真編・第9話【協力プレイ】
「理乃さん!」
「ん、【創造・魔法】、【エクスプロージョンΩ】……」
正樹の攻撃で一瞬怯んだ《デュオニュソス・ユーベル》に、理乃が【エクスプロージョンΩ】を放つ。この【エクスプロージョン】は特殊で、さらに派生させたものになる。“Ω”が付く場合は最終派生を意味する。つまりは最大威力の【エクスプロージョン】となるので、その破壊力は凄まじい。
『△△!●?△☆!□??!』
《デュオニュソス・ユーベル》のうねうねとした触手だらけの身体の右上半身が【エクスプロージョンΩ】によって焼失する。
頭の半分もほとんど無くなっているのでかなりダメージを与えた。ただやはり体内にはガスが充満しているようで、一気に噴射される。だが、ここで街の人達が動く。
「【ウィンド】!」
「【ウィンド】!」
「【ウィンド】!」
立て続けに初級の風魔法スキル、【ウィンド】が発動される。1つでは微風程度しか無理だが、塵も積もれば山となる…その風は嵐のようになってガスを打ち消した。
「あ、ありがとうございますっ! 【幻手・現ノ呪腕】!」
そして正樹が発動した【幻手・現ノ呪腕】は今までほぼ不可視状態だった【幻手】がハッキリ見える代わりに、正樹を中心に2対3、合計6体の黒い【幻手】を顕現する。今度は武器を持たせることは不要で、専用の刀を持つ。その刀の銘が《真夜刀・幻月》。その専用スキル、【幻月】は2つに成ることが出来る。
「【幻月】っ!」
【幻月】を発動した正樹は二人になり、【幻手・現ノ呪腕】も12体になる。
「せいッ!!」
正樹の動きに連動して【幻手・現ノ呪腕】も動き、《デュオニュソス・ユーベル》の触手を断ち斬っていく。触手からガスが出る…かと思いきや、先程の【エクスプロージョンΩ】の時に全て出し切ったらしく、何も出てこなかった。
「【創造・剣】、《レーヴァテイン》……【創造・魔法】、【フルチャージ】」
正樹が触手を全て斬り終わろうとしている頃、理乃は《レーヴァテイン》を創り出し、さらに【フルチャージ】を発動する。
「理乃さん! ハァッ!」
「…! 【レーヴァテイン・フィニッシュ】……!」
正樹が触手を全て斬り落とし、理乃の元に《デュオニュソス・ユーベル》をブッ飛ばす。そして発動された【レーヴァテイン・フィニッシュ】により、《デュオニュソス・ユーベル》は跡形もなく焼かれ、消滅した。
* * *
そして大斗と林檎による《デメテル・ユーベル》戦に視点は変わる。《デメテル・ユーベル》は石像のようなモンスターで、自身を囲むように岩が浮遊しているため遠距離からの攻撃は当たりづらいのが特徴だ。
「【ニーズヘッグ】! っと、召喚してばっかじゃ身体が鈍るわね…! 【スピードアップ】っ!」
林檎は《ニーズヘッグ》を召喚すると、【スピードアップ】で自身の俊敏力を上昇させる。近付けば攻撃を受けやすいのは確かだが、今は大斗の【オートガード】があるので多少は平気なはずだ。
「【クイックスラッシュ】! っ!? つぅ、かったぁぁ!? 何よこれ! 硬すぎじゃない!?」
【クイックスラッシュ】で《デメテル・ユーベル》を攻撃した林檎だが、その刃は弾かれてしまう。防御力が非常に高いようだ。
「なるべく一撃で終わらせるか…林檎! 俺を上へ!」
「わかったわ! 【雷鳥】! 大斗をお願い!」
『クオッ!』
林檎は《雷鳥》という雷を纏う巨大な鳥を召喚する。《雷鳥》の背に大斗が乗ると、雷の如く天へ飛翔する。
「ちょっと心配だったけどビリッと来ないんだな、うし、ここでいいぞ!」
『クオォ!』
《雷鳥》は上空で静止すると、大斗は高所の恐怖を深呼吸をして心を落ち着かせる。
「……っしゃあ!!! お前も来い!」
『クオオオオッ!』
大斗は《雷鳥》にそう言うと《デメテル・ユーベル》目掛けて飛び降りる。《雷鳥》は身体のバチバチと雷を強くさせながら降下する。
「喰らえ! 俺の一撃! 【真技・必殺剣】ッ!!!」
『クァァアアアアッ!!!』
【真技・必殺剣】は名の通り必殺と思えるほどの超高威力の一撃だ。リキャストタイムが24時間もあるが、弱点に当たればさらにダメージを5倍にする。
《雷鳥》は大きく咆哮すると、大斗より先に急降下する。その様はもはや落雷その物だ。
『■■▼◎■■°″■◆!!!!!!』
《デメテル・ユーベル》は地震を起こしながら岩を《雷鳥》に飛ばすが周囲に出現させた雷によって打ち砕かれ、直後、《雷鳥》は急降下を利用した捨て身の体当たりをかまし、激しく雷を連続で落とすと消滅する。
「っ! サンキュー戦友!」
しかし雷耐性があったらしく、ダメージこそそこまで高くなかった。だが捨て身の攻撃で《デメテル・ユーベル》の身体の一部が崩れ、心臓らしき赤いコアが剥き出しになっていた。
「そこかッ! どぉぉりゃあああああああああッッ!!!」
大斗も誤れば落下死してしまう高さだが。正確にコアに【真技・必殺剣】をぶつける。その威力は凄いもので、コアを一瞬で砕くと地面を大きく割れてしまった。
「ッッ! 腕に負荷が…ッ!」
高所からの落下を利用した攻撃だ、当然その腕もダメージを負うが大斗は空中でうまく体勢を整え着地する。
『●△▅……っ』
「ふぅ…っと、やり過ぎちまったか。にしても腕痛てぇな…」
大斗はそう言って剣を仕舞うと辺りの状況を見て頭を掻く。
「す、凄いわ大斗!」
「いや、お前が居なかったらさすがに威力不足だった、ありがとよ」
林檎と大斗、そして正樹と理乃は互いにハイタッチをしてとりあえず勝利を喜んだ。
さあ、後は《ヘルメス・ユーベル》のみだ。
ハイタッチした大斗と林檎↓
大斗「痛っっってぇえええええ!!!?」
林檎「大斗!? だ、大丈夫!?」
大斗「っ、っっ…!」
大丈夫じゃなかった。




