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生まれて初めてゲームをしたらパーティーメンバーが最強すぎる件について!  作者: ゆーしゃエホーマキ
第四章:ユーベル

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第102話【今の僕の精一杯の気持ち】

 四神、白虎を討伐してから数日、現実世界時刻13:00、今日は苺達の住む街に初雪が降り、雪が薄く積もり始めて来た。

 今日は休日、苺は鈴達と共に、雪が降る中を特に目的なく散歩していた。たまにはこんな日もあるのはいいものだ。


「ん……寒い………」


「大丈夫か? ほれマフラーやるよ」


 マフラーをしておらず、寒がっている理乃に大斗は自身が着けていたマフラーを取り、理乃の首に巻く。


「あ…ありがとう……」


「…おう」


 そう言って顔を赤らめる二人を見て、苺達は心が暖かくなる。


「ロウさんやハクちゃん、ローゼともこっちで会ってみたいなぁ……」


 ふと苺がそんなことを言う。


「それはわかるけど、場所が近いとは限らないし、その三人は忙しそうなイメージがあるからねぇ」


 鈴はそう言いながら、近くにあった自動販売機の前に立ち、お金を入れる。


「あー、特にローゼは知的な雰囲気があるし、仕事とか凄い出来そうよね」


 林檎はそう言って、鈴の後に自動販売機で飲み物を購入する。


「意外とみんな近くにいたりしてな! ってそれはさすがにねぇか、俺もなんか買うか…理乃は何にすんだ?」


「大斗と同じの……」


 と、大斗はそう笑いながら言って自動販売機で飲み物を二つ購入する。


「僕も買お…って、あはは、みんなコーンポタージュだね」


 正樹がそう言って大斗の後にみんなと同じくコーンポタージュを購入する。寒い時期のコーンポタージュやココアは格別だ。


「ほあぁ~、暖まるねぇ……」


「そうだねぇ~」


 苺達はベンチの上に少し降りかかった雪を退けて、腰掛けてコーンポタージュを飲んで一息つく。

 通行人達も初雪を眺めて会話が弾んでいるようだ。


四舞(しま)、コンポタ飲むか? 奢るぞ」


「ほ、本当ですか六山(むやま)さん! それは嬉しいですが……でもそれで前の件、無かったことにする気じゃありませんよね?」


「んなわけねぇだろ、ちゃんとやってる、で、飲むのか? 飲まないのか?」


「の、飲みますけど! …なんかボクを子供扱いしてません?」


 そう長身の男性と…長身の男性に比べると小さく見える女の子の会話が聞こえてくる。苺達と同じくコーンポタージュを買って、その場から離れていく。


「だから“ボク”はやめろって、てかなんで“ボク”なんだ?」


「これは生まれつきだから仕方ないです! というか最近の六山さんはやっぱり丸くなりましたね! そっちのほうが気になりますよ!」


「まぁそりゃあな…ってまずい、次の授業遅れちまう」


「次授業あったんですか!? 急がないとまずいですよ!」


「あぁ、ちょっと先行ってるわ、俺のコンポタやるからお前はゆっくりこい」


「え? ちょ、ちょっと、待ってくださいよー!」


 四舞と六山という二人は、そう言って走っていってしまった。


「…なんか…ロウさんとハクっぽい?」


「え? マジか? まぁ似た人くらいいくらでも居んだろ」


「まぁ大斗の言う通りそんなもんだよ苺、あっ、私そろそろ行かなきゃ、じゃあねみんな! また!」


 鈴は用事があるため、そう言って手を振る。


「あ、私も行きたいところがあったわ、今日はこれで失礼するわね」


「うん! 鈴も林檎ちゃんもまたねー!」


 苺はそう言って正樹達と共に手を振って見送る。


「あっ! やべ、俺まだプリント終わってねぇよ!」


「ん…教えようか…?」


「マジか! 助かる! んじゃそんなわけなんでまたな、苺、正樹!」


「ばい…ばい……」


 大斗は学校で出された数枚のプリントをやるため、そして理乃はそんな大斗に教えるためにそう言って走っていった。


