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生まれて初めてゲームをしたらパーティーメンバーが最強すぎる件について!  作者: ゆーしゃエホーマキ
第五章:アンファング

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第107話【名も無い不死の鬼】

「ど、どこにお爺さんが……?」


 クエストは開始されたものの、肝心のお爺さんが見当たらない。ベリーは周りをキョロキョロと見て探してみるが、やはり居ない。


「お、お爺さ~ん、挑戦しに来ました~! どこですか~!」


 そう言って呼んでみる。が、やはり居ないようだ。

 しかしそれは間違いである。


「この程度を見抜けぬとは、本当に貴様が挑戦者か?」


「わっ!? び、ビックリした…!」


 なにもないはずの背後から声がし、ベリーは驚いて振り返ると、そこにはお爺さんが立っていた。今までのお爺さんより口が悪いが……凄い圧力、覇気を感じる。


「あ、あなたが…?」


「ふん、気を感じりるだけマシか……いかにも、俺が貴様の最後の壁だ、そう簡単に突破できると思うなよ」


「は、はい! 頑張ります! それで何をすればいいのでしょう…?」


 ベリーはそうお爺さんに聞く。そして、返ってきた答えは予想外のものだった。


「俺と戦い、俺を越えろ、本来であれば今からかの第一階層への壁を自力で登ってもらうが……変更された、俺と戦え」


「か、壁もキツいけど……お爺さんと戦うなんて、そんなこと……」


 ベリーは俯いて言う。そんな姿を見たお爺さんはブチ切れたように叫ぶ。


「下を向くなッ! 貴様は挑戦をしにここへ来た、一度0に戻り、登るためにッ! 悪に生きる、あぁ結構! それが正しいと己が思うなら突き進めッ! だが底辺に落ちることだけは許さんッ! ここは0だ、もう下はない、登ることしか許されないッ!!」


 堂々と、力強く、そうベリーに言い聞かせた。


「は…はいッ!」


「良い返事だ、それでこそ鬼の心身を込めた刀を持つ者に相応しい」


「な、なんでそれを……?」


 ベリーの言葉に、「ハァ~……」とため息を吐くお爺さん。


「忘れたか、その刀の元の持ち主を」


「元の…持ち主……」


 ベリーは思い出す。黒猫に頼まれ、宝石を探した時に戦ったあの鬼を。《鬼神ノ太刀・烈火》を手に入れた時のことを。


『思い出したか、人間』


「あの時の……鬼さん?」


 しかしその鬼は、《五老人ミニゲーム》とは全くの無関係のはずだ。


『クエストが自動生成されるようになったのは知っているか?』


「え、えぇっと……うん、多分知ってます!」


『……まあいい、それにより新しく変更されたのだ、もはや《五老人ミニゲーム》は貴様に用意されたユニーククエスト、試練となった、そしてこれが最後だ、人間』


 驚いたことに、この鬼もまた、《ヘルツ》や《ベリードール・ユーベル》と同じように、自覚しているようだった。

 《鬼神ノ太刀・烈火》の元の持ち主。ベリーの生まれて初めてのボス戦の相手。


「よろしく、お願いします……!」


『ふん、では行くぞッ!』


「『【鬼神化】ッ!』」


 お互い同時に【鬼神化】を発動し、戦闘が開始される。

 一度戦った名も無い鬼との戦い。しかし気は抜けられない。


(いつの間にか背後を取られてた……気付かなかった……本気で行かないとやられるッ!)


『ハアッ!!!』


 鬼の素早い剣舞に、ベリーは防御することしか出来ない。

 鬼とベリーの違いは、多く、鬼は体格や身体能力が高いが《鬼神ノ太刀・烈火》という進化前のものを持っている。対してベリーは身体能力などは鬼に劣るものの、進化後である《鬼神ノ太刀・閻解》を持ち、さらにスキルを声に出さずに攻撃できる。

 一見ベリーのほうが有利かと思うが、元のスペックが違うのだ。


「ぐっ、重いっ!」


 鬼と人の身体能力は大きく離れている。そして元の持ち主である鬼はベリーよりもその刀のことを熟知していた。

 しかし、ベリーも負けてない。


「ッ! ああぁぁッ!」


 声に出さずに【絶対回避】を発動したあと、さらに【鬼神斬り】をこれまた声に出さずに発動する。

 当然鬼は反応に遅れて数発受けてしまうが、それでも残りの攻撃を反らしていく。


「ハアッ!」


 しかし、ベリーは自身の小さな体格を生かし、鬼の視界から消えると別方向から攻撃を仕掛ける。


『グゥッ、ちょこまかと…ッ! 【覇気】ッ!』


 鬼の周りをグルグルと回りながら【鬼神斬り】を連続で発動するベリーに、鬼は【覇気】を発動して行動を制限しようとする。


「ッッ! やあッ!」


 するとベリーはまたまたノーボイスで【霧雨】、【霧雨ノ舞】を発動して避け、鬼の右腕を斬り落とす。


「【真・激流ノ太刀・高霎】ッ!」


 鬼の右腕を斬り落としたベリーは、その勢いのままノーボイスで【激流】を発動。そして【真・激流ノ太刀・高霎】を発動し、鬼の首を一直線に斬った。


「ハァ、ハァ……」


 息を切らし、振り返り鬼を見るベリー。鬼のHPは首を斬られ、大ダメージを負い0になっていたが、ベリーのその目はまだ戦う目をしている。そう、まだ終わりではないのだ。


『ふッ、グオォッ! ……見事だ、これで一回目だな』


 鬼は左腕と頭を再生し、完全復活した。その事にベリーは特に驚く様子もない。気配でわかっていた。


「どうすればいいのかな……」


『答えは己で見付けよ、せいッ!』


 鬼はそう言って凪ぎ払う、ベリーがその攻撃を避けると、鬼は刀を構えて一つ言う。


『俺は不死身、そして死ぬ度に相手との差が無くなっていく』


 そう言った鬼の髪は、青く変化する。


「ま、まさか…! 【激流】っ!?」


『ああ、貴様の持つ刀は元々俺のだ、これくらいは見れば容易いことだぞ?』


 予想外の行動にベリーは驚く。つまり死ぬ度にベリーの能力をコピーしていく……そうなると最終的には鬼の身体能力+【真閻解】力、ということにもなってしまうということだ。そうなったらベリーの勝機はほぼ無くなってしまう。


「絶対に、クリアする!」


『その意気や良し! 【水流加速】ッ!』


 鬼はそう言って【水流加速】を発動してベリーに急接近し、刀を縦に振るう。


「【水流加速】ッ!」


 その攻撃をベリーは同じく【水流加速】を発動し、鬼の股を滑るように潜り抜け。鬼の背にノーボイスで【鬼撃】を4発与える。


「【真・激流ノ太刀・闇霎(くらおかみ)】ッ!」


 ベリーはさらに【真・激流ノ太刀・闇霎】を発動し、地面に刀を突き立てると、鬼の真下から水で作られた巨大な剣を出現させ、HPを0にさせる。


『ほう、やるではないか』


 しかし“当然”と言ったように何事もなく復活した鬼はそう言って刀を構える。ベリーは【真・激流ノ太刀・高霎】と【真・激流ノ太刀・闇霎】の効果で、鬼のHPを減らした分だけ攻撃力と防御力が上昇している。このまま続けていれば勝てるかもしれないが、それは鬼もまた使うことができる。そして何より不死身を解決しない限り、勝利は無い。


「くっ……」


 【閻解】、【真閻解】を使うと鬼が死んだときにコピーするのでむやみに使えない。もしかしたらもう使うことができる可能性もある。

 何をどうすれば倒せるのか、ベリーはひたすら思考しながら鬼の攻撃を受け流していった。

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