真編・第8話【三神侵攻防衛戦】
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苺がお風呂から上がり、もう寝ようとしていたその時。街中に警報がうるさく鳴り響く。
『皆さん! 敵が現れたようです!』
「え、こんな夜中にっ!」
苺はすぐにパジャマから着替え《霧雨》を装備し、《鬼神ノ太刀》を持って外へ走る。
皆も準備をすると門へ向かう。全員が到着する頃には、敵影がハッキリとわかるくらいまで近付いていた。
「さ……3体も!? 多すぎじゃない!?」
林檎が敵を見て驚く。敵は大地の神、《デメテル・ユーベル》と旅人の守護神、《ヘルメス・ユーベル》、さらに酩酊の神、《ディオニュソス・ユーベル》の3体だ。
前回の《アプロディーテ・ユーベル》戦は苦戦とまではいかなかったが、3体となると難しい。怪我の1つは覚悟しなくてはならない。
「まずはどいつからやる!」
大斗の言葉に、鈴は敵をよく観察する。
「防御力低そうな《ヘルメス・ユーベル》……と言いたいところだけど、あの変な形した《ディオニュソス・ユーベル》が先かな!」
「ん……じゃあ…【創造・剣】《魔剣グラム》……【グラム・フィニッシュ】……!」
鈴の言葉を聞いた理乃が、【グラム・フィニッシュ】を発動して《デメテル・ユーベル》と《ヘルメス・ユーベル》を黒い鎖で拘束する。
「私が、押さえている間に……!」
「了解! 【アクセルブースト】ッ!」
鈴はナイフを2本持ち、【アクセルブースト】を発動して《ディオニュソス・ユーベル》に接近する。
「【クイックスラッシュ】! 【クロスフレイム】ッ!」
鈴が先手を取り、【クイックスラッシュ】で《ディオニュソス・ユーベル》の触手のような脚を攻撃し、続けてそれを踏み台にすると飛び上がり【クロスフレイム】で腕を斬り落とす。
「…っ!? な、なにこれ、ガス!?」
すると攻撃して傷付いた箇所から紫と白が混じったような気味が悪い色をした煙が噴出する。鈴はそのガスを吸ってしまうが、HPに変動はない。
「鈴! 大丈夫?!」
「うっ…な、めまいが……吐き気もする……」
鈴が受けたガスの攻撃はめまいや頭痛、吐き気などを引き起こす。簡単に言うと“酔わせる”のだ。
「はぁ…はぁ……うぐっ、ごめん…一旦…戦線離脱……かな」
「うん、鈴は休んでて! すぐ終わらせるから! 【真閻解】ッ!」
苺は鈴を寝かせると【真閻解】を発動して敵に突っ込んでいく。
「正樹君! 大斗君! そっちお願い!」
「おまっ、1人で2体相手にする気か!?」
大斗が《ディオニュソス・ユーベル》の攻撃を防御しながら言う。
「苺さん! 大丈夫なんだね!」
「うん、全っっ然大丈夫!!」
苺はそう笑顔で言うと、理乃が押さえている《デメテル・ユーベル》と《ヘルメス・ユーベル》を相手にする。
「苺……!」
「理乃ちゃん、すぐ終わらせるからもう少し待ってて!」
苺は理乃にそう言うと、刀を構えて炎を纏わせる。
「86連【鬼神斬り】ッ!!!」
苺は《デメテル・ユーベル》に向けて、86連の【鬼神斬り】をお見舞いする。
《デメテル・ユーベル》のHPは一気に減っていくが、HPが多いのか倒しきれない。
「【燈火燦然】ッ!」
さらに続けて苺は【燈火燦然】を発動。無数の火の玉を飛ばす。
「苺……もう、効果が切れる……!」
「ッ! 【大閻解】ッ! ハァアアアアッ!!!」
【グラム・フィニッシュ】の効果時間が迫り、苺は【大閻解】をし、《ヘルメス・ユーベル》を叩き斬ろうとする。だが。
「え、消えた!?」
《ヘルメス・ユーベル》は接触する直前で姿を消す。しかし、苺が油断した瞬間、《ヘルメス・ユーベル》は苺の横に現れお返しと言わんばかりの無数の光の矢を放つ。
「っ! …ぐあああッ!?」
その矢を【絶対回避】をノーボイスで発動したことで最初は避けた苺だが、効果終了直後に矢が左腕を貫通する。当たった瞬間矢は消えると、苺の左腕からは血が流れ出す。
「い…ちごっ、…苺ッ! …お前かァァァ!!!」
すると状態異常がまだ残っているはずの鈴が、叫びながら《ヘルメス・ユーベル》に突撃していく。
「バカッ! 1人で突っ込んでんじゃねぇ!!!」
「【フルチャージ】、【クロスフレイム】ッ! ハアアアッ!!!」
大斗の言葉も聞かず、鈴は《ヘルメス・ユーベル》を攻撃する。だが、またも当たる直前で消える。
「【オートガード】ッ!」
「【金狼】お願い!」
するとすぐさま大斗は【オートガード】を発動し、また現れた《ヘルメス・ユーベル》の攻撃を自動防御させる。その隙に林檎は《金狼》を召喚し、《ヘルメス・ユーベル》を攻撃させて注意を引く。
「っ! ご、ごめん、大斗…」
「説教は後だ! 理乃と正樹で連繋して《ディオニュソス・ユーベル》を! 林檎は俺と《デメテル・ユーベル》だ、鈴、お前は苺を回収、その後でアイツをブッ倒せ!」
「「「「…了解ッ!」」」」
大斗の指示でオリュンポス十二神モンスターを相手にする。鈴は苺の元に駆け寄るとなるべく腕が痛まないよう優しく抱き上げると街の中へ向かって走る。
「すみません! 誰かお医者さんは居ますか!? この子左腕に矢が貫通してしまって!」
「急げ! こっちだ!」
鈴がそういうと、組織の医療班が道具を持って来る。
「ど、どうですか!?」
「…大丈夫です、この世界は重傷で無ければ失った身体の一部も時間が経てば再生するので……とりあえず応急措置を行います」
「っ、お願いします! 【アクセルブースト】!」
鈴は医療班に苺を任せると、【アクセルブースト】を発動して戦線に戻る。
(絶対……許さないッ!!!)
鈴は歯を食い縛りながら強くそう思い、瞬間移動のようなものを多用する《ヘルメス・ユーベル》に向けて弾丸を発射した。




