれ、つっても俺も結構ギリギリだったんだけどな、お前もちゃんと考えれば踏み留まれたはずだ」
「そ、そうだね…ごめん」
しゅん、となっている二人を見て大斗は大きく息を吐くと、自分の頬を『バシンッ!』と強く叩く。
「っ、いいか! この世界では死ぬんだ! ゲームみたいだがここは全然ゲームなんかじゃねぇ! その事は苺の件でよくわかったはずだ! もうこんな無茶すんな!!! ……でも、まぁ、生きてるだけでも良かった」
そう強く言った大斗だが、最後は優しい笑顔でそう言った。
苺の腕はしっかり治療され、今はもうなんともない。驚きの回復力だが、それにも限度がある。例えば貫通されて一部分だけを失った場合は復元される可能性がある。しかし身体の部位と部位が切り離された場合は戻ることはない。まだよくわかっていないが、手足が無くなるというような大怪我は復元されないのだ。そして、脳や心臓にダメージがあった場合は当たり前ではあるが復元される前に死に至る。
「今度は俺がちゃんとガードしてやっからな、んじゃあ説教は終わりだ! もう立っていいぞ」
大斗がそう言って苺と鈴を立たせる。
「うん! …うが!」
「あ、足が…痺れ…!」
長時間正座させられていたので、二人は足が痺れてしまう。そんな二人に大斗はニッコリ笑いかけながら言う。
「計画通り、このくらいの罰は受けてもらうぜ~」
「ま、待て、ひ、大斗ぉぉ~…!」
「う、動けにゃい……」
床で痺れに悶えている苺と鈴を見届けながら大斗は手をひらひらと振ってそう言うとどこかへ行ってしまった。
「ぬぅ~ん………」
「え、あ、あの…理乃…さん? な、なんで私の足をじっと見ているんですかね?」
そしてどこからともなく現れた理乃が鈴の痺れた足をじっと見つめているのに、鈴は震え声で聞く。
「……私からも…お仕置き」
そう言って理乃は鈴の足を、それも足の裏をツンとつついた。
「っ、ちょ…ぅ、くっ、はぁ…! やめっ、理乃様やめてくだせぇ!」
「…苺も」
「え!? ま、待って理乃ちゃ…んきゃぁぁあ!?」
さらに苺の足もつつくと、理乃は満足した顔で去っていった。
「ぅ、つぅぅぅ…! よ、余韻がぁあ!」
「鈴大丈夫?」
「回復はや!? っ、くはぁぁ!? しまったぁぁ~……ぁあ!!!」
苺の足の痺れの回復スピードに驚いた鈴は、驚いた拍子に自分の右足と左足をツンとぶつけてしまい、さらに痺れを増加させた。
* * *
「え、えっとぉぉ? 林檎さんと正樹さん? お二人は何をしにここへ?」
痺れがやっと引いた鈴と苺のところへ、林檎と正樹が現れた。もう、嫌な予感しかしない。
「悪いけど私達からも罰を受けてもらうわ」
「ご、ごめんね苺さん、ローゼから『私の分もお願いします!』って言われちゃって」
林檎と正樹の二人は、そう言うと林檎は《白狼》と《黒狼》を召喚、正樹は【幻手】を発動する。
「さあ! 悶え苦しみなさい!」
そうして始まりましたくすぐりの刑。結局全員から罰を受けてしまった。
「ひゃ、ぷっ…くくっ……ま、正樹君、やめ、やめへぇ!」
【幻手】でコチョコチョと苺を端末から聞こえるローゼの指示に従って無心になってくすぐる正樹に対して、林檎はノリノリだった。
「あっ、ちょ、くあっ!」
「ほらほら《白狼》! もっとよ!」
鈴は《白狼》と《黒狼》に足の裏をペロペロと舐められていた。
「なんで、なんで足ばっかり! ふっ、うぅぅ~!!!」
「ふふ、なら、あなたの弱点を狙いましょう」
林檎はそう言うと《白狼》と《黒狼》に指示をする。すると2匹は鈴の首元に顔を近付ける。
「へ、あっ、ちょっと、ちょっと待って! それだけはやめっ……んはぁぁぁああ……!」
「ふっふっふ…首が弱点なのは知ってるのよー!」
「正樹君やめへぇぇ! ぷくっ、あははは!!! く、くるひい!」
『バウム! 次はお腹と脇です!』
「は、はい」
そして、くすぐりの刑はそれから10分続いた……。
* * *
「……で、やり過ぎたと」
「「『すみませんでした……』」」
「ん、ごめんなさい」
帰ってきた大斗は、林檎、正樹、理乃を正座させてその惨状を見て苦笑いをした。ローゼも調子に乗ってしまったということで一緒に謝る。
「苺はスゲー息上がってるし、鈴は…なんか痙攣してるけど大丈夫か?」
「…っ………っ…っ!」
鈴のほうは声をかけても返事がない。
「まぁ、うん、とりあえず祝勝会だ! いろいろ買ってきたぞー!」
「わー! いっぱいあるね!」
「「回復はやっ!?」」
一瞬で回復した苺に、林檎と大斗の声が重なった。
その後しばらくして鈴も起き上がり、その日は祝勝会という名のパーティーで盛り上がった。




