第99話【崩壊という名の暴力、白虎顕現】
「そいやぁ!」
ベリーはそう言って刀を振り下ろし、最後の一匹である《アイスウルフ》を倒す。
「ふぁぁ! やっと終わったぁぁあ!」
「キツかったぁあ! 途中から乱入はズルいってぇ!」
ベリーとベルはそう言って腰を下ろす。そう、あの30匹の《アイスウルフ》に加え、さらに追加で20匹の《アイスウルフ》、合計50匹以上の《アイスウルフ》を討伐したのだ。
「あー、一旦街に戻ろうぜ? 俺もうダメだ」
と、あっちへこっちへと《アイスウルフ》達の猛攻を盾でガードし続けていたソラが言う。
「僕も賛成するよ……武器も研がなきゃ」
「あ、じゃあ私がやるよ!」
「そっか、ベリーは《鍛冶師》だったね、じゃあお願いしようかな…?」
「うん! 任せ…ってうわ!?」
ベリーの言葉を遮り、大きな地震が発生する。この地震には覚えがあった。
* * *
強制的に【テレポート】され、ベリー達含めた20人のプレイヤーが待機フィールドに集まった。
「今回は人が少ないね?」
「多分クエストの仕様が違うんだよ、あっ、ベリー、ロウとハクも居るよ!」
そう言ってベルが指差した先には、どこか疲れたような顔をしているロウとハクが立っていた。
「ん? よおベリー、お前らもか、ったく今日はツイてねぇなぁ……モンスターの集団に襲われるわアイテム忘れるわ……リアルのほうでも大学で失敗しちまった」
「へぇ、ってロウさん大学生!?」
衝撃のカミングアウトにベリーだけでなくベル達も驚く。
「あぁはい、ボクとロウさんは同じ大学の先輩後輩ですよ、言ってませんでしたっけ?」
「言ってないってか凄い驚きなんだけど、ハクも大学生だったの…?」
「え、逆になんだと思ってたんですか」
「中学せ…いだだだだだ!!! ごめ、ごめんって!」
中学生、と言おうとしたベルの腕をハクは無言で思いっきりつねる。ベリーほど身長は低くないがそれでもハクは幼い感じがあるのだ。
「ろ、ロウさん災難だったね。私も今日は厄日だよ……」
「お前もか…まぁさっさとぶっ倒しちまおう」
ロウがそう言ったところで、電子音声でカウントがされる。
『3……2……1……クエストを開始します』
そうクエストが開始されると、プレイヤー達はまた【テレポート】され、目の前に高さが5メートルほどある白虎が出現した。
「白虎と戦うの二回目だなぁ」
「え!? ベル戦ったことあるの!?」
「あー、いや別のやつだけどね」
氷結の帝王、《ゲフリーレン・カイザー》との戦闘を思い出すベル。しかし目の前の四神、《ゲヴァルトツェアファレン・白虎》とは見た目も全く異なっていた。
こちらの白虎には二本の白いつのが生えており、身体の青白い虎模様は薄く発光していた。
『ガオオオオオォンッ!!!』
「うし、フィール、俺を飛ばせ!」
「ん、【創造・槍】《ゲイボルク》……【ゲイボルク・フィニッシュ】」
ソラは開始早々フィールが【創造】した《ゲイボルク》にうまく乗り、フィールは力を込めた感じも無く【ゲイボルク・フィニッシュ】を発動してソラを飛ばす。
「【神技・大車輪・炎舞】ッ!!!」
ソラは大量に分裂した《ゲイボルク》の雨と共に、【神技・大車輪・炎舞】というスキルを発動する。巨大化した剣を縦に構えて高速で回転し、炎を発生させて《ゲヴァルトツェアファレン・白虎》の頭に叩き付ける。
強く鈍い音が響くと、さらに追撃で《ゲヴァルトツェアファレン・白虎》に《ゲイボルク》の雨が降り注ぐ。“絶対必中”という能力を持つ《ゲイボルク》は、分裂しているが全て《ゲヴァルトツェアファレン・白虎》の身体の至るところに突き刺さっていく。そしてさらに猛毒の状態異常を付与し、そのまま残ることで動きを少し制限する。
「先制攻撃……大事……」
「うん、【残刃刀】ッ!」
さらにバウムが【残刃刀】を《ゲヴァルトツェアファレン・白虎》の足へ、それに続いてアップル、ローゼも攻撃する。
「【鬼神化・閻解】! 【閻魔】チャージ!」
「【フルチャージ】、【オーバーチャージ】、【リミットブレイクチャージ】!」
さらにベリーが【閻魔】をチャージし始め、ベルがチャージ系スキルをベリーに発動することで一瞬でMAXチャージする。
「んでもって……【クリンゲル・シックザール】ッ!」
そしてベルは【クリンゲル・シックザール】を発動。自身のHPを70%削り、《ゲヴァルトツェアファレン・白虎》の防御力を大幅低下させる。
「【ハイ・ヒール】」
すかさずハクが【ヒール】の上位互換、【ハイ・ヒール】を発動してベルを回復させる。
「【残刃解放】!」
そしてそしてバウムが【残刃解放】をすることで《ゲヴァルトツェアファレン・白虎》の足に残った刃が解放され、ダメージを与える。それによって《ゲヴァルトツェアファレン・白虎》は倒れ込む。
「【パワーアップ】!」
「【パワーアップ】」
そしてアップルとハクがベリーとロウの攻撃力を上昇させる。
「んじゃあいっちょやるか?」
「うん!」
ベリーは【閻魔】、ロウはそのままロボっぽいようなスチームパンク風の大剣を構え《ゲヴァルトツェアファレン・白虎》の胸部へベル、ハクにより【テレポート】され移動する。
「ハァァァッ!!!」
「ぶっ飛べぇぇぇぇッ!!!」
二人がそう叫び、胸部に刀、大剣を突き刺してベリーは【閻魔】を発動、ロウは大剣にあるスイッチを押し、轟音を立てながら大爆発を引き起こした。
出てきて早々ベリー達に総攻撃される四神白虎さん。




