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生まれて初めてゲームをしたらパーティーメンバーが最強すぎる件について!  作者: ゆーしゃエホーマキ
第五章:アンファング

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第110話【舞い降りる…】

『クルォッ! ォオオッ!』


 《ローエンフリューゲル・朱雀》の攻撃で、もはや周りの草木は焼け焦げて、荒れ地になっていく。


「うくっ! 【雷公】、【迅雷(じんらい)】ッ!」


 ベリーは広範囲に強力な雷を落とす【迅雷】を発動して攻撃する。ただ《ローエンフリューゲル・朱雀》は学習してきているようで、回避可能なものは避け、そうでないものは火炎球で相殺を試みる。


「【一発雷】ッ!」


 さらに続けてベリーは【一発雷】を3発放つ。

 2発は相殺されてしまうものの、1発が翼に命中し、《ローエンフリューゲル・朱雀》は再び体制を崩して地面に落下する。


「今度こそ…! 【大閻解】ッ!!」


 ベリーはノーボイスで【閻解】に戻し、再び【大閻解】で超大太刀に変化させ、大きく振りかぶって左翼を叩き斬る。


「よし! 今度は当たった!」


 そう言ってベリーは【閻解ノ大太刀】を解除して元の大きさに戻す。が、しかし、さすがは四神だ。


『クォッ!』


『クォォォオッ!』


 斬り落とされた左翼は強く燃え上がり、新たな《ローエンフリューゲル・朱雀》として誕生する。


「ふ、増えるの!?」


 よくよく見たらベリーの攻撃で飛び散った火の粉が集まり、小さな朱雀に成長しているではないか。その全てのステータスが同じということは無いだろうが、それでも計14匹に分身している。


「でもまずは本体からッ!」


 そう、こういったモンスターは本体を潰せば他は全て消えるということもある。ただそのモンスターは他と見分けがつかなかったりするものだが、幸いにも減ったHPゲージは変わっておらず、他の朱雀よりもやはり本体は大きく存在感があった。


「【火炎吸収】! 【閻撃】ッ!」


 ベリーは朱雀達から炎を吸収し、【閻撃】をそれぞれの朱雀に1発ずつ連続で放つ。


『クォォオオオオオオ!!!!』


「な、なに!?」


 本体である《ローエンフリューゲル・朱雀》が大きく咆哮すると、なんとベリーの放った14発の【閻撃】を全て自身の身体で受け止める。いや、吸収した。


「わ、私のまね…!? むぅ…HPも回復してる……」


 ベリーの【火炎吸収】を真似たのか、《ローエンフリューゲル・朱雀》はその【閻撃】の炎でHPを全回復させる。


『クォォッ!』


 そして全回復した《ローエンフリューゲル・朱雀》は分身体朱雀に指示を出し、分身体朱雀達は弾丸の如くベリーに突っ込んでくる。


「み、【見切り】ッ! 【絶対回避】ッ! うぁッッ!」


 最初こそ防いでいたベリーも、そのほぼ無限の攻撃に防ぎ切れなくなりダメージを負う。


「まずい…このままじゃ……! あっ!」


 ベリーは足に小さな朱雀が当たり、よろめいてしまう。そしてその瞬間を狙っていたかのように、本体の《ローエンフリューゲル・朱雀》はその身をさらにさらに燃え上がらせ、ベリーに突撃する。


「……もう……ダメ…っ!」


 ベリーは目をキュッと瞑り、その攻撃を待つだけとなった。


「…………っ?」


 火花が散る音はする。しかしベリーは何ともない。


「苺さん…じゃなくてベリー…ッ! 良かった、間に合ってッ!」


「正樹君! あ、バウム君!」


 移動中に発動した【幻手】4体で《ローエンフリューゲル・朱雀》を押さえ込んで、バウムが到着する。ベリーからのメッセージを見たバウムは詳細がないことに不思議がりながらも、マップでベリーの居場所を見付けるとモンスターと戦闘中であることがわかり、全速力で走ってきたのだ。


「【残刃刀】!」


 バウムは【幻手】に【残刃刀】を発動させ、そのまま《ローエンフリューゲル・朱雀》を押し切る。


「【残刃解放】ッ!」


 そして《ローエンフリューゲル・朱雀》の至るところに残った刃を解放させ、100連撃以上もの残刃で攻撃を行う。


「ベルさんやソラ達も呼べれば良かったんだけど……」


「あはは、みんな今日は忙しいみたいだからね……でも来てくれてありがとうバウム君! すっっごく助かる!」


 バウムは到着時に既に状況を理解した。これは異常事態だと。


「すぐに終わらそう」


「うん!」


 そう言ってベリーはノーボイスで【覇気】を発動して朱雀達の動きを止め、【鬼神斬り】を連発する。


「バウムく~ん! はやく~!」


「う、うん……【月影ノ一矢】ッ!」


 バウムはベリーの容赦ない攻撃に傍観してしまったが、【月影ノ一矢】を《ローエンフリューゲル・朱雀》に放ち、盲目の状態異常を付与させる。


「よし、【幻手】! 攻撃!」


 バウムが【幻手】に攻撃命令を出すと小さい朱雀をベリーと共に斬り倒していく。


「目を閉じて! 【閃光ノ矢】ッ!」


「うんっ! 【激流】!」


 バウムの言葉にベリーは目を閉じて【激流】を発動。

 そしてバウムが空へ放った【閃光ノ矢】は弾け、強く閃光する。


『クルォッ!?』


 小さな朱雀達は目をやられ、感覚を掴めなくなり落下する。

 そしてその瞬間に、ノーボイスで【真・激流ノ太刀・高霎】を発動してチャージしていたベリーがその力を解き放つ。


「でやぁぁぁぁッッ!!!」


 その一撃で13体の分身体朱雀を倒し、“高霎”の効果で攻撃力が上昇するベリー。これなら連続で攻撃すれば《ローエンフリューゲル・朱雀》のHPを削りきれるだろう。


「よし、これでトドメだ! 真・激流ノ…た……ち……?」


 ベリーがスキルを中断する。その理由は、空から舞い降りる一枚の真っ黒な翼の羽根らしきものが目に入ったからだ。それが《ローエンフリューゲル・朱雀》の炎で焦げた木の葉という可能性もあった。しかしスキルを中断してまで言葉を失ったベリー、そしてバウムが感じ取ったのは、ユーベル化したモンスターと同じものだった。


『★◆£……△○▼▼ッ!!! _____ッ!』


 その羽根に触れた瞬間。《ローエンフリューゲル・朱雀》は壊れたように鳥の声とは遠くかけ離れた、不気味な電子音を響かせる。


「ば…バウム君っ……」


「っ、大丈夫……ソラ達がログインしたみたいだから、ベリーはメッセージを送って…っ!」


「う、うんっ……!」


 目の前でユーベル化するのは初めてだった。ベリーは少し混乱しているようだが、それはバウムも同じだった。

 もしベリーの【真閻解】を使えば、恐らく勝てるだろう。しかしローゼからあの事を聞いたバウムは、それを止めるほうが優先される。“前回は平気だったから今回も大丈夫”とは限らないのだ。前回はなんとか押し込んだと言った、なら今回発動すれば、前回の反動もプラスされてもっと大きくなってしまうかもしれない。もしかしたら、一生昏睡状態ということにもなるかもしれないのだ。


「やっぱり……おかしい……ッ!」


 バウムがそう言った瞬間、《ローエンフリューゲル・朱雀》の鮮やかな赤色の炎は灰色や黒い炎になり、声にならない咆哮をあげ、ユーベル化した。





「悪魔はすぐ側まで来ているぞ」

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