表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
生まれて初めてゲームをしたらパーティーメンバーが最強すぎる件について!  作者: ゆーしゃエホーマキ
第五章:アンファング

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

123/241

第118話【悪魔降臨】

「いやッ! 皆ストップッ!!」


 さあ追撃を! っと思った矢先、ベルが血相を変えて言う。

 ローゼも剣を握る手が震える。


「な…んだ、ありゃ……」


「黒い……?」


 ソラとフィールの言葉に、全員が上を見上げる。

 このボス部屋の天井は丸く開いていて空が見えるのだが、その空は真っ黒に染まっていく。そしてそれは第五階層全体を覆い尽くす。


「み…皆さん……いったん街へ戻りましょうっ! “アレ”はダメです、どうやっても勝てません!!」


「で、でも三嶋さんから頼まれ……ッ!?」


 ベリーがそう言った瞬間、全員が肌に鋭く、深く、突き刺さるような邪悪に動きが止まる、いや…足が震えて動けない。これは恐怖だ。

 そしてその邪悪がさらに強くなったかと思うと、空から“何か”が勢いよく落下する。


『▽■▽▲▼▼▼″″″ッッ!?!?』


「う…嘘……でしょ……?」


 ベリーは一瞬で起きた目の前の惨状に言葉を失う。空から落ちたドス黒い邪悪は落下地点に居た《ヴァールハイトテューア・シュピネ・U》を拳で殴り潰したのだ。

 先程戦っていて、全く歯が立たなかった物理攻撃で、さらにたった一撃で、《ヴァールハイトテューア・シュピネ・U》のHPは0になり光の粒となって消滅し、それと一緒に舞う黒い粒がその邪悪に入り込む。


「皆さん逃げてくださいッ!! あれは___“悪魔”ですッ!!」


 ローゼのその言葉もベリー達の耳には入らなかった。

 目の前に現れた絶対強者に、ベリー達は脅えることしか出来なくなっていた。


『G%◆〓¶┓r″a▼a”aa▲a§aa¶a!!!!!』


 命を奪ったことへの歓喜か、“悪魔”は強く咆哮する。

 二足歩行で、人間の身体に限りなく近いが、その顔はまさに悪魔を連想する顔で、曲がりくねった角が目立つ。その体格と比べると細めに思える尻尾は地面を叩くとヒビが入る。

 その大きく真っ黒な翼は血のような色の模様が入っており、不気味さを際立たせている。

 ただそれよりも、ベリー達は《ヴァールハイトテューア・シュピネ・U》を殴り潰した強靭で巨大な両腕に目が行ってしまう。


「ッ! み、皆! 部屋を出て! 今すぐ!」


 ベルは『ハッ』と我に返るとそう叫ぶ。本能でわかっていた、アレは危険だ。


「行くぞフィールッ!」


「う、うん……!」


 真っ先にソラがフィールを引っ張って部屋を出るべく走る。


「ベリーも! 行くよッ! バウム君ベリーよろしくッ!」


「任せてベルさん、行こうベリーッ!」


「う、うんッ!」


 ベルはバウムにベリーを頼み、皆の避難を優先する。


「ベルさん! アップルさん! 早くッ!!」


 ローゼが扉を開けて待っている。あと残るはベルとアップルだ。


「アップル、急ぐよ!」


「わ、わかって……あっ…!?」


 その時、走り出そうとしたアップルが何かに躓いて転んでしまう。


「ま、まだ子蜘蛛が……!?」


 どこかに隠れていたらしい、1匹の子蜘蛛に躓いたアップルはすぐ立ち上がろうとすると、“悪魔”の脚で目の前の子蜘蛛が潰されるのを見て腰が抜けてしまう。


「アップルッッ!!!」


 足を止めたベルがそう叫んで言うと、必死だったからかベリーと同じく声に出していないのに、【アクセルブースト】が発動される。


『g▼hl■e¶┓yd◆●』


「ひっ……!」


 “悪魔”はアップルに顔を近付け嗤う。そして、大口を開けてアップルにかぶり付こうとする。


「ハアアアアァァァッ!!!」


 その瞬間ベルが“悪魔”の顔を殴り飛ばす。もちろん吹き飛びはしない、全く微動だにしない“悪魔”だが、アップルを捕食するのは止めた。ベルが【アクセルブースト】だけでこんなに速く移動したことに一同驚きを隠せないでいたが、それどころではない。

 攻撃対象をベルに変えた“悪魔”はその強靭な腕を振り下ろし、ベルを叩き潰そうとする。


「【絶対回避】ッ! 【テレポート】ッ!」


 その攻撃をベルは【絶対回避】で避け、避けた先に居たアップルを【テレポート】で部屋の外へ送る。


「【バウンド】ッ!」


 そして“悪魔”の攻撃を避けながら【バウンド】を横向きで設置し、扉へ向かって跳ねてスピードをつける。


「「ふっっっ!」」


 そしてベルが部屋の外に出た瞬間、ソラとバウムが大扉を閉める。


「ハァ! ハァ! だ、大丈夫アップル?」


「あ…ありがとう…ベル…死ぬかと思ったわ……ほんと……」


 半ば放心状態になっているアップル。しかし、ひとまずこれで少しは落ち着ける……。


 ……なんてことは無かった。


『d=▼p“ci▲ヾw”◆aaa!!!』


 なんと“悪魔”は扉を破壊した。プレイヤーもモンスターも絶対に破壊出来ないはずなのに。


「走れぇぇぇぇ!!!」


 ソラがそう言ったのをきっかけに全員が何も考えずに、ただ必死になって走る。


『GA┓A〓♯▲∪╋●∃Ω!!!』


 “悪魔”は電子音声でも獣の声でもない、ただひたすらに恐怖を植え付けるような不気味な声でベリー達を追い掛ける。


「どうなってんだこれ!」


「わ、わかりません! あのモンスターもなんなのか……!」


「いいから今は考えるより走って!」


 ベルが言う通り今は考えても仕方ない。考えたところでわからない。ただ、全員内心では「逃げ切れない、どこかで向かい討たなくては」と思っていた。現に“悪魔”はダンジョンを破壊しながら追い掛けてくる。街に逃げ込んでも、強引に入ってくる可能性もある。そうなると街のNPC達が危なくなってしまう。


『________ッッ!!!』


 “悪魔”は声にならない咆哮をし、ベリー達を追い掛け続ける。

 勝てるのだろうか、“アレ”に。恐ろしいほどの防御力を持っていた《ヴァールハイトテューア・シュピネ・U》を拳一つ、一撃で倒した相手に……自分達は《ヴァールハイトテューア・シュピネ・U》で苦戦していたのに、勝てるのだろうか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