「なんか急にみんな行っちゃったね? 正樹君はどうする?」


 苺のその言葉に、最後に残った正樹はビクッと身体を震わせる。そう、全員が居なくなったのにはわけがあるのだ。

 正樹は「そろそろ進展しろ!」と大斗や鈴に言われ、とりあえず今できることをする決意をしたのだ。


「そ、その…八坂さん……僕、八坂さんに案内したいところがあって……」


「え!? なにそれなにそれ! 行きたい!」


 苺は目を輝かせて言う。鈴からのアドバイスで「正樹君なら大丈夫、正樹君がしっかり伝えれば苺にちゃんと届くから」、そう言われた。


「(告白はまだ心の準備が出来てなくて無理だけど……せめて……)」


 正樹はそう心の中で強く思いながら、すぐ近くにある小さな山に向かった。


「ここって…私も小学生の時に鈴と来たなぁ! ブランコとかして! でもここの公園もう無くなっちゃったんだよね」


 そう、正樹と苺が向かった小さな山には、元々公園があった。今は遊具も撤去され、広い平坦な空間があるだけ、そう街の全員は思っている。


「……これ、見せたかったんだ」


 辿り着いたのは、元々公園があった場所の真ん中。そこには一本の大樹がまだ葉っぱを残して生えていた。


「わぁ……この木まだあったんだね! それに凄く綺麗!」


 苺は葉を残し、その上に雪が積もった大樹を見てそう言った。


「そ、それで、その…実は……ぷ、プレゼントが、あって……」


「プレゼント…? わ、私誕生日だったっけ?」


 急にプレゼントと言われ、そう言って首をかしげる苺。


「いや、その……日頃の恩返しというか……なんというか……」


 正樹は必死に伝えようとするが、緊張と寒さからうまく口が回らない。


「あ、あの、そのっ……えっと……」


「……正樹君」


 中半パニックになっている正樹に、苺はそう静かに声をかける。


「大丈夫だよ、安心して? 私は正樹君に何言われても、嫌いになんかなったりしないから」


「…っ!」


 苺はそう言うが、正樹も苺を見てきた、もちろん苺はそういう人だということは重々承知してる。しかしやはり、声に出すとなるとどうしても緊張してしまう。


「それでも緊張しちゃうなら、笑えばいいんだよ!」


「わ、笑う…?」


「うん、笑えば緊張だってどっかいっちゃうよ! ほら、私みたいに笑って笑って!」


「八坂さん…みたいに……」


 正樹は苺の言葉を聞いて、いつも苺がやっているような、明るく暖かく、みんなを包み込んでくれるような笑顔をイメージしてみる。


「…うん! いい笑顔だよ正樹君!」


 苺の笑顔で正樹は自然と笑みが溢れていた、そして不思議と緊張も無くなっていった。


「八坂さん……いや、苺…さん、僕、いつも苺さんの声に救われました、そのキラキラした目に救われました、そしていつもみんなを明るくしてくれる、その笑顔に、救われました」


 先程までの緊張が嘘かのように言葉が出てきた。


「だから、そんなあなたに、僕の、感謝の気持ちを、受け取ってほしい…です」


 正樹はそう言ってコートのポケットから一つの包みを取り出し、苺に渡す。


「……わあ、ヘアピンだぁ! ありがとう! 正樹君! すっごく嬉しいよ!」


 正樹がプレゼントしたヘアピン。苺に似合いそうなものを、何時間も考え抜いて選んだ、明るい苺の色をしたシンプルなヘアピンだ。今はまだ感謝の言葉しか言えないが、それでも今は、これを伝えられたことが何よりも嬉しい。

 そして苺は早速それを身に付ける。


「っと、どうかな?」


「かっ、可愛い…です」


「えへへ……正樹君、このヘアピン、絶対大切にするよ! 本当にありがとう!」


 そう言った苺に、雲の切れ間から光が差し、ヘアピンを輝かせる。しかし正樹がその時見た苺の笑顔は、光を反射して輝くヘアピンよりも、大樹の葉の間から漏れる光よりも、この晴れ行く空よりも…。


 世界で一番、眩しかった____。

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