第101話【大回転ベリーちゃん】
「で、どうしようか、絶対あれが原因だよね?」
ベルは上空の球体を見て、悩みながら言う。
「うーん、届かなさそうね…あっ、もう五体倒せそうよ?」
アップルも上を見上げて言うと、《ゲヴァルトツェアファレン・白虎》五体のHPが他プレイヤー達の攻撃により瀕死になっていた。
「と、言うことは……」
ベルがそう言った瞬間、《ゲヴァルトツェアファレン・白虎》達は光の粒となって消滅すると、上空を浮遊する球体、《ヴァイスティガー・ヘーアシュテラー》が三回ほど点滅すると、地上に《ゲヴァルトツェアファレン・白虎》が七体出現した。
「二体ずつ増えるみたいですね、他のプレイヤーの方々は気付いてないようですし……私達でなんとかしましょう」
ローゼはそう言った後、【フルーク】を発動し、《ヴァイスティガー・ヘーアシュテラー》に近付こうとする。しかし。
「…飛行上限が設定されていますね……ですがこれだとあれをここから攻撃するしかないのでしょうか?」
ローゼは飛行上限高度に達すると引き返して来てそう言う。
「届くかなぁ………」
ベルはそう言いながらもスナイパーライフルを構え、狙ってみる。
「【貫通弾Lv7】」
ベルはスキルを発動し、威力が上がった【貫通弾Lv7】を放つ。
「おーー、ってダメかぁ!」
が、しかし、弾は途中で消えてしまう。
「これでは攻撃も出来ませんね…バグでしょうか?」
「いや、それは考えにくいかな、もしかしたら何か通るものがあるのかも、でも弓矢は飛距離が銃弾より劣るからなぁ……うーむどうしたものか……」
ベルがまたも悩み始めると、HPが減ったベリーが回復しに後退してくる。
「アップルー、回復お願いー!」
「随分減ってるわね…【ヒール】」
アップルに回復されながら、ベリーは上を見上げて悩むベルとローゼを見て、自分もその方向を釣られて見る。
「わあ、なんか浮いてるね?」
「あれが四神を作り出してるみたいよ、はい、回復完了!」
「ありがとう! あれを落とせばいいの?」
ベリーはアップルにお礼を言うと、そうベルに聞く。
「うん、そうだけどローゼの飛行でも飛行上限があって近付けないし、弾も届かないんだよ、多分矢も同じじゃないかな?」
「そうなんだぁ……あ、でも私ちょっと良いこと思い付いたかも! ローゼ! 私を上まで運んでくれる?」
ベリーは何か解決策を思い付いたのか、ローゼにそう言って空高くまで舞い上がる。
「っと、ここでダメみたいですね」
「結構遠いねー、届くかな? 【激流】!」
ベリーはそう言って【激流】を発動する。そしてローゼに抱えられながら、刀を納刀したまま出来る限り構えを取る。
「【真・激流ノ太刀・高霎】!」
そう、【真・激流ノ太刀・高霎】は一直線に瞬時に移動し、遠くの敵をも斬り裂くことができるスキルだ。ここで止まるのは“飛行”上限。つまり飛行でなければ問題はない。
「ベリーさん、私の肩を使ってください!」
「ありがとう! ……ハッッ!!!」
ベリーはローゼの肩をうまく足を乗せ、【真・激流ノ太刀・高霎】を解放する。飛行上限を簡単に破り、一直線に《ヴァイスティガー・ヘーアシュテラー》に向かって行き、水の流れのように斬る。
しかしこれはいわば四神白虎の本体、そうそう簡単には倒れない。攻撃してきたベリーに反撃しようと無数のレーザーを放つ。
「やあッ!」
だがベリーは【真・激流ノ太刀・高霎】の威力で空中に半浮遊状態である。すぐには落下せず、レーザーをうまく弾いていく。
「【激流ノ太刀・水龍】ッ!」
そしてベリーは身体を翻し、《ヴァイスティガー・ヘーアシュテラー》に【激流ノ太刀・水龍】を発動し、連続で攻撃する。
「…っ、もう無理っ!」
しかしHPを残してしまい、倒しきれずに落下してしまう。
「ベリー! 【バウンド】ッ!」
しかしまだだ、ベルは【バウンド】を届く最大の距離の位置に展開する。これでベリーはフィールがやったことと同じことが出来る。
「ありがとうベル! 【鬼神化・閻解】、【閻解ノ大太刀】ッ!」
ベリーはそう言ってスキルを発動し、ベルの【バウンド】に足を着けると、勢い良く飛び上がる。さらに【閻解ノ大太刀】複数回発動して維持し、超大太刀となる。
「うおーーっ!」
そしてベリーは、大太刀の重さを利用して遠心力で縦に回転し始める。その様はまるで、ソラの【神技・大車輪・炎舞】のようだった。
「てやぁぁあッ!!!」
遠心力により威力も増したのか、地上まで届くほど大きな鈍い音が響くと、《ヴァイスティガー・ヘーアシュテラー》を真っ二つに斬り裂いた。
「やった! ってあれ、回転止まらないよぉ!?」
光の粒となって消滅する《ヴァイスティガー・ヘーアシュテラー》を見て言ったベリー。しかし回転は止まることを知らないかのようにまだ回転しながら地上に落下する。
「ちょ、ま、待って、大太刀のまま来られたらまずいって!!」
「うぇぇぇえ、聞こえないぃぃ、気持ち悪いぃぃ~!」
しかし回転力がどんどん増していくベリーに、ベルのその声は届かず、ベリーに吐き気が襲い掛かる。
「【バウンド】で位置変更を…ってダメだリキャストタイムがまだッ! いや一か八かやるか!?」
まだ少し離れているが、落下速度はかなりある。対してベルの【バウンド】のリキャストタイムは残り8秒、ギリギリの賭けとなるだろう。
「と、とりあえず…防御力上げておくわね…【ディフェンスアップ】」
「あ、ありがとうアップル…よし来い!」
「うひゃああぁぁぁ~!!!」
ベリーは叫びながら真下にいるベルの元に落下。そして【バウンド】のリキャストタイムが1秒となった瞬間、『フッッ』とベルの頭上で風を斬る音がした。
「うおぁぁぁ! 【バウンド】ぉッ!!!」
0秒となった瞬間、ほぼ誤差無しでベルは自身の目の前に【バウンド】を展開する。
「ぐっ、おりゃあああ!」
ベリーを受け止め、その強い衝撃で破壊されそうな【バウンド】にまだ残っている《ゲヴァルトツェアファレン・白虎》のほうへ角度を付け、ベリーはその方向へ斜めに飛んでいく。
「うえ″っ」
《ゲヴァルトツェアファレン・白虎》数体を斬り裂き、急に減速したためベリーは地面に転げ落ちる。
「「「「ひっ、ひぃぃぃぃッ!?!?」」」」
そして、ベリーの大回転斬りの範囲ギリギリに居た、《狂戦士》、《剣士》、《暗殺者》×2の合計四人のプレイヤー達がベリーの攻撃が首元を掠ったようで、首を抑えながら後ずさった。
「ロウさん、あれ喰らったんですか」
「……もっとデカイけどな…」
ハク、そして今の大回転斬りよりも巨大化した大太刀を喰らったロウだけでなく、その場に居た全プレイヤーが遠くを見つめた。とりあえず、言えることは一つ。
「当たんなくて良かった」
ベルは他のプレイヤー達と同じく、どこか遠くを見つめながらそう言った。
だがまぁ、ひとまずこれでクエストクリアだ。
これぞまさしくローリンガーr((殴




